<ライブレポ―ト>≠ME、12人全員で辿り着いたツアーファイナル・日本武道館公演

2023年7月14日 / 18:00

 ≠MEが、【≠ME全国ツアー2023「We shout “I am me.”」】のツアーファイナルとして、6月29日、30日の2日間にわたって初の日本武道館公演を開催した。

 2019年2月に活動を開始し、今年で4周年を迎えた≠ME。グループにとって日本武道館とは、メンバー12人にとっての夢だった場所であり、ファンとの約束のステージである。後述する「ポニーテール キュルン」に初日の公演にはゲストとしてマイメロディが登場したことをはじめ、日替わりの曲として「誰もいない森の奥で一本の木が倒れたら音はするか?」(29日)「薄明光線」(30日)が披露されたこと、2日目の≠ME初の地上波冠特番『ノイミーステーションTV』が発表されたことなどが、2日間の明確な違いとして挙げられるが、両日取材していた筆者としては本編終盤に披露された「『君と僕の歌』」もまた初日から2日目にかけての大きな変化のように思えた。本記事では、30日の公演をレポートする。

 2020年4月に発表されたグループにとって3曲目のオリジナルソング「『君と僕の歌』」は、メンバーと「君」=ファンとの約束の歌だ。<大きいステージに連れて行く>というフレーズとともに、小指を結ぶ振り付けでメンバーはライブで何度もその約束を確かめてきた。スクリーンにはこれまで節目の度に披露してきた「『君と僕の歌』」のパフォーマンス映像が映し出される。その先にあったのが、まさに歌い出しの<夢だったこの場所に立ってる>が指す、武道館のステージだった。

 また、メンバーの呼びかけで会場のペンライトがグループカラーのエメラルドグリーン一色になるだけでなく、この武道館がライブで初めてファンと一緒に「『君と僕の歌』」が歌われた日でもあった。≠MEは活動開始から間もなくしてコロナ禍によって声援を浴びることを阻まれてきた。だが、今年3月開催の【≠ME 4th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT】から、ようやく不織布マスクを着用したうえでの声出しが可能に。ここまで積み重ねてきたステージの数と運命的なタイミングが相まっての<今歌ってるこの青春は「君と僕の歌」>という歌声が武道館に響くのを聞いて、ファンの存在なしでは辿り着けなかった約束のステージであることを強く実感した。後のMCでリーダーの蟹沢萌子はファンに対して「私たちが12人でいることのお守りのような存在」であると、そして冨田菜々風はエメラルドグリーンに染まる会場の景色を見て「夢って本当に叶うんだって思えた瞬間でした」と涙ながらに話していた。冨田のさらなる夢に続く「これからも私たちと一緒にいてくれますか?」という約束と、初日の「『君と僕の歌』」よりも確実に大きくなっていたその歌声の成長に、“君と僕”がこれから描いていく物語の続きがより一層楽しみになった。

 声出しということでは、「≠ME」を筆頭にして「クルクルかき氷」など、ファンのコールを想定して制作された楽曲が、まるで日の目を見るかのようにしてライブ楽曲として新た(再び)に昇華し始めている。特筆すべきは「ポニーテール キュルン」。センターを務める鈴木瞳美が先導し、合いの手を入れる間奏では、気合いの入ったガチ恋口上が武道館に轟く。鈴木も自らイヤモニを外して、ファンからの愛を全身で受け止めており、この幸せな相互関係がこの夏を経て定番化していくのであろう。「マシュマロフロート」の<ちゅるり ちゅるり>、「ウルトラレアキッス」の<なんでやねん!><UR!>のコールも実際にライブで体感してみないと気づけなかった楽しさや一体感を持ち合わせていた。また、TikTokで一大ブームとなった本田珠由記センターの「てゆーか、みるてんって何?」こそ<みみみ みるてん!>と一つになれそうな予感がしていたが、武道館公演で披露されることはなかった(ツアーでの他公演で披露されている箇所もある)。姉妹グループである=LOVEの楽曲を中心にカバーしていた4年前とは違い、自分たちだけのオリジナル楽曲のみ、かつ「みる何」というキラーチューンを温存したセットリスト、つまりは引き出しの多さもまた≠MEの大きく成長したポイントと言えるだろう。

 本編のセトリは“しおみる”こと永田詩央里と本田の「2時半ろけんろー」を皮切りとしたユニットブロックに続き、ダンスパートからダンスブロックへと流れ込んでいく。ツアータイトルに楽曲の歌詞がなぞらえてある、グループ史上最高難度とも謳われる6thシングル表題曲「天使は何処へ」、蟹沢と冨田のダブルセンター曲「P.I.C.」、さらに「チョコレートメランコリー」の3連投は、「天使は何処へ」での1か月間のレッスンで身につけたダンス力、表現力が遺憾なく発揮されたブロックであった。

 先述した「『君と僕の歌』」や「クルクルかき氷」を含む本編ラストのブロックは生バンドを従えてのパフォーマンスに。過去に=LOVEが同じ武道館で行っていたメンバー憧れの演出だ。客席にどよめきが上がっていたのが、しっとりとしたピアノ演奏に乗せた冨田のソロ歌唱からスタートした「はにかみショート」。曲の途中では櫻井ももがドラム演奏に参加するというまさかの展開となった。続く「君はスパークル」は、川中子奈月心がセンターを務める≠ME切ってのライブチューン。腰椎椎間板症の治療に専念するため、昨年の10月より休養していた川中子は4周年コンサートより一部ではあるものの活動を復帰。だが今回のツアーでは、東京公演以外は大事を取り休演という判断がなされていた。驚いたのは川中子が武道館公演の両日ともにほぼフルで出演していたこと。そこには多少の無茶もあったであろうことは想像に難くないが、それでもメンバー12人で武道館に立ちたいという思いが強く滲んでいる。

 振り返れば≠MEは、12人が常に揃っているというわけではなかった。もしかしたら揃っていない活動期間の方が長かったかもしれない。けれど、いなくなって初めて分かるメンバーのありがたみもある。もちろん心では繋がっていたし、何より≠MEは結成から誰一人欠けることなく12人で、この武道館まで辿り着いたグループだ。

 そのことが歌として結実していたのがアンコールで歌われた「虹が架かる瞬間」。横一列に並んだ12本のスタンドマイクは、やがて弧を描き、メンバーのサイリウムカラーにあわせたリボンが結ばれていく。そして自然とメンバー同士の手も。<12人とみんなだから 見えた景色 おばあちゃんになって 遠くにいても 忘れないよ>と繋いだ手を揺らしながら、多くのメンバーの頬には綺麗な涙が伝っていた。

 ただ、≠MEにとっての本当の約束のステージはさらに先にある。両日ともに武道館のセトリは始まりと終わりに「≠ME」が披露された。これまで(1曲目)とこれから(ラスト)というメッセージが、それぞれのパフォーマンスには込められているような気がしてならない。<君で始まる運命だった物語>。武道館というステージが≠MEにとっての新たなスタート地点だ。

Text by 渡辺彰浩
Photo by YOANI

◎公演情報
【≠ME全国ツアー2023「We shout “I am me.”」】
2023年6月30日(金)
東京・日本武道館
<セットリスト>
01.≠ME
02.秘密インシデント
03.マシュマロフロート
04.好きだ!!!
05.ポニーテール キュルン
06.2時半ろけんろー
07.薄明光線
08.ウルトラレアキッス
09.サマーチョコレート
10.ピオニーズ
11.こちらハッピー探検隊
12.天使は何処へ
13.P.I.C.
14.チョコレートメランコリー
15.す、好きじゃない!
16.クルクルかき氷
17.「君の音だったんだ」
18.はにかみショート
19.君はスパークル
20.「君と僕の歌」
21.まほろばアスタリスク

EN1.自分賛歌
EN2.このままでモーメンタリ
EN3.虹が架かる瞬間
EN4.≠ME


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