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訳あって、シティポップ楽曲ばかりを聴いてて。世界的なシティポップ・ムーブメントの起こりや流行の理由も、ようやく理解できた僕。そもそも、シティポップというのは“都会的で洗練されたポップス”という、明確な定義のない曖昧なジャンルで。昔からJ-POPや歌謡曲に自然と触れてきた日本の音楽ファンにとっては、その線引きが分かりづらかったりするのですが。いろいろと聴いてる中で、「その曖昧ゆえの奥深さも、シティポップの魅力なのでは?」なんて思うようになってきた。今回はシティポップ、ネオシティポップと呼ばれる5曲をセレクトして、その面白さを紹介。あと、たくさん聴きまくってひとつ分かったことは、「日本のミュージシャンってやっぱりすげぇ!」ってことでした!
「Plastic Love (Night Tempo 100% Pure Remastered)」(’16)/ Night Tempo
世界的シティポップ・ムーブメントの立役者であり、シティポップが世界で評価されていることを音楽ファン以外にも知らしめたのが、韓国のDJ&プロデューサーである、Night Tempo。70~80年代の日本のポップスをサンプリング~再構築した“フューチャー・ファンク”の人気アーティストとして知られ、2016年3月に発表した、竹内まりや「プラスティック・ラブ」のリエディット動画で、シティポップの素晴らしさを世界に広めた彼。「うわ、日本のポップスってこんな世界を熱狂させるほどレベル高いし、こんなカッコ良いんだ!」と、改めて教えてくれた功績は大きいし、昭和歌謡や日本のカルチャーをめちゃくちゃ愛してくれていることがすごく嬉しいし、誇らしく思う。
「フライディ・チャイナタウン」 (’81)/泰葉
そんなNight Tempoが2021年10月、「昭和の音楽でLAの2000人が合唱する不思議な世界線に僕らは生きています」というコメントと共にTweetした、フロアーで外国人が大合唱する映像を観て、「シティポップって、本当に世界で流行ってんだ!」と心底驚かされたが。その時、プレイしていたのがこの曲。1981年、泰葉のデビュー曲としてリリースされた当時は、世代的にもリアルタイムで聴いてなくて。近年、テレビで高橋真麻が歌ってた姿の方が、先に頭に浮かんでくる楽曲だったけど。原曲を改めて聴くと、イントロのカッコ良さや歌い出しのインパクト、グルービーな演奏とキャッチーで起伏あるメロディーに乗せた独特な歌詞に、ダンスフロアを沸かせる理由が分かる気がした。ちなみにデビュー前の藤井 風が、ピアノの弾き語りでこの曲をカバーする動画も存在。歌もピアノもめちゃくちゃカッコ良いです!
「Out of Time」(’22)/The Weeknd
海外の音楽ファンがレコードを漁りに日本を訪れて、中古レコード店で70~80年代のポップスを爆買いしたり。需要に伴ってレコードの価格が高騰したり、40年も前の曲が再リリースされたりと、日本に住む者にとっては不思議な現象が起きてるシティポップ・ムーブメント。洋楽の影響を多分に受け、音楽的クオリティがどんどん上がっていた日本のポップスに、当時は海外の人が目を向ける機会がなく。現在になって、その価値に気付いたというのも、ムーブメントの理由のひとつと知って、すごく納得したが。The Weekndが亜蘭知子「Midnight Pretenders」をサンプリングしたという話題は、シティポップが想像以上に、世界のミュージシャンに影響を与えていることに驚いたし。そのカッコ良さに当時の記憶やノスタルジーで昭和歌謡を聴く日本の音楽ファンとは、全く違った楽しみ方をしてることも納得した。日本人より日本に詳しい音楽ファン、世界にいっぱいいるんだろうな。
「君は天然色」(’81)/大滝詠一
1981年リリースのアルバム『A LONG VACATION』収録。“シティポップの金字塔”と言われる作品の1曲目を飾り、発売から40年以上経つ現在も色褪せない輝きを放ち続けるこの曲。大滝がフィル・スペクターを意識したという、きらびやかで色鮮やかなサウンドや美しいメロディーと、松本隆のおしゃれで切ない歌詞が、何度聴いてもキュンキュンと胸を締め付ける。「シティポップって何?」という人には、永井博の手掛けたアルバムジャケット含めて、「これがシティポップです!」と説明すれば、曖昧な“シティポップ”というジャンルやムードがなんとなく理解できるはず。ちなみに1982年10月、世界初のCDプレイヤーが発売された時、邦楽で一番最初にCD化されたのが『A LONG VACATION』。つうことは、CDで初めて聴いたのがこの曲という人も多いはず。すごすぎるエピソードです!
「東京フラッシュ」(’20)/Vaundy
そして現在。“ネオシティポップ”と呼ばれる楽曲やアーティストが存在し、日本の良質なポップスを継承するミュージシャンが多数存在するが。そこには70~80年代のシティポップをカバーしたり踏襲する人だけでなく、アシッドジャズやアブストラクト・ヒップホップ、EDMといった幅広い音楽を取り入れた、新しい感覚から生まれる最新型ポップスを鳴らす人も多数存在。Vaundyの「東京フラッシュ」も、おしゃれでクールなサウンドやメロディー感、“東京”をテーマとした歌詞から“ネオシティポップ”と評価される楽曲だが。その表現が昭和のポップスから影響を受けたとは考えづらく、別軸と考えるのが自然。そこにあるのは“都会的で洗練されたポップス”という曖昧な定義づけで、やっぱりそこにシティポップの面白さがあるなと思うし。シティポップリバイバルとネオシティポップの流行が、別軸で同時に起きてる現象に、現在も昔も都会で生きる若者にフィットする音楽というのは、大きく変わらないのだなと思わされた。
TEXT/フジジュン
フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者など、なんでも屋として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野。現在は音楽サイトや、雑誌『昭和50年男』等で執筆。
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