ムーンライダーズのアルバム発売記念ライブをレポート

2022年9月27日 / 21:30

 ムーンライダーズが9月24日に開催したアルバム『It’s the moooonriders』レコード発売記念ライブのオフィシャルレポートが到着した。

 レコ発ライブは当初3月13日の日比谷野外音楽堂で予定されていたが、ニューアルバムのリリースが3月から4月20日に延期となり半年遅れで昭和女子大学人見記念講堂にて実現。ムーンライダーズがレコ発ライブを開催するのは、2011年のアルバム『Ciao!』リリース時以来、11年ぶりの出来事であった。

  開演前、場内にはメンバーとスタッフの間で交わされると思しき会話が流れてくる。「バックステージでのやりとりが漏れてる?」と思われたが、よく聞くと会話はループされている。「なんと、これは開演前SEだった!」と観客が気づく頃、客電が落ち、ステージ左右のキーボードにスポットライトが当たり、2台の鍵盤が静かに音を奏でだす。暗い照明の中、メンバーがステージに現れ、各々がポジションに着くと、ゆっくりと演奏が始まった。アルバム『It’s the moooonriders』1曲目に収められた「monorail」だ。同曲のヴォイス・コラージュをアジテーションするように、メンバーが生声で再現する。

 オーディエンスには「今日はレコ発ライブだから 、アルバムの曲順通りに演奏するのね」と思わせておいて2曲目は、普段なら終盤に演奏されるキラー・チューンの「ボクハナク」をもってきた。しかも作者でベーシストの鈴木博文はピアノを弾きながら歌っている。よく見るとベースは、澤部渡(Skirt)が軽やかに弾いているのだ! 斬新なアレンジでの人気曲演奏にファンは大喜び。

 続いては「岸辺のダンス」。ここからようやくアルバム曲を収録順に演奏していく。4曲目の「S.A.D」から3人編成のブラス隊、クレセント・ホーンズが入る。エンディングで弾かれる白井良明のギターは段々と曲調を変えながら、そのまま次の「駄々こね桜、覚醒」に繋げていく。実にカッコいいシーケンスだ。

 この日はキーボードの岡田徹の体調が芳しくなく無念の欠席。岡田のパートは佐藤優介(カメラ=万年筆)が孤軍奮闘で勤め上げた。鈴木慶一は「今日は岡田くんがいないんですが、岡田くんの曲やります。歌詞は澤部くんです」と紹介し演奏されたのは「三叉路のふたり」。ここでは澤部渡がリード・ヴォーカルを披露する。「親より偉い子供はいない」では、曲中に落語家の春風亭昇太が演じる白井良明の父が「オーイオイヨシアキちょっと聞いてくれ!」と息子を叱るパートを澤部渡が担当。澤部、リード・ヴォーカルに白井良明の父役と大活躍。

 「再開発がやってくる、いやいや」では白井良明が、この日のゲストのDAOKOをステージに迎え入れる。アルバムでは同曲のレコーディングに参加した彼女だが、引き続き次の曲でもコーラスで参加。「こういうおじさんバンドとの共演はどうですか?」と振られたDAOKO。まだ25歳でライダーズ世代ではないが、父親がライダーズ・ファンで、父からレコードを受け継いでよく聴いていたことを明かす。共演には「光栄です。感無量です。贅沢に楽しませてもらいます」と答えると、客席から温かい拍手が送られた。

 ステージを降りるDAOKOを「素敵でしたなぁ」と目を細めて見送る鈴木慶一は、「ずーっと新しい曲やってきたんで、もの凄く古い曲やろうと思います。かしぶち君の曲をやりたいと思います」と紹介したのは「Beep Beep Be オーライ」。1977年に発表したアルバム『イスタンブール・マンボ』に収められた曲で、2013年に亡くなったかしぶち哲郎の作品だ。

 慶一の言うように、この日のいちばん古い曲ではあるが、ここまで演奏した2022年の楽曲群との隔世感は全くない。1977年と2022年が地続きで繋がっているようで、改めてムーンライダーズ曲の普遍性を思い知らされた。続く「D/P(ダム/パール)」ではかしぶち哲郎が書いた詞を澤部渡が歌う。2曲続けてのかしぶち作品の選曲に、古参のファンも懐かしい思いを馳せながらじっと聴き入る。

 「6か月遅れのレコード発売記念ライブは妙な感じです」と話しはじめた鈴木慶一は「白井良明さんが娑婆を離れてたからです(笑)」と良明を名指しで糾弾(!?)。白井良明は1月に入院。その間、レコーディングが中断し発売が3月から4月に延期となって、レコ発ライブも半年ずれこんだ。ここで慶一は、ひとしきり健康談義を重ね「長生きの秘訣は笑って暮らすこと!  最後にお送りするのは『Smile』です!」と鈴木博文のピアノで「Smile」を演奏し、本編は終了。

 アンコールでは「岡田くんもリハビリに励んで、早く戻って来てね!」とこの日欠席の岡田徹にエールを送り、懐かしのナンバー「スイマー」に。1978年発表の『ヌーベル・バーク』に収められた郷愁感あふれるニュー・ウェイヴ・ナンバーだ。2020年10月の活動再開ライブで1曲目に演奏された曲でもある。

 慶一が「9月といえば?」と客席に問うと「待ってました!」とばかりにマスクの下から歓声があがる。このところ、ほとんど演奏される機会がなかった屈指の人気曲「9月の海はクラゲの海」だ。この日のコンサートにはクレセント・ホーンズが加わった。「スイマー」のニュー・ウェイヴ・サウンドや、「9月の海はクラゲの海」のビートルズライクなストリングスが、ホーンセクションに代わることで、オリジナル曲とは違った肉感的なサウンドに生まれ変わった。この進化は新しい発見だ。

 最後の曲はアルバムでもラストを飾る「私は愚民」。後半には場内の客電が明るくなり、フリージャズのようなインプロビゼーションの応酬となる。「monorail」のインプロビゼーションで始まったこの日のコンサートのイントロは、最後も同様のアウトロで締める。最後は慶一がコンダクターのように舞台の中央に立ち、混沌状態となった演奏にタクトを降ろし幕が閉じられた。

 この日は12月3日の「レコードの日」に発売される2枚のアナログLPと、12月25日に東京・恵比寿 The Garden Hallで開催される『マニア・マニエラ+青空百景』再現ライブの開催情報も発表された。初めてアナログLPでリリースされるアルバム『マニア・マニエラ(1982)』は「難解過ぎる!」という理由で当時のレコード会社から発売中止を告げられた問題作(今聴けば充分なポップ作なのだが)。結局、当時ほとんど普及していなかったCD形態で数百枚プレスされた。今回のアナログ盤は、メンバーすら所有していない初版CDのジャケットをLPサイズで復刻。

 12月25日のライブは、その怪盤とも呼ばれる『マニア・マニエラ』と、同作の反省(!?)を生かして制作された裏マニア・マニエラと呼ばれるアルバム『青空百景(1982)』の収録曲を完全再現する。ファン垂涎の貴重なライブのチケットは10月4日まで先行抽選受付中。

◎公演情報
【『It’s the moooonriders』レコード発売記念ライブ】
日程:2022年9月24日(土)
会場:東京・昭和女子大学人見記念講堂
出演:moonriders(鈴木慶一/武川雅寛/鈴木博文/白井良明/夏秋文尚)
サポート:澤部渡(Skirt)/佐藤優介(カメラ=万年筆)/クレセント・ホーンズ(湯浅佳代子、織田祐亮、東涼太)
ゲスト:DAOKO

【moonriders アンコールLIVE マニア・マニエラ+青空百景】
日程:2022年12月25日(日)  
会場:恵比寿 The Garden Hall


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