<ライブレポート>Chilli Beans. “盟友”Vaundyと作り上げたメモリアルな【Dancing Room 003】横浜公演

2023年4月27日 / 18:00

 Chilli Beans.が、3月16日に【Dancing Room 003】を神奈川・KT Zepp Yokohamaにて開催した。

 Chilli Beans.が主催する対バン公演である【Dancing Room】。第1弾ではリュックと添い寝ごはんとDENIMS、第2弾ではKlang Rulerとego apartmentといった、ともにシーンで切磋琢磨する同世代のアーティストたちとステージを作り上げてきた。第3弾となる今回では、名古屋・大阪・横浜を舞台に、PEOPLE 1、WurtS、そしてバンド結成前からの盟友であるVaundyを迎え、会場いっぱいに集まった観客を熱狂の渦に巻き込んだ。本稿では同ツアーの最終日、Vaundyをゲストに迎えた横浜公演の模様をレポートする。

 開演前の場内を見渡すと、1階のスタンディングエリアには肩と肩が触れ合うほどにいっぱいに詰まった観客の姿が。久しぶりに見るこの光景に、Chilli Beans.およびVaundyの人気が凄まじいことを改めて実感する。そして会場が暗転し、ステージに淡い光が瞬くなかにバンドメンバー、そしてVaundyが登場すると、大きな歓声が湧き上がった。

 ライブは、どこか懐かしさを感じるメロディに叙情的な歌声が映える「恋風邪にのせて」でしっとりとスタート。イントロが鳴り出した瞬間から大歓声が起こった「不可幸力」、「踊れるかい?」とのクールな問いかけからはじまった「踊り子」と、次々にキラーチューンをたたみ掛ていく。一息つき、観客の「かっこいいー!」とのコールに「ありがとう」とクールにコミュニケーションをとると、Vaundyはトレードマークともいえるフードをかぶり「napori」へ。レイドバックぎみのビートに、音の隙間を生かすタイトな演奏がセクシーに響く。一転し、ピンスポットに彼の姿がやさしく照らされると、始まったのはバラード「しわあわせ」。つぶやくような歌い出しから会場いっぱいに響き渡るサビまで、彼のボーカリゼーションの器用さが際立った。

 会場の熱気で「暑い!」とたびたびこぼしていたVaundyは、ここでフーディーを脱ぎ捨てる。この時点で驚くほど幅の広い楽曲群と、それを歌いこなすボーカルスキルを見せつけてきた彼だが、「大丈夫脱がなくて? ここから熱いぜ?」「じゃあ本気見せてもらおうか!」と観客を煽り、「CHAINSAW BLOOD」へ続いた。赤と白、直視できないほどに激しく光が切り替わるステージと、それに負けないくらい激しいVaundyのステージングがエモーショナルだ。その熱さに、観客もビートにあわせ飛び跳ねて応える。その熱気のまま「裸の勇者」「泣き地蔵」と重ね、宣言通りに観客を熱く魅了した。

 「めっちゃ忘れてたんだけどさ……Vaundyでーす」と自己紹介をし観客の笑いを誘うと、今回の共演について話し始める。「久しぶりに観るからなぁ、チリビ……」と感慨深そうにつぶやくと、いよいよラストスパートに。観客の大きな手拍子に包まれ、誰よりもVaundy自身が自由に楽しんでみせた「花占い」、ブリッジ部分ではシンガロング、そしてラストサビでは大きな声での掛け合いが起こり、声出しが可能になったからではの一体感に包まれた「怪獣の花唄」を歌い終えると、客席に深々と一礼し、堂々とした姿でステージを去っていった。

 舞台転換を終え、いよいよChilli Beans.のステージが始まる……と再度明るくなるステージを見ると、なんとステージにはChilli Beans.に加えVaundyの姿が。そしてEP『mixtape』より、コラボ曲「rose feat. Vaundy」のイントロが流れ出した。向かい合わせになってダンスを踊るなど、Moto(Vo.)とVaundyの自然体なステージングからも伝わる昔馴染みならではのリラックスした空気感には、観ているこちらもあたたかい気持ちになる。そしてMaika(Ba. / Vo.)の「Chilli Beans.でーす!」という自己紹介を真似して、Vaundyも「Chilli Beans.でーす!」と大きな声で挨拶。「4人目のチリビだね(笑)」とステージ上からも笑いが起こった。言葉少なにVaundyが去っていくと、入れ替わるようにYuumiとBOBOのドラマー2名が揃い、この2人がレコーディングにも参加した曲「duri-dade」へ。間奏でのツインドラムソロでは客席からも大歓声が上がり、曲終わりの〈I Don’t Need Your LOVE〉のリフレインでは大きな声で合唱が起こる盛り上がりぶりを見せた。

 ふたたび転換を終えると、満を持してホスト・Chilli Beans.のステージへ。気だるげなMotoの声が蠱惑的な「See C Love」「neck」、マイクノイズのようなビートから「blue berry」が始まる。ブリッジでは全員が大きく頭を振って破壊的な演奏を見せ、ただ可愛らしいだけではない骨太な姿も見せてくれるのが彼女たちの魅力だろう。

 一息つくと、ここからは一気にチリビの“陽”の面が見られる楽曲群へ。Motoもギターを手に取り、ギターボーカルスタイルで披露された「School」、サビ前に入る着信音を、今日はLily(Gt. / Vo.)がクールなスライドギターで表現した「L.I.B」、ハスキーなコーラスに短音弾きが神秘的な響きのギター、それを支えるダンスビートのユニークなアンサンブルが面白い「border line」を続けて披露した。

 そして、Maikaがステージの後ろにかかるバックドロップについて語り出す。「バックドロップの絵に、窓が書いてあると思うんですけど……これはDancing Roomっていう、みんながいる部屋の窓」「みんなそれぞれの生活があるけど、みんな同じ空を見て、同じ素敵な音楽を聴いているって意味」と、この絵に込めた熱い思いを明かし、観客も大きな歓声と拍手で賛辞を送った。

 「アンドロン」は、水中にいるような照明とボーカルエフェクトが印象的。ドラムの深い響きとコーラスが爽やかな音像を演出する「Vacance」、Yuumi、Maika、Lilyのソロ回しから「いっせーのーせ!」と元気いっぱいの掛け声でスタートした、とことんキュートな「マイボーイ」を終えると、Vaundyの「おもろい話」(?)をしよう、というコーナーへ。「リハしてる時、感慨深かったんです。みんな、音楽塾ヴォイスってところの生徒で。先にVaundy先生が旅立っていかれて(笑)。私たちはそのあとにバンドを結成して……。まさかZeppで対バンできるなんて思ってなかった!」と3人で口を揃える。

 2組の絆がわかるエピソードに会場もほっこりしていると、「daylight」で一気に会場はダンスムードに。そこからたたみ掛けるように「Tremolo」ではラップ部分で大きなコール&レスポンスが起こり、3人もはじける笑顔を見せる。「シェキララ」では観客も大きく飛び跳ね、それにあてられたMotoが息も荒く歌う姿がエモーショナルだ。そして本編最後を飾ったのは「HAPPY END」。イントロの時点で大きな歓声が上がり、Chilli Beans.らしい等身大の叫び、決意を大きな声で叫んだ。

 会場が暗転すると、「チリビ!」コールが巻き起こる。それに応えてChilli Beans.が姿を表し、最後は「lemonade」で会場全体が一体となってステップを踏み、「Dancing Room」の名にふさわしい光景で公演を締めくくった。

 終演後、帰路へ着く観客たちとともに駅へと歩いていると、みなChilli Beans.とVaundy、両方のアクトの“上がった”ポイントを興奮気味に語っていたのがとても心に残った。等身大でナチュラル、それでいて骨太なChilli Beans.、圧倒的な実力とカリスマ性のVaundyと、そのアーティストとしての在り方は異なれど、それぞれの魅力、そして2組の深い友情と信頼関係を目の当たりにした、メモリアルな対バン公演だった。

Text by Maiko Murata
Photo by Momo Angela 

◎公演情報
【Dancing Room 003】
2023年3月16日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
ゲスト:Vaundy


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