<ライブレポート>マルーン5 ヒット曲だらけの豪華セットリストで贈る初の配信ライブ

2021年4月6日 / 12:00

 マルーン5初のグルーバル・オンライン・ライブ【American Express UNSTAGED with Maroon 5】が日本時間2021年3月31日に配信された。

 中毒性のあるイントロから「ワン・モア・ナイト」でライブはスタート。木や植物が所々に置かれ、赤黄緑とサイケなライティングと映像がリピートするステージには、どこか森の奥深くに迷い込んだかのような野生的な雰囲気が漂っている。そして「アウー」という雄叫びとともに「アニマルズ」が始まると見事にそこはジャングルに様変わり。気づけばPJモートンは故障し煙を上げる車の上でキーボード、辺りに古びた木箱が散らかっている台上でマット・フリンがドラムをプレイしている。<何マイル先からでも、君の匂いに気がつく。まるで獣のようにね>とセクシーに決めるアダム・レヴィーンだが、ここで手に持ったのはハローキティがプリントされたピンク色のエレキギター。2人の女児を持つ彼のパパらしい一面が見えた瞬間であり、各パートがギラギラとぶつかりあうこの場面で、このキティに視線が釘付けになったのは筆者だけではないだろう。

 「行くよー、準備はいい? どうぞ!」というスタッフの掛け声やカメラマンが映り込むシーンもあり、収録ではあるものの、生感も残っていた。数多くのミュージックビデオを手がける女性監督ソフィー・ミュラーが制作に参加するこのオンライン・ライブを簡単にまとめると新曲1曲とヒットソングのオンパレード。どれもバンドを代表する曲ばかりで、そのヒット曲の多さに感服する。

 打ち込みビートが心地いい新曲「ビューティフル・ミステイクス」ではピンクに近い紫がかったライティングがポップで、メーガン・ジー・スタリオンも映像で登場。美しいアコースティック・ギターのメロディに合わせて始まった「ガールズ・ライク・ユー」でもカーディ・Bがビデオ出演し、ここ数年で躍進した女性ラッパーがここでも存在感を残した。「ガールズ・ライク・ユー」しかり「メイクス・ミー・ワンダー」しかり、耳に残るギターリフが多いことに改めて気がつく。

 ファンからの質問コーナーで「カバーしたい曲は?」という質問にジェームズ・ヴァレンタイン(Gt.)はラッシュの「トム・ソーヤー」、アダムはナイン・インチ・ネイルズの「クローサー」をチョイス(アダムに「いい曲だけどR指定ソングだね」とジェームズ)。「夢のコラボレーターは?」に、アダムは昨年、活動再開を発表したザ・ネプチューンズを選んだ(実際、「シー・ウィル・ビー・ラヴド」のリミックスver.で一度一緒になっている)。次に「一番好きな自分のアルバム」を聞かれたアダムは1stアルバム『ソングス・アバウト・ジェーン』を挙げる。「みんなも好きな作品だと思う。長い時間をかけてあのアルバムを作った。よくアーティストは『人生をかけて最初の作品を完成させるけど、それ以降はそこまでの時間をかけることはもうない』と言われていて、一作目を再現するのは無理なこと。段々と新作を作るのが難しくなってきている。この質問に対する答えは一生変わらないと思う。」と音楽家には避けられない本音も明かした。

 「生演奏で好きな曲は?」という問いにはデビュー作の収録曲「ザ・サン」を選んだジェームズ(「長年演奏していないけど、ギターソロが気に入っているし、何よりプレイが簡単だから。いつかまたセットリストに入れようかな。」)。「好きな歌詞は?」に「シー・ウィル・ビー・ラヴド」を挙げたアダムは「ササっとかけた曲で、心の底から率直に書いた、一番生々しいだから。」とこれまた初期の作品をチョイスした。最後に「過去から学んだこと」を尋ねられたアダムは「学んだことは数えきれないけど、個人的には、この未曾有によって誰もが嬉しくない時間を過ごしているなか、何が・誰が自分の人生に大切なのか、じっくりと向き合うことができたと思う。音楽から奪われるものも多く、これまではツアーなどで家を空けていることが多かったけど、家にいることが必然になった今、自分の周りにあるもの全てに感謝の気持ちでいっぱいなんだ。」と、アーティストにとっても厳しい時期であるこのコロナ禍で、ポジティブなことも学んだと言う。

 艶かしいエレキギターと怪しげなボーカルが光る「シークレット」に続き、「サンデイ・モーニング」、「シー・ウィル・ビー・ラヴド」、「ディス・ラヴ」とバンドをブレイクに導いたデビュー作品から今も色褪せないヒットソングが立て続けに演奏された。2002年のリリース時はお世辞にも注目を浴びたとは言えない彼らが、その低空飛行から約2年かけて少しずつ上昇し、日本を含む世界で大ブレイクを果たし、【グラミー賞】で<最優秀新人賞>を獲得してから約16年。作品を作り続けることに大変な苦労はあるようだが、新しいアルバムを発表するたびにヒットソングが生まれているのは確かで、アダムのその音楽センスには脱帽する。

 リリースから今年で10年となり、数多ある彼らのヒット曲の中でも1位・2位を争う最大ヒット「ムーヴス・ライク・ジャガー」は、ジェームズと2人とシンプルなパフォーマンスに。そして42週も米ビルボードにチャートインした人気曲「シュガー」では、プリンスを彷彿とさせるハイトーンボイスが炸裂。心温まるラブソングで約1時間のライブは幕を下ろした。アダムの唯一無二の歌声もそうだが、アナログとデジタルを組み合わせ、多様な楽器を使いこなすメンバー個々のプレイが、バンドにバリエーションを与えているように感じたライブだった。結成20年のベテラン・バンドでありながら、変わり続ける音楽シーンに反発することなく、常にアップデートし続ける彼らがまたチャートを賑わす日も遠くないだろう。

Text by Mariko Ikitake
Photos by Jesse Stowell


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