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『DEAD END~The first four works~Vinyl Collection』と題して、DEAD END の初期 4 作品が6月30日(水)に アナログ盤で再発されることからスタートしたOKMusic企画『DEAD END特集』。その第二弾は1987年9月にリリースされたメジャーデビューアルバム『GHOST OF ROMANCE』。前年の『DEAD LINE』の制作の途中でギタリストがYOUに代わったが、その後にドラマーのTANOが脱退し、後任を探すオーディションを経てMINATOの加入が決定――という過程を経て固まった新体制による最初の作品。このアルバムについてMORRIEとCRAZY“COOL”JOEは、次のように振り返ってくれた。
「新しくメインの作曲者になったYOUちゃんを信頼していたので、曲の方向性などは話し合ったことはなかったと思います。渋めに仕上がったと思います。メジャーのデビューアルバムとはいえ、バンドのアルバムとしては実質2枚目でしたので、いわゆる“勝負の3枚目”へのつなぎ的なアルバムになったと思います」(MORRIE)
「方向性はなかったと思う。みんなで集まって“こういう方向で”っていう話をした記憶はない。ただ、レコーディングについては東京のスタジオはすごいなぁと思った。どういう位置づけのアルバムと言われてもピンときませんが、ドラマーも決まり、いよいよメジャーデビューやなって感じやったのかな? 東京に来てドラマーを探していて、スタジオで何人かと演奏したけど、MINATOはなんか肌が合ったんやろうね」(CRAZY“COOL”JOE)
分かりやすくするために少々極端な言い方をするのを許してもらうならば……当時のリスナーの心をとらえたDEAD ENDの魅力とは、“ハードロック/ヘヴィメタルっぽくない”とでも言いたくなる部分にあったように思う。もちろん彼らの下地にあるもののひとつはハードロック/ヘヴィメタルであり、リスナー層の大半もそれらの音楽の愛好家であった。しかし、国内の他のバンドと雰囲気が異なるだけでなく、欧米のものとも違う何かを漂わせているのがDEAD ENDだった。音楽の表現スタイルがこれだけ多様化している現代のリスナーの耳で向き合うならば、“こういうハードロック/ヘヴィメタルのかたちもあるよね”と自然に受け止められるかもしれないが、彼らがデビューした1987年頃だと同時期に盛り上がっていたLAメタル、NWOBHMの流れを汲むバンド、Deep Purple、Led Zeppelinなどを含む先人たちに通ずる作風が、“これはハードロック/ヘヴィメタルである”という印象を圧倒的に左右していた。当時のそういう状況の中で、DEAD ENDはどこか異質な香りを放っていたのだ。
彼らがこのようなバンドとなった理由は、メンバー全員の音楽的背景やプレイスタイルが、いい意味でバラバラだったことも大きいのだろう。例えばMINATOのスタイルは、当時の“ハードロック/ヘヴィメタルのドラム”として想起されるものとは異なる。彼のプレイを端的に言い表すならば“シャープ”ということになると思う。「MINATOはうまいのはもちろんでしたが、ここぞという時の底力の凄まじさ、音の殺傷力みたいなものに惹かれました」というMORRIEの言葉は、彼のプレイの魅力を的確に表している。しなやかなフォームで叩き出されるビートは、シンバル類の巧みな使い分けも含めて、“職人肌”とでも表現したくなる面もある。SABER TIGERの元メンバーだった彼にはプログレバンドでの活動歴もあり、ジャズを含む幅広い音楽にも幼年時代から親しんでいた。このような背景も彼のプレイスタイルを育んでいったのだろう。
不穏な響き、妖艶な色香を放つMORRIEの歌、グラマラスで華やかな存在感があるCRAZY“COOL”JOEのベースプレイが、唯一無二であるのは言うまでもない。そして、YOUの表現スタイルも独特なものがある。ディストーションなどの歪み系のエフェクトだけでなく、空間系やクリーントーンも用いて、繊細なコードの響き、アルペジオが生む音の広がりも的確に活かしている彼のギターからは、当時のハードロック/ヘヴィメタルとは別の流れとして成熟を重ねていたUKロック的な要素を感じ取ることができる。このようなメンバーたちの個性が集まって制作された『GHOST OF ROMANCE』の聴きどころは本当に数限りない。例えば1曲目の「Danse Macabre」は冒頭のドラムを聴いた時点で、先ほど紹介したMINATOのプレイとはどういうことなのかがよく分かるだろう。じっくりと展開しながら熱を帯びていくアンサンブルも、このバンドの音楽のスケールの大きさを目いっぱいに実感させてくれる。そして、その他にも秀逸な曲が続く。美しいメロディーとアグレッシブなサウンドが融合している「Phantom Nation」は激しい興奮を誘って止まない。コードやアルペジオの響きが絶妙に活かされている「The Godsend」にも痺れてしまう。本作のラストを飾る「Song of A Lunatic」は美しい展開の連続だ。
「曲作りのために河口湖へ合宿に行って、“こんな曲ができた”と「Song of A Lunatic」をYOUちゃんが披露した時、感動したことを憶えています。聴かされた時は感動すると同時に驚きました。というのは、ハードロック/メタル的な曲ばかりを作っていたギタリストから、そうではない何か未知の可能性を感じさせる曲が出てきたからです。別に他のメンバーの嗜好を斟酌したとは思えませんし、自然に作られたような感じでしたので、そこで彼に惚れ直しました」(MORRIE)
「その頃はその頃で、The MissionとかThe Cultとかの影響が大きかったんじゃないかな?」(CRAZY“COOL”JOE)
とふたりは語っているが、リアルタイムで本作と向き合ったリスナーにとっても「SONG OF A LUNATIC」は胸を躍らせた曲のうちのひとつではないだろうか。
この後に続く作品を知っている現代の我々にとっては、『GHOST OF ROMANCE』は“成熟を迎える前のアルバム”という印象にはなるのだと思う。しかし、後につながるものの萌芽をさまざまなかたちで感じ取ることができて、「Danse Macabre」や「Song of A Lunatic」のようなファンに深く愛され続けている名曲が生まれているのが本作だ。“必聴”はDEAD ENDの全作品に添えるべき言葉ではあるのだが、『GHOST OF ROMANCE』にもまさしく“必聴”という言葉が相応しい。
text by 田中 大
LPアナログ盤『GHOST OF ROMANCE』
2023年6月30日(金)発売
LHMV-2004/¥6,000(税込)
※完全生産限定アナログ盤
※180グラム重量盤
※1987年作品
<収録曲>
■SIDE A
01. Danse Macabre
02. The Damned Thing
03. Phantom Nation
04. The Godsend
■SIDE B
01. The Red Moon Calls Insanity
02. Dead Man’s Rock
03. Skeleton Circus
04. Song of A Lunatic
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