<インタビュー>Crystal Kayの挑戦は止まらない、最新EP『Start Again』を語る

2023年3月1日 / 18:00

 Amazon Originalドラマ『A 2 Z』で流れる劇中歌「Start Again」「How You Feel」「Spark」とノラ・ジョーンズのカバー「One Flight Down」を収録したCrystal Kayの最新EP『Start Again』が配信中。日米で活動するシンガー・ソングライターのEmi Meyerと共作した今回の劇中歌は、20年以上のキャリアを誇るCrystal Kayがジャズという新しい分野に飛びこむ機会となった。制作過程を聞くなかで、「自分の成長が結果的に周りをハッピーにする要因になる」ことを理解し、挑戦や学びを受け入れる彼女の姿が見えてきた。

――最新EPの収録曲は全て、これまでとは違うCrystal Kayさんの魅力を発見できる4曲に仕上がっていますね。

Crystal Kay:「歌を聞いてから撮影したい」というドラマ側の要望があって、結構自由に作ることができました。最初、「ノラ・ジョーンズの曲を数曲カバーしてほしい」と言われたんですが、その頃、カバー・アルバムを出したばかりだったし、誰もが知るノラをカバーするのはハードルが高いと思って(笑)、こちらからオリジナル曲を作ってもいいか依頼しました。「私、ジャズシンガーじゃないし、どうしよう? あ、パーフェクトな人がいるじゃん!」ってEmiに連絡して。Emiとは、もう10年近くの友達なんですけど、一緒に仕事するのは初めてでした。でも、本当にスムーズに作れたというか。

――長年の友人だからこそ、スムーズに進んだのでは?

Crystal Kay:はい、私の恋愛事情とか全部知ってるので(笑)。彼女の仕事っぷりを見ることができた素敵な時間でもありました。ドラマの主題歌って、「こういうふうに、こういうサウンドでお願いします」っていう要望が多いことが多いんですけど、今回はジャズというこだわりもありながら、わりと自由に作らせてもらえました。

――言葉と言葉の間の空気感を埋める必要があるジャズは、ダンスやポップスをやってきたCrystal Kayさんにとってもチャレンジングな経験だったのではと想像しましたが……

Crystal Kay:ほんとうにその通りです! ジャズの方々って、そのスペースをフリーに使うのが上手じゃないですか。でも、ポップとかR&Bは小節とメロディーに決まりがあって、それに慣れてる私からすると、メロディーが少なかったり、スペースがあったりすると、どうすればいいのかわからなくて、全部Emiにディレクションしてもらいました。新しい経験でしたね。

――「Start Again」は、人生のセカンドアクト(第二幕)を表現した曲だそうですね。

Crystal Kay:20代後半にニューヨークで暮らしていたことがあるんです。歌詞に出てくる<50th and 8th>は、そのときの住所なんですよ。ちょうどその頃が自分の1回目の壁というか。「今の自分のままでいいのかな?」って悩んでた頃で、誰しもそういう瞬間があると思うんです。特に女性は、結婚とか出産とか、いろんな人生のチョイスがあって、「果たして、これが正しいのか」って。私は歌詞を書くとき、本当のことしか書かないんです。私も人間だからみんなと同じことを感じるし、脆さというか、人間らしさを表現したかったんです。

――女性に限ったことではないですが、30歳までにとか、結婚がひとつの区切りとされていて、特に女性は第一幕の終わりを迎えるのが早いような気がします。

Crystal Kay:日本は特にそうですよね。このドラマは、40代でも恋をしてもOKとか、新しいライフスタイルが描かれていて、誰もがStart again(やり直す)する権利があることが伝わってきます。<Swipe left, swipe right>も出会い系アプリから始まる新しい恋のスタイルを指してます。

同世代の女性と仕事することが今まであまりなくて、BENIもそうなんですけど、そういう仲間は大切にしています。それに、今回の作品を通して、「私たちがしたことは間違ってなかった」って実感できたのは嬉しかったです。

――どれくらいの期間で作り上げたのでしょうか?

Crystal Kay:一通り完成させるまでの時間はかなりあったんですが、レコーディングの締め切りが短くて……4曲とも1日でレコーディングしました。でも、歌に乗せる気持ちの準備はできていたし、Emiも現場にいたからか、意外と4時間ぐらいで済みました。歌い慣れていないジャンルだったので、ボーカルのところだけ不安だったんですけど、Emiから「繊細(vulnerable)な感じが出てて、そのままでいい」って勇気づけられました。いつも自分でディレクションしているので、レコーディング時にディレクションしてくれる人がいることの重要性を感じました。

――「How You Feel」も「Spark」も恋をしているときの状態を表現されていますね。

Crystal Kay:全部Emiが書いたんですけど、「Spark」はほんの少し修正を入れたぐらいで、「Start Again」と「How You Feel」は私たちが思い描いた原形の100%に近いです。「とにかくエモーショナルに」ってEmiがプッシュしてきて、脆さを声で表現すること、そして私の課題でもある強弱を意識しました。歌詞は二人の経験をそのまま書いています。

――このドラマは文語的なセリフが多くて、俳優の方々も演じるのが難しかったと思います。Crystal Kayさんは最近ミュージカルにも出られているので、表現のバリエーションが増えたのではないでしょうか?

Crystal Kay:実は小さい頃から演技をやりたくて、そっちの方面ももう少しやりたいなと思っているんです。俳優としてのキャリアがそこまでないので、ちゃんと答えられないんですけど、ミュージカルのステージでは、体全部を使わなきゃいけないことを学びまして、もっと体をフルに、声も最大限に使わなきゃいけないという課題が出てきました。普通にきれいに歌っていてはダメなんです。言葉、感情をちゃんと歌にすることが大事で、ミュージカルでは誰もポップスのきれいな歌を求めてないというか、それだけじゃ足りないし、届かないんですよね。なので、逆にミュージカルで培ったものが歌やライブのほうで活かせる気がしています。

――課題と挑戦が止まらないですね。

Crystal Kay:新しい発見がいつも出てくるから、終わりはないと思っていますが、そういう学びはウェルカムですね。だって自分が良くなるだけじゃないですか。デビュー当時から、何かと並行して動いていたし、追い込まれるのが好きなのかも。「それでも絶対できる!」みたいな。

――新しい挑戦や苦労が絶えないなか、自分を保つ、そして活動を続けていこうと思える原動力はなんでしょうか?

Crystal Kay:ライブでみんなが本当に楽しそうにしている表情を見て、「ああ、届いてるな」って気づく瞬間ですかね。誰かのためになっているんだって分かる瞬間。それを届けるには、自分がいい状態、メンタルも体も常にいいところにいないといけないので、気持ちをあげるために、自然に囲まれている時間を作ったり、新しいものを見たり、吸収したりしています。やっぱりハッピーでいたいですよね。みんな人間なので、健康でハッピーでオープンになれたら最高じゃないですか。私がそうあることで、私もいいものを提供できると思っています。

Text by Mariko Ikitake

◎リリース情報
『Start Again EP』
2023/2/24 DIGITAL RELEASE

『A 2 Z』オリジナル・サウンドトラック
2023/3/1 RELEASE
TYCT-60204 3,300円(tax in)
https://crystalkay.lnk.to/a2zWE


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