<ライブレポート>YOASOBI、圧倒的なパワーで作り上げた“夢のような体験” 初のアリーナツアー【電光石火】埼玉公演

2023年6月14日 / 20:00

 YOASOBIが初のアリーナツアー【YOASOBI ARENA TOUR 2023”電光石火”】のファイナル公演を、6月4日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催した。

 この日の動員は19,000人。YOASOBIにとっては過去最大規模のワンマンライブだ。しかも日本に加えて世界各国での生配信も実現。最新曲「アイドル」がヒットチャートに数々の記録を打ち立て、米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”でも1位を獲得するなど、破竹の勢いを見せる今のYOASOBI。そのパワーを体感するまたとない機会になった。

 ライブを観てまず感じたのは、ボーカリストikuraとコンポーザーAyaseの堂々たる姿、そして骨太なパフォーマンスだった。そもそもYOASOBIは“小説を音楽にするユニット”である。ブレイクのきっかけになったのもアニメーションのミュージックビデオだ。コロナ禍のデビューだったこともあって、初のステージはオンラインだった。その後に有観客のライブやフェス出演もあったが、オーディエンスが歓声をあげたりシンガロングしたりする通常の形式でライブを開催できたのは今回のツアーが初めてである。叩き上げのライブアクトというわけではない。それでも、強く記憶に残ったのはふたりとバンドのフィジカルの強さだった。熱を帯びたボーカルと全身全霊のパフォーマンスでアリーナ全体をひとつにするような、迫力たっぷりのステージだった。

 開演時刻を過ぎると、レーザーの光が舞い、4つ打ちのビートとエレクトロ・サウンドが会場に鳴り響く中、天井から吊るされたセットが上昇し、黄色いトラックスーツのような衣装に身を包んだAyaseとikuraとバンドメンバーたちが登場する。「YOASOBI、はじめます!」とikuraが告げ、1曲目に披露したのは「祝福」だ。ハイテンションなエレクトロ・ナンバーのこの曲に「オイ! オイ!」とコールも沸き起こる。続いては代表曲「夜に駆ける」。ikuraが「飛び跳ねろ!」と煽り、観客のボルテージも一気に最高潮に達する。そしてAyaseが「最高の思い出を作ろうぜ!」と叫んで披露した「三原色」ではオーディエンスが頭上でタオルを振り回す。オープニングからかなりの熱気だ。

 MCでの観客とのコール&レスポンスのやり取りを経て、中盤からは「セブンティーン」「ミスター」「海のまにまに」「好きだ」と『はじめての – EP』からの曲を続ける。背後の巨大なLEDビジョンに映し出されたカラフルな映像もあいまって、日本を代表する小説家が書き下ろした楽曲それぞれの物語の世界観を感じさせてくれるような展開だ。

 続くMCでAyaseはAssH(Gt.)、やまもとひかる(Ba.)、ミソハギザクロ(Key.)、仄雲(Dr.)というバンドメンバーを紹介し、「大変なこと、しんどいことも沢山あったけれど、どれを振り返っても楽しかったというのがいちばん強くて。それを日々更新できてるのは本当に嬉しい」と感慨深そうにツアーを振り返る。

 ikuraのMCも感動的だった。会場のさいたまスーパーアリーナに初めて訪れたのは10年前の13歳、憧れだったテイラー・スウィフトのライブを2階スタンド最後列で観た時だったという。「音楽ってこんなにも感動させられるんだって思ったのを覚えています。感動したと同時に、私は自分がこのステージに立って、会場中を包み込むような歌を歌いたいと思いました。そして、今日、ここに立ってます!」と、夢を叶えた喜びと感謝を語る。そして「みんなにとっても夢をのせられるYOASOBIであってほしい、YOASOBIのライブに来たら夢のような体験ができる、そんなライブを続けたいと思っています」と、思いを吐露した。

 後半は「優しい彗星」から「もしも命が描けたら」と、切ないメロディを歌い上げるバラード曲を連ねる。グルーヴィーなポップチューンの「たぶん」では観客が心地よさそうに身体を揺らす。Ayaseとikuraの親しみやすいキャラクターも垣間見えたグッズ紹介とスタッフ紹介コーナーをはさみ、「ハルジオン」「ハルカ」「ツバメ」と爽やかでキュートな人気曲を次々と披露していく。

 そしてクライマックスとなったのは終盤の展開だ。エレクトロ・サウンドのSEに乗せてikuraが「腹の底から大きい声出して一緒に叫ぼうぜ!」と披露した「怪物」でオーディエンスが拳を突き上げ、大きなシャウトが巻き起こる。真っ赤な照明にレーザーの光が舞う。続く「群青」ではオーディエンスが〈知らず知らず隠してた〉というコーラスパートを大合唱する場面も。この日いちばんの一体感を生み出し、多幸感にあふれたラスト「アドベンチャー」で本編を締めくくった。

 アンコールを求める大歓声に応え、Ayaseとikuraとバンドメンバーたちが再びステージに登場。最後に披露した曲は「アイドル」だ。ライブセット用に長くアレンジされたイントロからikuraが「最後クタクタになるまで一緒に燃え尽きてくれる!?」と叫び、次々と畳み掛けるようなパワフルな曲展開、ラップと歌を高速で行き来するボーカルで巨大な熱気を生み出す。銀テープの舞う中「YOASOBIでした、ありがとうございました!」と満面の笑顔のikuraが深々と頭を下げ、ステージを去った。

 終わってしばらく経った後も身体の中に興奮の余韻が残るような、とても強烈なライブだった。この日会場に訪れた19,000人、その一人ひとりにとっても、まさに“夢のような体験”になったのではないだろうか。

 YOASOBIはこの後、8月5、6日にアメリカ・ロサンゼルスで行われる【Head In The Clouds Los Angeles】に出演するほか、【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023】や【SUMMER SONIC 2023】、Ayaseの地元である山口県で開催される【WILD BUNCH FEST.2023】など、国内の夏フェスへの出演も決まっている。さらに、11月6日および7日に東京ドームで開催される、コールドプレイの来日公演【MUSIC OF THE SPHERES WORLD TOUR】にもゲスト出演予定。こちらも無類の勢いとライブアクトとしてのポテンシャルを見せてくれる場になりそうだ。

Text by 柴那典
Photo by Kato Shumpei

◎公演情報
【YOASOBI ARENA TOUR 2023”電光石火”】
2023年6月4日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ


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