【Editor's Talk Session】今月のテーマ:音楽クラウドファンディング『sprayer』が提示する新たなファン体験

2023年2月20日 / 10:00

Editor's Talk Session (okmusic UP's)

株式会社フューチャーレコーズ(以下、フューチャーレコーズ)が“ファンと成功を共有する”をテーマにした音楽クラウドファンディングサービス『sprayer』をローンチした。『sprayer』ではアーティストが作品の支援者を募い、支援者となったファンは各配信サービスから支払われる作品の収益を一定期間受け取ることができる。ファンによるアーティストの応援活動、いわゆる“推し活”の新たなスタイルとなるかもしれない同サービスについて、ディレクターのkii氏とコンテンツプロデューサーであるmorisake氏に詳細をうかがった。
【座談会参加者】

■kii

学生時代、好きなバンドが売れずに次々と解散していく現状を変えるため、株式会社フェイスへ入社。ファンクラブサービスやライヴ配信サービスなどの企画・運用・営業に携わり、現在は『sprayer』のディレクターを担当。

■morisake

大学院まで魚の研究をしていたが音楽への熱から音楽業界に就職。バックオフィスや新規事業の立ち上げに携わり、現在は『sprayer』のプロデューサーを担当。

■石田博嗣

大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicにかかわるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

■千々和香苗

学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。

■岩田知大

音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。
音楽業界でも新たな流れが 作れると思っていた 

千々和
「まずはフューチャーレコーズがどのような会社であるのかを教えていただけますか?」
morisake
「当社は社名のとおり“未来のレコード会社を作り出す”ということをミッションとしていて、“新しいサービスを作り出したい”という想いで株式会社フェイスのグループ会社として設立されました。会社自体は12年前からありましたが、運営がストップしていた期間もあり、2018年頃から再始動しています。私は再始動時から所属しているのですが、当時は暗号資産やブロックチェーンが盛り上がっていたので、そこで新たなWebサービスやプラットフォームを立ち上げるために動いていました。」
石田
「ブロックチェーンもそうですが、ビットコインなども流行る前から注目されていたんですか?」
morisake
「会社として常にアンテナを張れる動きをしていたので、早くから事業展開を進めていました。代表がレコード会社で働いていたというより、どちらかと言えばエンジニア畑の方なので、他のレーベルとは視点が違う会社かもしれないです。」
石田
「それらを音楽ビジネスに結びつけるという発想が面白いです。」
千々和
「音楽業界は新しいことを取り入れるのが遅い印象があるので、難しいところもあると思いますが。」
morisake
「そうですね。2018年頃はビットコインを利用した『VALU』など、自分のタレントとしての価値や創作の価値を分割して売れるサービスが出てきましたが、それを最初に大きく展開し始めたのがYouTuberの方だったりして。でも、YouTuberの方が音楽活動をされるケースも多いので、その影響もあって音楽業界でも新たな流れが作れるとは思っていました。」
千々和
「そんな中で『sprayer』が立ち上がったのはどんな経緯だったのでしょうか?」
morisake
「私自身もそうなのですが、ストリーミングサービスが主流になって音楽作品を買う人が少なくなったために、音楽作品の経済圏が小さくなっているという課題があると思っていて。一方で、ファンが自発的にSNSで好きなアーティストの宣伝をするようになっていて、それが今で言う“推し活”のひとつですよね。具体的な話で言えば、BTSのファンは推し活の力がすごいんですよ。彼らがアメリカでも売れたのは、各州にいるBTSコミュニティーの方がラジオ局へ毎週のようにBTSの楽曲をリクエストしていたことも大きくて。」
千々和
「日本はアーティスト側が作った公式のファンクラブに入るのが主流ですが、韓国ではファンの人がお金を集めて広告を出すなど、有志での宣伝活動が活発なイメージはあります。もともと日本にもあった文化ですし、Jリーグにコールリーダーがいたり、プロ野球に応援団がいるのも似た仕組みなんじゃないかと思います。」
石田
「ソニー・ミュージックが乃木坂にあった頃は、乃木坂46のファンが駅貼りの広告枠を買っていたと聞いたことがありますよ。」
kii
「日本では少なくなっていた動きなので、今ではファンが有志で動くことが新しいものとして広がっているんですよね。」
morisake
「そうです。ファンが自主的に熱量を持ってオンライン上で動く時代になっていることと、NFTが市場に出たのも『sprayer』が生まれたきっかけです。音楽作品、もといアーティストとファンをつなぐ新しいサービスを目指しています。ただ、NFTを買うとなると敷居が高いと思い、クラウドファンディングとしてアーティストの想いに賛同した方がNFTを獲得できる自然な流れを大切にしています。」
音楽ファンは常に 新しい出会いを求めている

千々和
「では、従来のクラウドファンディングと、『sprayer』にはどんなところに違いがあるのでしょうか?」
morisake
「『sprayer』では音源作品ありきで支援プロジェクトを立ち上げることになります。その作品の音楽配信代行(ディストリビューション)も提供しているので一般的なクラウドファンディングと違い、作品のリリース全体をサポートしているのと、支援者へのリターンは配信サービスから支払われる収益になるので、リターンの内容を用意する必要もありません。さらに、クラウドファンディングを始めて作品を配信するための初期費用がかからないので、誰でも資金集めに挑戦することができます。」
千々和
「これまでのクラウドファンディングは作品を作るために支援者を募集するパターンも多く、実際にどんな作品になるのかは支援後に分かるものなので、これまでの活動歴や既にリリースされた作品と自分の好みの親和性みたいなものが大事でしたよね。でも、『sprayer』では楽曲を試聴してから支援するかどうかをユーザーが選べるわけだから、出来上がっている音源での勝負ってことで、これまでの活動歴がなくても挑戦しやすいかもしれないです。」
morisake
「私もライヴハウスやSNSで新しい音楽に出会うことが多いですが、音楽ファンは常に新しい出会いを求めている方が多いんですよね。実際にライヴを観てからCDやグッズを買うか判断している方もいると思うので、『sprayer』でもその流れができたらいいなと思っています。ただ、CDを販売してリリースイベントをする既存の流れを変えようと思っているわけではなくて。あくまで作品のデジタルリリースのサポートとして提案し、一緒に音楽を応援して、アーティストと同じタイミングで収益を受け取るという体験を届けていきたいです。」
岩田
「今は音源を自作できれば誰でも配信でリリースできますが、宣伝の仕方や費用が分からないアーティストが多いと思っていて。『sprayer』にはアーティストに渡った資金で宣伝広告が出せるプランがあったのもいいなと思ったのですが、広告はどのようなものが用意されているのでしょうか?」
morisake
「はい。『sprayer』のもうひとつの特徴として、集めた資金の使い道もサポートする広告メニューがあります。ひとつは街中での広告展開です。音楽を知る手段として街で鳴っていることは大事だと社内のメンバーと話していたんです。」
kii
「TikTokなどのSNSで流れている楽曲を改めて街で聴くと、“この曲のアーティストって有名なんだ!?”と気づくことがあるので、街で楽曲が流れていることは重要だと思います。なので、コンビニや飲食店などの全国チェーン店のBGMとして自分の音楽を流せるプランも用意しました。」
岩田
「確かに街で流れていると自然と脳内に残っていたりもしますね。」
morisake
「あとは、メディア展開ですね。インタビューやディスクレビューなど、他者から自分たちの楽曲を語ってもらうことってとても重要なんです。自分から音楽を聴いてほしいと伝えるのも大切ですが、他者からの感想って影響力があるので。また、SNS広告も海外へのアプローチに有効なので、そこも手ごろな費用でできるように進めています。」
石田
「事務所が全てやってくれるから、アーティスト自身はプロモーションの仕方とか分かっていなかったりするので、こうやってメニューとして提示するのは分かりやすくていいですよね。」
かかわった人全員が Win-Winになることを目指す

千々和
「『sprayer』を立ち上げる際におふたりにはどんな想いがありましたか?」
morisake
「私は個人的にバンド活動もしていまして。“音楽で食べていきたい”とは思ってはいないのですが、作品をもっと多くの人に聴いてもらいたい、音楽を作り続けていきたいとは常に考えています。なので、新しいかたちで持続可能に音楽を売る方法を作りたいという想いがありました。」
kii
「私は学生時代にいわゆる下北系のバンドが好きで、でも売れることなく解散してしまうバンドがたくさんいたんです。なので、そういうバンドが音楽で食べていけるようにしたいという想いもあります。」
千々和
「長く活動していけるようにっていうのは、アーティスト自身もファン目線でも同じですよね。」
morisake
「各種配信サイトへのリンクがまとめられた作品のスマートリンクも準備しているのですが、そこにアーティストや楽曲のリコメンドをファンが書けるようにしたいとも思っているんですよ。」
千々和
「アーティストのHPにファンのコメントが掲載されていたら変ですけど、『sprayer』内のアーティストページだったらコメントがあってもいいですよね。」
石田
「そのうちリコメンドがすごい名物ファンが現れるかもしれないし(笑)。すごい分析したり、考察したり、文章が独特だったりするような。」
morisake
「そういう流れもあったら面白いですね(笑)。」
千々和
「まだ開始されたばかりのサービスですが、今後は『sprayer』をどのように展開していきたいと思っていますか?」
morisake
「音楽リリースの定番になれるようサービスを伸ばしていきたいです。あとは、誰がどの作品を応援していたかが明確になるといいなと思っていて。“この人が応援している作品だったらチェックしてみよう”とか、“この音楽ライターが購入しているアーティストの作品なら支援してみよう”とユーザーが思えたら、もっといい体験として音楽が広がるはずなので、そこを強化していきたいです。」
kii
「アーティストにとって新規ファンの獲得に役立ち、収益につながるサービスになって、新規も古参も分け隔てなくファンが楽しめる機能も整えて、結果的に『sprayer』にでつながった人全員がWin-Winになるサービスにしていきたいと思っています。」


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