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2022年の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”は、英オックスフォード出身の4人組ロック・バンド=グラス・アニマルズの「ヒート・ウェイヴス」が年間1位に輝いた。
2021年1月16日付チャートで100位に初登場した「ヒート・ウェイヴス」は、42週間を経て同年11月13日付でTOP10入りし、2022年3月12日付で首位に到達した。100位に初登場した曲が週間チャートで1位を獲得したのは「ヒート・ウェイヴス」が史上11曲目で、そのうち年間1位を獲得したのは「ヒート・ウェイヴス」が初のタイトルとなる。なお、これまでの最高位は1993年の年間3位を獲得したUB40の「好きにならずにいられない」と、2015年の同3位を記録したウィズ・カリファの「シー・ユー・アゲイン feat. チャーリー・プース」だった。
ロック・バンドにカテゴライズされるアーティストが年間1位を獲得するのは、2002年にカナダのロック・バンド=ニッケルバックの「ハウ・ユー・リマインド・ミー」が獲得して以来20年ぶりで、イギリス出身のロック・バンドとしては、1983年にポリスの「見つめていたい」が獲得して以来、39年ぶりの快挙となる。
昨年の年間チャートを制したのはデュア・リパの「レヴィテイティング feat. ダベイビー」だったが、今年グラス・アニマルズが1位に輝いたことで2年連続イギリス出身のアーティストが年間1位を獲得したことになる。英国出身のアーティストが2年連続で年間首位を獲得したのは、ワム!の「ケアレス・ウィスパー」 (1985年)とディオンヌ&フレンズとしてエルトン・ジョンが参加した「愛のハーモニー」 (1986年)以来、36年ぶりのこと。なお、その「レヴィテイティング」は今年の年間チャートでも42位にランクインしていて、「ヒート・ウェイヴス」も昨年の年間チャートでは16位をマークした。
「ヒート・ウェイヴス」がリリースされたのは2020年6月で、首位獲得までの期間は1年9か月。初登場した2021年1月16日付から首位を獲得した2022年3月12日までのランクイン期間は59週で、2019年12月に35週目でトップに立ったマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」を大きく上回る、歴代最長記録を更新した。
首位獲得週は3月12日~4月9日付までの通算5週間で、イギリス出身のグループとしては同5週を記録したザ・ビートルズの「ゲット・バック with ビリー・プレストン」 (1969年)、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」 (1964年)、ポール・マッカートニー&ウイングスの「心のラヴ・ソング」 (1976年)の3曲と並ぶ歴代4位タイに記録を更新した。なお、英国のグループが5週以上首位を獲得したのは、1993年7月24日~9月4日付まで通算7週を記録した前述の「好きにならずにいられない」以来、約29年ぶりのタイトルとなる。
100位に初登場した2021年1月16日付から最後にランクインした2022年10月17日付までのランクイン総週は91週で、昨年90週という驚異的な数字を記録したザ・ウィークエンドの「ブラインディング・ライツ」を超え歴代トップに立った。
「ヒート・ウェイヴス」は、グラス・アニマルズにとってHot 100に初めてランクインしたタイトルで、初めてエントリーした曲が年間1位を獲得したのは、2019年にリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード feat.ビリー・レイ・サイラス」が獲得して以来2年ぶりの記録となる。
グラス・アニマルズは、2010年にイギリスのオックスフォードで結成され、2012年にデビュー。米ビルボード・チャートに初めてランクインしたのは2014年で、地道な活動を経てこの「ヒート・ウェイヴス」でブレイクを果たした。同曲のヒットを受け、今年の4月に開催された【第64回グラミー賞】では<最優秀新人賞>にノミネートされている。
惜しくも年間1位獲得は逃したが、2位にはハリー・スタイルズの「アズ・イット・ワズ」がランクインして自身初の年間TOP3入りを果たした。
2022年4月1日にリリースされた「アズ・イット・ワズ」は、4月16日付で1位に初登場してから10月1日付までの半年間TOP3にランクインし続け、非連続で通算15週の首位を獲得した。Hot 100の集計が始まった1958年8月4日付以降、首位獲得週が15週を上回ったのは2019年4月~8月に歴代最長の19週という記録を打ち立てたリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード feat. ビリー・レイ・サイラス」以来約3年ぶりで、ゲスト・クレジットのない曲としては史上最長記録を達成した。イギリス出身のアーティストとしても、エルトン・ジョンの「キャンドル・イン・ザ・ウインド」とマーク・ロンソンの「アップタウン・ファンク」の14週を上回り、史上最長記録を達成したことになる。
イギリス出身のアーティストが年間1位と2位を独占するのは、2015年にマーク・ロンソンの「アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ」 (1位)とエド・シーランの「シンキング・アウト・ラウド」 (2位)が記録して以来7年ぶりで、グループ出身のアーティストとしてはN.E.R.Dからソロとして発表したファレル・ウィリアムスの「ハッピー」が年間1位を獲得した2014年以来の最高位となる。
ハリー・スタイルズの年間TOP10入りは、2020年に6位を獲得した「アドア・ユー」に続く2曲目のタイトルで、それを上回る自己最高位を更新した。なお、ワン・ダイレクションの楽曲では年間TOP10入りは果たしておらず、他のメンバーもソロ曲ではこれまで年間TOP10にランクインしたことはない。
今年は「アズ・イット・ワズ」の他にも「レイト・ナイト・トーキング」 (最高3位)が年間25位にランクインしていて、TOP30に2曲を送り込んでいる。これまでには前述の「アドア・ユー」と、2020年8月15日チャートで自身初のNo.1を獲得した「ウォータメロン・シュガー」が同年の年間チャートで20位にランクインしていて、TOP30入りは通算4曲目の快挙。「アズ・イット・ワズ」と「レイト・ナイト・トーキング」が収録された『ハリーズ・ハウス』も、年間アルバム・チャート“Billboard 200”で8位にTOP10入りを果たした。
続いて年間3位にはジャスティン・ビーバー&ザ・キッド・ラロイの「ステイ」がランクインし、ジャスティンは8位にランクインした「ゴースト」を含む6曲目、ザ・キッド・ラロイは自身初の年間TOP10入りを果たした。ジャスティン・ビーバーが年間チャートでTOP10に2曲をランクインさせたのは、「ラヴ・ユアセルフ」と「ソーリー」がワンツーフィニッシュを飾った2016年以来、6年ぶりとなる。
ジャスティン・ビーバー 年間TOP10ソング
「ラヴ・ユアセルフ」2016年 年間1位
「ソーリー」2016年 年間2位
「デスパシート」ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー 2017年 年間2位
「ピーチズ feat. ダニエル・シーザー&ギヴィオン」2021年 年間10位
「ステイ with ザ・キッド・ラロイ」2022年 年間3位
「ゴースト」2022年 年間8位
2021年7月9日にリリースされた「ステイ」は、同年7月24日付で3位に初登場した後、8月14日~9月4日、9月25日、10月2日、25日付の計7週1位を獲得して昨年の年間チャートでは12位にランクインした。2022年に入ってからは首位を獲得していないものの、上位をキープし続けて最後にチャートインした6月11日付までのTOP10ランクイン総週を44週に更新し、年間チャートでは見事TOP3入りを果たした。昨年のチャートと期間割れしなければ、1位か2位にランクインしていた可能性が高い。
8位にランクインした「ゴースト」は、昨年3月にリリースしたアルバム『ジャスティス』からの6thシングルで、同年9月にリリースしてから今年の2月19日付で9位にTOP10入りし、5月7日付まで約3か月間TOP10に滞在した。最高位は4月2日付で記録した5位だが、初登場の2021年10月2日付から最後にランクインした2022年9月24日付まで通算52週間滞在して年間チャートではTOP10に食い込んだ。
初登場からTOP10入りするまでの期間は20週で、スクリレックス&ディプロとのコラボレーション「ホウェア・アー・ユー・ナウ」 (2015年)の18週を上回る自己最長記録も更新している。また、ジャスティンは「ゴースト」でTOP10入りしたタイトルを26曲目に更新し、ソロ・アーティストとしては史上11番目のランクインを果たした。
4位にランクインしたアデルの「イージー・オン・ミー」は、昨年10月30日で1位を獲得した後2022年1月29日まで通算10週の首位をマークし、3月26付まで23週間連続でTOP10にランクインした。週間チャートでの首位獲得は、2015年11月14日から2016年1月16日までの同10週を記録した「ハロー」以来約6年ぶりで、通算5曲目の快挙。年間チャートでのTOP10入りは、2011年の年間1位を獲得した「ローリング・イン・ザ・ディープ」、2016年7位にランクインした「ハロー」に続く3曲目のタイトルとなる。
続いて年間5位にはエド・シーランの「シヴァーズ」がランクイン。年間チャートでのTOP10入りは、2015年の2位を獲得した「シンキング・アウト・ラウド」、2017年の1位に輝いた「シェイプ・オブ・ユー」、翌18年の2位を獲得した「パーフェクト with ビヨンセ」に続く4曲目、4年ぶりのランクインとなる。「シヴァーズ」は昨年10月29日にリリースしたアルバム『=(イコールズ)』から2曲目にカットしたシングルで、「ゴースト」同様最高位は2022年1月15日付で記録した4位だが、2021年9月11日付でデビューしてから2022年9月17日付まで約1年間、通算52週間ランクインして年間チャートではTOP5入りを果たした。
アルバム『=(イコールズ)』からは、リード・シングルの「バッド・ハビッツ」も年間13位にランクインしている。同曲のリリースは昨年の6月で、翌7月10日付で5位に初登場してから8月28日付で2位まで上昇し、2021年の年間チャートでは15位にランクインした。今年に入ってからは最高位の2位を上回ることはなかったが、3月19日付までTOP10に滞在し、上半期までに通算50週をマークした。なお、今年は10月8日~22日付の通算3週1位を獲得したスティーブ・レイシーの「バッド・ハビット」も年間チャートで28位に滑り込み、複数形との違いがあるが同名曲が2曲TOP30にランクインしている。
年間6位にランクインしたジャック・ハーロウの「ファースト・クラス」は、4月23日付で1位に初登場してから5月21日~28日付の通算3週をマークし、8月13日付まで約4か月間連続でTOP10に滞在した。週間チャートでの首位獲得は昨年の10月23日付でトップに立ったリル・ナズ・Xとのコラボレーション「インダストリー・ベイビー」に続く2曲目で、年間TOP10入りは自身初の快挙となる。また、R&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは自己最高位にして初の年間1位に輝いた。
「インダストリー・ベイビー」は、ピークが昨年の集計期間中だったためTOP10入りは逃したが、今年の年間チャートでも16位にランクインしていて、リル・ナズ・Xも14位の「ザッツ・ワット・アイ・ウォント」 (最高8位)と2曲をそれぞれ年間TOP20に送り込んでいる。リル・ナズ・Xは、「オールド・タウン・ロード feat. ビリー・レイ・サイラス」 (2019年間1位)、「モンテロ (コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」 (2021年間10位)を含む4曲目のランクインとなる。
7位には米ジョージア州アトランタ出身のフィーメール・ラッパー=ラトーの「ビッグ・エナジー」がランクインし、女性アーティストとしてはアデルに続く2番目、R&B/ヒップホップにカテゴライズされる女性アーティストに限定すると2022年の年間チャートでの最高位をマークした。
「ビッグ・エナジー」がリリースされたのは昨年の9月だが、今年3月25日に同曲が収録されたアルバム『777』が、3月28日にマライア・キャリーとDJキャレドをフィーチャーしたリミックスがそれぞれリリースされ、翌週の4月9日付で3位に自身初のTOP10入りを果たしている。最高位はその週で獲得した3位だが、100以内には10月15日付まで通算51週ランクインした。また、R&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは年間3位にTOP3入りしている。
女性ラッパーにカテゴライズされるアーティストの曲が年間TOP10入りするのは、昨年の年間6位をマークしたドージャ・キャットの「キス・ミー・モア feat. シザ」に続く2年連続のランクインで、ゲスト・クレジットのない曲としては2012年の年間9位を獲得したニッキー・ミナージュの「スターシップス」以来、10年ぶりのタイトルとなる。なお「ビッグ・エナジー」のリミックスにサンプリングされたマライア・キャリーの「ファンタジー」も1995年の年間7位にランクインしたが、「ビッグ・エナジー」はリミックスがオリジナルのポイントを上回っていないため、マライア・キャリーとDJキャレドのクレジットは外されている。
2010年以降で年間TOP10入りした女性ラッパーのタイトルは、以下の6曲がある。
ニッキー・ミナージュ「スーパー・ベース」2011年間8位
ニッキー・ミナージュ「スターシップス」2012年間9位
イギー・アゼリア「ファンシー feat. チャーリーXCX」2014年間4位
カーディ・B「アイ・ライク・イット feat. J.バルヴィン&バッド・バニー」2018年間7位
ドージャ・キャット「キス・ミー・モア feat. シザ」2021年間6位
ラトー「ビッグ・エナジー」2022年間7位
TOP20には、12位にリゾの「アバウト・ダム・タイム」、18位にドージャ・キャットの「ニード・トゥ・ノウ」の2曲がランクインしていて、今年も女性ラッパーの活躍が目覚ましかった。リゾは、2019年9月から7週首位をマークして同年13位にランクインした「トゥルース・ハーツ」以来約3年ぶり、2曲目の年間TOP20入りで自己最高位を更新。「アバウト・ダム・タイム」は5月21日付でTOP10入りした後7月30日付で1位に到達したが、「トゥルース・ハーツ」同様にピークに達したのが下半期だったため、年間チャートではTOP10入りできなかった。Hot 100では惜しくもTOP10にランクインしなかったが、R&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは年間4位にTOP5入りしている。
ドージャ・キャットも前述の「キス・ミー・モア」に続く2曲目の年間TOP20入りで、今年はその他にも以下の7曲を年間100位内にランクインさせている。
18位「ニード・トゥ・ノウ」
21位「ウーマン」
26位「アイ・ライク・ユー(ア・ハピアー・ソング)」ポスト・マローン feat. ドージャ・キャット
45位「ユー・ライト with ザ・ウィークエンド」
47位「ヴェガス」
68位「ゲット・イントゥ・イット(ヤー)」
90位「キス・ミー・モア feat. シザ」
男性ラッパーも例年通り好調で、今年は3位にザ・キッド・ラロイ、6位にジャック・ハーロウ、そして9位にはコダック・ブラックの「スーパー・グレムリン」の3曲がTOP10にランクインした。「スーパー・グレムリン」は、登場9週目の2022年1月15日付で10位にTOP10入りして、5月7日まで通算17週間滞在した。週間チャートでのTOP10入りは、最高6位を記録したブレイク曲「トンネル・ビジョン」(2017年)、自己最高位の2位をマークした「ZEZE feat. トラヴィス・スコット&オフセット」 (2018年)に続く3曲目、約3年ぶりのランクインで、年間チャートでは「スーパー・グレムリン」が初のTOP10入りとなる。また、R&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは年間5位にランクインした。
TOP10以下には、11位にフューチャーの「Wait for U feat. ドレイク&テムズ」、14位と16位に前述のリル・ナズ・X、20位にバッド・バニーの「Me Porto Bonito with チェンチョ・コルレオーネ」が、計4曲男性ラッパーの曲がランクインした。「Wait for U」は2022年5月14日付で1位を獲得し、10月1日まで約5か月間TOP10にランクインしたが、集計期間が若干短かったため惜しくもTOP10入りを逃したが、R&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは年間2位をマークしている。
フューチャーとドレイクは、2020年の年間7位にランクインした「Life Is Good」以来2年ぶりの年間TOP20入りで、テムズは週間チャートでの首位獲得も年間チャートでのTOP20入りも、自身初のタイトルとなる。ドレイクは、7月2日付で1位にデビューした「Jimmy Cooks feat. 21サヴェージ」も33位にランクインさせたが、例年の傾向からすると今年は勢いが落ちた印象を受ける。なお「Jimmy Cooks」もR&B/ヒップホップ・ソング・チャートでは年間8位にランクインした。
ドージャ・キャットに続き、バッド・バニーも100位内に以下の7曲を送り込む大活躍をみせた。それら7曲を収録したアルバム『Un Verano Sin Ti』は、今年の年間アルバム・チャート“Billboard 200”で1位に輝いている。
20位「Me Porto Bonito with チェンチョ・コルレオーネ」
22位「Tití Me Preguntó」
44位「Moscow Mule」
69位「Efecto」
77位「Party」
78位「Después de la Playa」
87位「Ojitos Lindos with ボンバ・エステレオ」
年間チャート10位には、エルトン・ジョンとデュア・リパのコラボレーション「コールド・ハート (プナウ・リミックス)」がランクイン。リリースは昨年の8月で、1月15日付で7位に上昇してから3月12日付までTOP10に滞在し、9月3日付まで通算52週ランクインした。デュア・リパは、2020年の年間4位を獲得した「ドント・スタート・ナウ」、昨年の年間1位をマークした「レヴィテイティング feat. ダベイビー」に続く3曲目、3年連続の年間TOP10入りで、エルトン・ジョンは1997年の年間1位を獲得した「サムシング・アバウト・ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト / キャンドル・イン・ザ・ウインド1997」以来25年ぶりのランクインを果たした。今年の9月にはブリトニー・スピアーズのコラボレーション・シングル「ホールド・ミー・クローサー」も週間チャートで6位をマークし、TOP10のタイトル数を通算29曲目に更新している (歴代7位、男性ソロ・アーティストでは3位)。
TOP10以下には、人気オンライン・ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』初のアニメ・シリーズ『アーケイン』のメイン・テーマ曲として起用されたイマジン・ドラゴンズ&J.I.Dの「エネミー」が年間15位にランクインし、イマジン・ドラゴンズは「レディオアクティヴ」 (2013年間3位)、「ビリーヴァー」 (2017年間9位)に続く3曲目、J.I.Dは初の年間TOP20入りを果たした。J.I.Dの他にも、ゲイルの「abcdefu」が17位、ニッキー・ユーア&デイジーの「サンルーフ」が29位、エム・ベイホルトの「ナム・リトル・バグ」が32位にランクインする等、いわゆるZ世代の新星も年間チャートで初の入賞を果たしている。
一方、ベテラン勢で初のランクインを果たしたのがケイト・ブッシュの「神秘の丘」。同曲のリリースは37年前の1985年で、これまでの最高位は同年11月30日付で記録した30位だったが、今年の6月11日付で8位に初のTOP10入りを果たし、年間チャートでは見事23位にランクインした。37年越しにブレイクしたのは、5月末に配信されたNetflixシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4のエピソードに使用されたからで、ストリーミングが加算されるようになった2014年以降、こういったチャート・アクションも起こり得るようになった。代表例では、1994年にリリースしたマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が2019年12月に発売25年を経て1位を獲得している。
昨今上位にランクインすることが少なかったカントリー勢も、モーガン・ウォレンやルーク・コムズ、ザック・ブライアンなど、ストリーミングの強いアーティストはヒットを連発している。中でもモーガン・ウォレンは、「ウェイステッド・オン・ユー」 (最高9位)がカントリー・ソングとしては今年の年間最高位となる19位を獲得し、100位内には27位に「ユー・プルーフ」 (最高5位)、58位に「サンド・イン・マイ・ブーツ」 (最高30位)、81位に「ブロードウェイ・ガールズ with リル・ダーク」 (最高14位)、96位に「フラワー・ショップス with ERNEST」 (最高64位)の4曲をランクインさせた。また、TikTokのダンス動画でブレイクしたウォーカー・ヘイズの「ファンシー・ライク」も、CMの起用等を受けて週間チャートで自身初のTOP10入りを果たし、年間チャートでは35位にこちらも初のエントリーを果たしている。
「ファンシー・ライク」のように、今年もTikTokのバイラル・ヒットによりチャートを上昇したケースがいくつかみられたが、その他には複数のフィジカル・パッケージやリミックスをリリースして、翌週のセールスに繋げるパターンも昨年以上に増えた印象を受ける。これは韓国のアイドル・グループやポップ・シンガーに多くみられるプロモーションだが、一時的にチャートの上位にはランクインするもののロングヒットに至らず、「ヒート・ウェイヴス」や「アズ・イット・ワズ」など上位に長くランクインしたタイトルはやはりエアプレイが強かった。
2月5日~3月5日付まで通算5週の首位をマークした『ミラベルと魔法だらけの家』のサウンドトラックから、カロリーナ・ガイタン、マウロ・カスティーリョ、アダーサ、レンジー・フェリズ、ダイアン・ゲレーロ、ステファニー・ベアトリス、エンカント・キャストによる「秘密のブルーノ」も、ディズニー作品がラジオでのプロモーションを積極的に行っていないため、エアプレイが伸びず上位に長く滞在することができなかった。それでも年間チャートでは24位にランクインしていて、エアプレイが加算されていればさらに上位が見込めたということになる。なお、週間チャートでディズニー・アニメーションのサウンドトラックから1位を獲得するのは、映画『アラジン』よりピーボ・ブライソン&レジーナ・ベルの「ホール・ニュー・ワールド」 (1993年3月6日)以来29年ぶりの快挙で、本作からは、ジェシカ・ダロウの「増していくプレッシャー」も週間チャートで8位まで上昇し、年間53位にランクインした。
2023年も引き続き同様のプロモーションで上位を勝ち取るアーティストが増えそうで、それにより初登場1位獲得も過去のチャートのように珍しい現象ではなくなりつつある。また、アルバムのリリース週にストリーミングが上昇して収録曲が多数上位にランクインする傾向も続きそうで、TOP10獲得数を一気に更新するアーティストも増えそうだ。
Text:本家一成
◎【Billboard Hot 100】2022年年間チャートTOP10
1位「ヒート・ウェイヴス」グラス・アニマルズ
2位「アズ・イット・ワズ」ハリー・スタイルズ
3位「ステイ」ジャスティン・ビーバー&ザ・キッド・ラロイ
4位「イージー・オン・ミー」アデル
5位「シヴァーズ」エド・シーラン
6位「ファースト・クラス」ジャック・ハーロウ
7位「ビッグ・エナジー」ラトー
8位「ゴースト」ジャスティン・ビーバー
9位「スーパー・グレムリン」コダック・ブラック
10位「コールド・ハート(プナウ・リミックス)」エルトン・ジョン&デュア・リパ
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