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2023年3月29日、南アフリカ出身のシンガー・ソングライター、アリス・フィービー・ルーが、ゲストにカネコアヤノを迎えてビルボードライブ横浜に初登場した。本稿では同世代の二人にとっては2019年以来、約4年ぶりの共演となった同公演の2ndステージの模様をお届けする。
開演時間が訪れると、カネコアヤノが一人でステージに登場し、拍手で迎えられる。弾き語り形式のステージとなった今回のパフォーマンスは「手紙」からスタート。エレキギターを奏でながら響き渡るハスキーな彼女の歌声は儚さ、そしてパワフルさが共存していて、楽曲の世界観に聴く者を匠に引き込んでいく。「もしも」 、「追憶」とそのまま続けて披露すると、今度はアコースティックギターに持ち替え。一際迫力が際立った「ごあいさつ」、放牧的な「エメラルド」、そしてニヒルさも感じられる「タオルケットは穏やかな」を次々と披露。ラストは疾走感溢れる「わたしたちへ」でセットを締めくくり、「ありがとうございます」とシンプルな挨拶でステージを降りた。職人のような、無駄を削ぎ落とした本能的とも言えるパフォーマンスだった。
数分間のステージ転換を経て、今度はアリス・フィービー・ルーがバンドメンバーと共に登場する。本人が「クレイジーなツアーだった」と話す今回の【Alice Phoebe Lou Japan Tour 2023】の最終公演である今日は一際ハッピーな雰囲気がアリス、そしてバンドメンバーからも感じられた。
ソウルフルでブルージーな「Only When I」からセットは始まり、そこから内に秘める情熱が滲み出てくるような「Glow」、ゆったりと身体を揺らしたくなる「Touch」とオリジナリティのあるサウンドで会場を満たしていく。「前回の来日以降、アルバムを2枚出していて、もうすぐ3枚目が出ます」という紹介から、2019年以降にリリースされた楽曲が次々と繰り出されていく。
伸びやかな歌声が特徴的な「Dusk」や、バーみたいな空間が似合いそうな幻想的雰囲気の「Lover//Over the Moon」、ゾーンに入ったような訴えかけるパフォーマンスが印象的だった「Silly」など、ここ数年でいかにクリエイティブに制作活動を続けてきたかが伝わる多彩な楽曲群が続く。
「ツアーで色々な場所に行けたけど、毎回日本が一番楽しみ。今日は最終日だから寂しいです。必ずまた戻ります」というファンにとって心強い言葉を届けると、「Heavy//Light as Air」でクールなサウンドと美しいハイトーンボイスを披露。そこから「ツアー中に作った新しいアルバムからの曲」として「Angel」、そしてツアーの初めにリリースしたダンサブルなシングル「Shelter」と最新のアリス・サウンドをオーディエンスに届けた。
本公演、そしてこのツアーを締めくくる最後のブロックは、温かみと踊れるグルーヴが調和する「Child’s Play」からスタート。改めてアリスは「次がこのツアーの最後の2曲。悲しいけど美しい」と名残惜しい気持ちを吐露してくれたが、当然ステージはそのまま続く。アップテンポで疾走し、空間的なギターサウンドが刺激的な「Witches」で会場を沸かすと、いよいよ残すはあと1曲。「終わったら温泉に入ってチルする。長い空の旅が控えてるからね(笑)」と話すと、アリスは強力なバンドメンバーであるアンダーソン・ベン(Dr)、アディン・デケル(Ba)、ペリー・デービット(Gt)、そしてヤミン・ジブ(Keyboards)を紹介。そして、オールラストの「Dirty Mouth」に突入する。美しく淡々としたビート感だが、その中に“熱さ”が秘められているようなアレンジの楽曲。最後の最後で一気にパワフルなバンドサウンドに変化していくのも聴き手の興奮を煽る、シンプルにカッコいい締めくくり方だった。
アリス・フィービー・ルーとカネコアヤノという、スタイルの違うシンガー2人の表現の真髄が感じられる濃密な一夜だった。
Text:Haruki Saito
Photo:Yuma Totsuka
◎公演情報
【Alice Phoebe Lou Japan Tour 2023 feat. カネコアヤノ】
2023年3月29日(水)神奈川・ビルボードライブ横浜
セットリスト:
<カネコアヤノ>
1. 手紙
2. もしも
3. 追憶
4. ごあいさつ
5. エメラルド
6. タオルケットは穏やかな
7. わたしたちへ
<アリス・フィービー・ルー>
1. Only When I
2. Glow
3. Touch
4. Dusk
5. Lover//Over the Moon
6. Silly
7. Heavy//Light as Air
8. Angel
9. Shelter
10. Child’s Play
11. Witches
12. Dirty Mouth
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