<ライブレポート>エリック・ベネイ、観客と踊り明かした14年ぶりのビルボードライブ公演

2023年6月29日 / 19:00

 エリック・ベネイが、6月14日、15日、17日に東京・ビルボードライブ東京で、6月19日には大阪・ビルボードライブ大阪にて計4日間にわたり【Eric Benet Live Will Be At Billboard Live June 2023】を開催した。

 エリック・ベネイがビルボードライブで行う公演としては約14年ぶりで、パワフルで色気のあるパフォーマンスで会場を沸かせた。本稿では6月15日に行われた2ndステージの模様をお届けする。
 
 開演時間になり会場が暗転すると、黒い衣装に身を包んだバックバンドのメンバーが登場。そして、メンバーからの紹介によりエリック・ベネイがステージに姿を現すと会場からは“待っていました”といわんばかりの拍手が鳴り響き、流れるように1曲目「Love Don’t Love Me」がスタート。曲が始まって早々に、前列の観客の手を取り見つめあいながら歌っている姿がとても印象的だった。今回はバンド編成での演奏ということもあり、オリジナル楽曲のアレンジとはまた違った重厚感を含んでおり、密度のあるシンセサウンドとパワフルなドラムは、彼の力強く芯の通った歌声とマッチして、心地よいグルーヴ感に早くも観客が体を揺らしながらリズムをとっているのが見て取れた。

 続いて、雰囲気をがらりと変えた「Sunshine」を披露。1曲目のアップテンポなリズム感とは打って変わりチルな雰囲気が会場を包み込む。まさに、正統派R&Bバラードという雰囲気の楽曲でビルボードライブにはピッタリの楽曲である。彼は観客とのコミュニケーションを楽しんでおり、ステージ前列の観客と握手をしながら歌っている姿はビルボードライブという空間を全力で楽しんでいるように思えた。その後もバンドと息の合った演奏で「You’re the Only One」と「News For You」を畳みかけMCへ。

 MCでは「ありがとうございます」と日本語で挨拶し、続けて「ここに来られて本当に嬉しいです。私は東京が大好きで、日本が大好きです。最後に来日してからしばらく経っています。そして、あなたたちが恋しかったです。次に歌う曲名は「Chocolate Legs」です。チョコレート色の脚についての曲です。チョコレートにはたくさんの味があり、ダーク・チョコレート、ミルク・チョコレート、ホワイト・チョコレートもあれば、その中間のチョコレートもある。そうでしょう? だからこの曲は、すべてのチョコレート・レディに贈ります。」と語り「Chocolate Legs」を披露。切なめのギターによるアルペジオから始まり、甘く色気のある歌声が会場を包みこんでいく。最後に披露された異次元の美しさをみせたロングトーンには自然と会場からは拍手が沸き起こった。

 再び行われたMCでは、「楽しい時間を過ごしていますか?」の問いに対して観客も“もちろん”といわんばかりの拍手と歓声で応える。そして、「私は幸運にも、これまでのキャリアで音楽界の神様や様々なアーティストたちと一緒に仕事をすることができました。私が幼少期から憧れていた紳士がいます。私はウィスコンシン州のミルウォーキーで育った少年でした。ミルウォーキーで暮らす少年だった私は、レコードにデイヴィッド・フォスターの名前が書かれているのを見るたびに、その作品を研究しなければなりませんでした。そのレコードを買って、その曲を聴く必要があったんだ。大人になった私は、デイヴィッドと一緒に仕事ができただけでなく、彼は私の大切な友人の一人となった。初めてデイヴィッドとスタジオに入ったのは、私がアルバム『Hurricane』を制作した時でした。デイヴィッド・フォスターをご存じない方もいらっしゃるかもしれませんね。そうですね、何曲か演奏してみましょう。」とコメントし、「After The Love Has Gone」や「Through the Fire」、「September」を披露。最高のカヴァータイムは非常に贅沢な時間だといえるだろう。この演出には会場のテンションもあがり自然とクラップが鳴り響き、会場の中にはスタンディングして踊りながら音楽を楽しんでいる観客も見うけられた。

 続けて「私はデイヴィッドとスタジオ入りした時に、彼に言ったんです、『デイヴィッド、あなたと一緒にタイムレスな曲を書きたいんだ』って。いつの時代に聴かれても不思議ではないサウンドの曲に、完全にタイムレスなサウンドにしたかったんです。そこで、この曲を思いつきました。気に入ってもらえると嬉しいです。」とコメントし「The Last Time」を披露。しっとりとしたピアノから始まったジャズ調の本楽曲は、熱を帯びていた会場を少し落ち着かせてくれるような大人びた空気感で、会場にはムーディーな雰囲気が漂っていく。さらに、会場をチルな雰囲気で満たした後に展開されたのが「Hurricane」だ。アップテンポで心地よいグルーヴ感に会場からはクラップが沸き起こる。ここでなんと、エリック・ベネイがステージを降り、前方席の観客と肩を組みながら歌う一幕も。肩を組まれた観客は一生の思い出になったことだろう。客席との距離が近いビルボードライブだからこそできる演出だと感じた。バックバンドによるハモリの中、エリック・ベネイのまろやかで美しい歌声が混ざり合い、会場を大いに盛り上げ再びMCへ。

 MCでは、「音楽業界で大きな影響力を持つアーティストがもう一人いるのですが、彼は亡くなってしまいました。数年前に亡くなりましたが、あまりにも早い死でした。でも、彼は間違いなく唯一無二の存在です。彼は特徴的なアーティストで、ほぼ新しいジャンルを作り出したような存在です。もしよければ、彼の曲を1曲歌ってもいいですか?」と、披露したのがプリンスの「I Wanna Be Your Lover」だ。このサプライズには会場も驚いた様子でどよめきのような歓声があがった。楽曲の途中ではキーボード、ギター、ベースの順番にソロ回しも展開され、曲が終わると、この日一番の拍手と歓声が会場を揺らした。

 その後エリック・ベネイは、「1997年にレコーディングした曲があるのですが、私とタミアという非常に才能のある若いシンガーとのデュエット曲で、人々が結婚式で好んで歌う曲でもあります。自分が作った曲を、誰かが愛の表現として使ってくれることは、ソングライターにとって大きな賛辞なので光栄です。デュエット曲ではありますが、一人で歌ってみようと思っています。試してみてもいいですか?」とコメントし、「Spend My Life With You」を披露。希望に満ち溢れたイントロから始まり、うっとりしてしまうような歌声が会場を包み込み、最後のバックバンドとのハモリは言葉にできないくらい美しく、彼らの技術力を見せつけてくれた。

 そして、最後にはファンの中では人気の高い「Georgy Porgy」を披露。曲が始まった瞬間に観客たちは立ち上がり、踊りながら音楽にのっており、会場は一瞬にしてクラブのような雰囲気に様変わりしていった。幅広い年齢層の観客が時間を忘れて音楽を浴びている様子を目の当たりにし、あらためて音楽の良さを再認識した。さらに、アンコールでは「Why You Follow Me」で会場をさらに盛り上げ、興奮冷めやらぬまま公演は幕を閉じた。

Text by Hironari Kagehi
Photo by Masanori Naruse

◎公演情報
【Eric Benet Live Will Be At Billboard Live June 2023】
2023年6月14日(水)東京・ビルボードライブ東京
2023年6月15日(木)東京・ビルボードライブ東京
2023年6月17日(土)東京・ビルボードライブ東京
2023年6月19日(月)大阪・ビルボードライブ大阪


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