<ライブレポート>菅田将暉の初武道館ライブに見た、挑戦し続ける表現者の矜持

2023年2月21日 / 00:00

 菅田将暉が、2023年2月14日にライブツアー【菅田将暉 LIVE TOUR “クワイエットジャーニー” 追加公演】を東京・日本武道館にて開催した。

 バンド・メンバー“KNEEKIDS”と創り上げた4曲入りEP『クワイエットジャーニー – EP』を引っ提げて、2022年10月28日の大阪・Zepp Osaka Baysideを皮切りに全国6か所12公演を行ってきた3年ぶりの有観客ツアー。そのファイナル公演となるのは、初めての舞台となる日本武道館だ。会場前の物販エリアに長蛇の列ができるなど、集まった大勢のファンからテンションの高さが伝わってきた。

 スクリーンに『クワイエットジャーニー』の頭文字「QJ」が映し出されたステージ上には、向かって左端にソファー、右端にはベッドが置かれていた。ツアーの旅から戻ってきたメンバーたちを迎えるような、『クワイエットジャーニー – EP』で表現されていたリラックスした雰囲気が、ステージセットにも表れている。

 暗転すると、静かなSEに乗って菅田とKNEEKIDSのメンバー(sooogood![Gt.]、川口圭太[Gt.]、越智俊介[Ba./CRCK/LCKS、Shunské G & The Peas]、モチヅキヤスノリ[Key.]、タイヘイ[Dr. /Shunské G & The Peas])がステージに上がる。まばゆいライトで逆光になっている中、ライブは「クワイエットジャーニー」からスタートした。淡々とした演奏と穏やかな菅田の歌声が広がっていく。すると、後半で演奏がピタッと止まった。しばらく静寂が続くと場内のざわつきをかき集めるように、メンバーが手拍子を求めてそれに応えるオーディエンス。そのまま曲は「ゆだねたギター」へと突入した。リズミカルな演奏に乗って両手を広げて歌う菅田は、「クラップ!」と呼びかけて煽る。KNEEKIDSがユニゾンのフレーズをキメて曲を終わらせた瞬間、菅田による「ワン、ツー、スリー、フォー!」の掛け声で「ソフトビニールフィギア」へ。場内が明るくなり「武道館!!」と叫んだ菅田の表情がスクリーンにアップで映し出されると、「キャ~!」とものすごい嬌声がステージに向けられた。改めて会場を見渡すと、最上部の席までギッシリ埋まっている。歌いながらステージ端まで行き1階スタンド席近くまで足を運ぶ菅田を、大歓声で迎えるファンたち。グレーのフーディー姿には、まるでフラッと家から散歩に出てきたかのようなフットワークの軽さが感じられる。

 70年代のグラム・ロックを彷彿とさせるロックチューン「八月のエイリアン」を歌い終えると、MCでは「こんにちはー! 菅田将暉です! そしてKNEEKIDSです!」と、メンバー全員で膝を曲げる“KNEEKIDSポーズ”を見せる。「まさかの日本武道館でございます。俳優業だとこれだけの人の前に立つことがないので、めちゃくちゃ不思議です。今日は約1万人入ってます」と初めて武道館のステージに立っている心境を語る菅田に大きな拍手が送られた。「愛と右脳」では、ソファーに座りながら歌う菅田と、sooogood!のラップが緩やかに空気を揺らす。続く「りびんぐでっど」はベッドに横たわり身をよじりながら歌う菅田。その様子を天井からのカメラがスクリーンに映し出し、まるで菅田の部屋を天井から見ているような背徳感もあり。そのままベッドに腰掛けて歌った「キスだけで feat. あいみょん」まで、メロウな空気感を武道館の隅々まで届ける、ベッドタイムミュージックなコーナーとなっていた。

 「コロナ禍で、これまでお客さんの前で歌えなかった曲が結構あります」とのMCから歌われたのは、「虹」。ストリングスのカルテットが加わり、優しく包容力のある曲の世界をより一層盛り上げると、スタンドマイクを両手で掴みながら菅田の熱唱に、会場中が静まり返って聴き入っていた。KNEEKIDSとの出会いのエピソードから、アコースティックコーナーへ。「つもる話」のカントリー調のアレンジが心地良い。「自粛期間に作った曲」との紹介から始まった「ギターウサギ」では、〈誰にも見せない 俯いた時間〉と、素顔の菅田を垣間見せるような歌詞が歌われる。コロナ禍を経て初めて実現した武道館のステージには、この3年間のさまざまな思いが込められているように思えた。

 オープニングから総立ちの客席を見渡した菅田は、「そういえば、アコースティックコーナーのときに『座ってください』って言う予定だったのに忘れてた。すいません、武道館初めてなもんで(笑)」と笑わせる。「意外と近くに感じるね」と客席を眺めつつしばしお客さんの声と交流し、和やかな雰囲気からソファーに腰掛けると、米津玄師からの提供曲で自身の代表曲のひとつ「まちがいさがし」が披露された。前半はストリングス・カルテットのみ、途中でアコースティックギターとピアノが加わる編成をバックに、伸びやかに歌い上げる菅田。その圧倒的なパフォーマンスで、文句なしの名演となった。

 いったんステージ袖に下がり、衣装チェンジして戻ってきた菅田が「武道館! まだここからいけますか!?」と煽り、「見たこともない景色」を歌い出した。ところが、「すいません、いったん止めまーす」との声がして演奏がストップ。ステージに現れたのは、アルコ&ピースの平子祐希だ。これまでもツアーでは幕間映像で登場してきたことでファンに知られる“平子先生”だが、まさかの生登場に客席は大喝采となった。「なんで止められたか自分でわかんないかな?」と詰め寄る平子先生に神妙な表情の菅田。歌唱指導をするものの納得がいかないようで、なかなか歌わせてもらえない。さらに矛先を客席に向けると「ライブってこっちも一緒になって創るもんだろ!?」と、アリーナ、1階、2階に向かってシンガロングを求めて煽りまくる。「日本全国から集まってきた奴らの声が、息吹が、“日本の風”になるんだよ! そしてみんなで見てみようぜ。菅田、何を見せてくれる!?」(平子)「見たこともない景色!」(菅田)そんな掛け合いから、改めて「見たこともない景色」が始まると、客電がついて会場中が大合唱となった。

 “惑”の文字がスクリーンでグネグネと形を変えるサイケな演出の「惑う糸」、メンバーもステージを縦横無尽に動き回った「TONE BENDER LOVE」と、ロックチューンが続く。そして菅田がアコースティックギターを持ち、sooogood!がディレイのかかったギターリフによるイントロを弾き出すとドッと客席が湧いた。「さよならエレジー」だ。汗だくでシャウトする菅田の表情がスクリーンに映し出されると、ステージに向かって拳を突き上げるオーディエンス。ストリングスも加わった厚みのあるサウンドの迫力がすごい。赤いレスポールに持ち換えて歌った「いいんだよ、きっと」の終盤では、自らギターソロを弾いてみせた。

 「楽しませてもらいました。本当、夢見心地です」とのMCから、サプライズで新曲「美しい生き物」を披露。楽曲プロデュースをSundayカミデが担当しており、ジャケットは俳優の岡山天音による描き下ろしイラストが使われていること、日付が変わる2月15日0時に配信リリースされることも明かされた。訥々と語るように歌う前半から一聴して耳に残るサビまで、シンプルな演奏と透明感のあるメロディが印象的だった。最後は再び「クワイエットジャーニー」が演奏され、スクリーンにはメンバーの姿が、菅田らしいこだわりの映像で映し出されていた。

 ツアーTシャツに着替えてアンコールに登場すると、THE HIGH-LOWSのカバー「日曜日よりの使者」を歌い出す菅田。「ゲスト呼んでいいですか!?」と叫ぶとCreepy Nutsがステージに上がり、大歓声で迎えられた。R-指定のラップ、間奏ではDJ松永のスクラッチが炸裂して、会場は爆発的な盛り上がりだ。別日に行われたリハーサルに参加できなかったというDJ松永は、「リハやっといて何やってんだ!」とツッコむなど、盟友らしいトークはまるで深夜ラジオを聴いているみたいだ。そして「やっとお客さんの前でやれる」と、まさにラジオ『菅田将暉のオールナイトニッポン』での共演から生まれたコラボ曲「サントラ」が3人揃って初めてライブで生披露された。大きな手拍子に乗ったR-指定のラップからサビの菅田の歌へと繋ぐと、場内は体を揺らすオーディエンスでうねるような熱気が充満した。向き合って言葉をぶつけ合う菅田とR-指定、間奏ではDJ松永が圧巻のテクニックを見せて魅了する。リリースから約3年越し、菅田の初武道館ライブという大きな舞台、さらにアンコールで満を持しての初披露。曲が持つメッセージに想いを重ねて胸が熱くなったファンもいたのではないだろうか。

 Creepy Nutsを見送った菅田は、グリーンのテレキャスターを抱えて「いちばん最初に作った曲をやります」とのひと言から、「ゆらゆら」を歌う。曲名とは裏腹にタイトな演奏と力強い歌声から、「ラララ~」とコーラスを求めてステージと客席がひとつになって、ライブは終了となった。エンディングでは、KNEEKIDS、カルテットのメンバー全員とともに一列に並んで客席に一礼。ひとりでステージに残った菅田は、「ありがとうございました! またこうやって集えるように頑張ります! 元気で!」と言い残して、初の武道館ライブを締めくくった。

 2時間半、21曲。表情豊かな楽曲の数々からは、これまでの音楽活動でいかに菅田将暉が表現者として挑戦を続けてきたかが伝わってきた。きっとこれからもさまざまな音楽で自分を追求し続けるに違いない。サプライズ披露された新曲からも、そんな彼の“新たな旅”が想像できるような気がした。

Text by 岡本貴之 

◎公演情報
【菅田将暉 LIVE TOUR 2022 “クワイエットジャーニー”】追加公演
2023年2月14日(火)東京・日本武道館 

<セットリスト>
1. クワイエットジャーニー
2. ゆだねたギター
3. ソフトビニールフィギア
4. 八月のエイリアン
5. 愛と右脳
6. りびんぐでっど
7. キスだけで feat. あいみょん
8. 虹
9. ラストシーン
10. つもる話
11. ギターウサギ
12. まちがいさがし
13. 見たこともない景色
14. 惑う糸
15. TONE BENDER LOVE
16. さよならエレジー
17. いいんだよ、きっと
18. 美しい生き物 ※新曲
19. クワイエットジャーニー
[Encore]
20.日曜日よりの使者
21.サントラ
22. ゆらゆら


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