結成25周年イヤーのMUCC、初期作『是空』『朽木の灯』を軸としたツアーが横浜で完結

2022年12月20日 / 12:50

 MUCCが2022年10月から開始したツアー【MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~是空・朽木の灯~】のファイナル公演の公式レポートが到着した。

 このツアーは、2003年に発表した通算3作目にしてメジャー・デビュー作でもある『是空』と、続く2004年に発表したメジャー・セカンド『朽木の灯』を主軸にしたもの。全国11か所、合計13本に及ぶライブを敢行し、そのファイナル公演となったのが、12月14日のKT Zepp Yokohamaにおけるライブだ。

 18時36分、『是空』のオープニングに収録されていたジャズ・ナンバー「心奏」がSEで流れると同時に、バックドロップを照らす赤い光。梵字のバンドロゴが怪しく浮かび上がり、リズムに合わせて鳴らすオーディエンスのハンドクラップも熱を帯びていく。YUKKE(B)、ミヤ(G)、サポート・メンバーのアレン(Dr)、逹瑯(Vo)がステージに登場すると、一気に熱は高まった。その中、メンバーはそれぞれ深々と一礼。その姿は、オーディエンスへの感謝を示すと同時に、これから約20年前の自分たちと邂逅する儀式の始まりのようにも見えた。

 SEをかき消すようにミヤの鳴らすフィードバック・ノイズを合図に始まったのは、『是空』の2曲目でもあった「茫然自失」。MUCCのバンド・サウンドが放出された瞬間、時間は2003年に…。

 いや、そうではなかった。完全にこの体制のMUCCの音やプレイで、曲の顔つきはラウドかつメタリックであり、そのキレ味も鋭い。片足を台に掛けながら歌う逹瑯は、強烈なヘッドバンギングを繰り返し、エネルギーを発し続ける。約20年前の楽曲たちに今のMUCCの魂を思う存分に反映させ、最新のナンバーと呼べるほど激しく呼吸させていく。メンバーの目の前に広がるのは、コブシを突き上げ、メンバーと同じように頭を振りまくるオーディエンスたちの姿。

 過去の作品を軸にしたライブというと、当時の完全再現とこっちは勝手に受け止めていた。しかしMUCCは、こっちを懐かしさに浸らせる気持ちなどさらさらなかったようだ。

 作品を発表したから約20年間に身に付けたミュージシャンとしてのそれぞれのスキルもセンスも発揮し、人間的な成長によって生まれた当時にはなかった考えや思いも曲や歌詞のひとつずつに重ねていく。

 3曲目では今回のツアーで会場限定販売されているシングル「空-ku-」も披露。新曲でありながら、約20年前のMUCCをイメージしながらソングライティングしたもの。サビに向かうメロディは当時の匂いも持っているが、曲を鳴らし、歌うのは今のMUCC。バンド・アンサンブルは歌詞の情景を描き出すようにドラマや起伏を作り出し、逹瑯は歌詞の主人公である少年の気持ちをヒリヒリするぐらい伝える。

 今回のツアーでは、今の自分の気持ちで当時の曲を表現したらどうなるか、というのをひとつのテーマにしていたのが逹瑯。『是空』と『朽木の灯』はネガティビティや葛藤、苦しさや悲しみ、憎しみといった歌詞の曲も多い。当時のライブを観たことのある熱心なファンなら分かると思うが、そうした曲を歌う逹瑯は歌詞の世界に入り込み過ぎ、ときには感情が壊れてしまうんじゃないかと思えるようなライブを展開していた。その後、前に進むためにはもう歌えない、とライブでは封印された曲があることもファンならご存じだろう。

 そんな逹瑯が約20年経った今、ステージで聴かせるのは優れた表現者としての歌。曲に入り込んで感情的に振り切ってしまうのではなく、メロディ・ラインも大切にしながら声や歌い方で詞の世界や思いを突きつけてくる。伸びやかな歌もあれば、悲しみを湛えた声もあるし、怒りで震える叫び声もある。気持ちはわしづかみにされ、心に響きまくり、観ている側それぞれが詞の主人公になっていく。『朽木の灯』からの「遺書」や、『是空』からのシングル「我、在ルベキ場所」のカップリングだった「儚くとも」などでは、表情をゆがめながら曲や詞に入り込むオーディエンスの姿も。

「Are You Fxxkin’ YOKOHAMA! さーわーげー!!」

 ライブもエンディングが近づき、モードは一変。逹瑯の煽り文句と共に「夢死」へ突入した。疾走感と尖ったプレイをこれでもかと食らわせ、立ち位置を激しく入れ替わるYUKKEとミヤ。逹瑯も煽るように歌を叩きつける。さらに客席のあちこちを煽りたてながら、これまでのライブでいくつものクライマックスを作ってきたパンキッシュなナンバー「名も無き夢」へ。メンバーも嬉しさや楽しさで何度も笑顔を見せ、それぞれの音にも歌にもみなぎるポジティブさ。途中、曲をブレイクさせたところで逹瑯はこう叫んだ。

「なんらかの光を見つけて帰ってもらえたらいいなと思います!」

 そのメッセージに全身で喜びや興奮を表わすオーディエンス。身体も心も熱いライブが展開されていく。

 しかし本編ラストを締めくくったのは『是空』からの「9月3日の刻印」。真っ赤な照明を浴びながら悲しみと憎しみに溢れた音と歌が広がる。それを浴びながらオーディエンスは曲に飲み込まれていくばかりだった…。

 アンコールでは当時のライブではキラー・チューンとも呼べる2曲をプレイ。その2曲目「蘭鋳」では、オーディエンス全員を座らせ、逹瑯が改めて言う。「当時、観たり聴いたりしてくれていた人。出会うのが少しだけ遅くて、当時を知らなかった人もたくさんいると思います。こんな感じの時代を過ごしてきたMUCCが、25周年を迎え、これからも突き進んでいこうと思っています。このライブを通して、なにか光みたいなものをつかんで帰ってもらえたらなと思ってますんで。2023年、その先、その先も、よろしくお願いします!」

 そして逹瑯の「Three,Two,One,GO!!」の掛け声で、一斉にジャンプを決めながら曲が再会。お立ち台に逹瑯、YUKKE、ミヤの3人が並び、放ち続ける今のMUCCからのパワーとエネルギー。25周年を迎えた彼らの強さに圧倒されるライブにもなった。

 なおライブ直後、配られたフライヤーのQRコードにアクセスすることで、MUCCの2023年のスケジュールを知ることができたが、これが怒涛のようなツアーやライブ。止まることを知らないMUCCの25th Anniversaryシリーズは、始まったばかりだ。

Text:長谷川幸信
Photos:マツモト ユウ

◎公演情報
【MUCC 25th Anniversary TOUR『Timeless』~是空・朽木の灯~】
2022年12月14日(水)神奈川・KT Zepp Yokohama

セットリスト:

SE. 心奏
01. 茫然自失
02. 誰も居ない家
03. 空 -ku-
04. 路地裏 僕と君へ
05. 商業思想狂時代考偲曲
06. 濁空
07. 幻燈讃歌
08. 遺書
09. ガロ
10. ぬけがら
11. 儚くとも
12. 溺れる魚
13. 2.07
14. モノクロの景色
15. 夢死
16. 名も無き夢
17. 9月3日の刻印
<アンコール>
18. 青き春
19. 蘭鋳

◎配信情報
ニコニコ生放送『MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~是空・朽木の灯~』KT Zepp Yokohama公演独占生中継
アーカイブ視聴期間:12月31日(土)21:00まで
チケット料金:4,500円(tax in.)
https://live.nicovideo.jp/watch/lv339393673 


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