ペンタトニックス、アヴィ参加最後となるツアー初日レポート到着

2017年5月26日 / 12:31

 2016年のポップスプリングとサマーソニックへの出演はあったものの、単独での来日公演は2年ぶり。ペンタトニックスが7度目の来日を果たし、5月25日の福岡公演を皮切りにジャパン・ツアーをスタートさせた。全4都市、計5公演に及ぶ今回の日本ツアーは、彼らにとってキャリア史上最大の規模。しかもこの日はワールド・ツアーの初日というのもあって、全世界が注目を集める中でのステージとなった。

 オープニング・ナンバーは「クラックト」。舞台後方の壇上に5人のシルエットが浮かび上がる中、彼らによるオリジナル・ナンバーが聴こえてくると、オーディエンスはもう待ち切れないといった様子で総立ち状態となり、大歓声と手拍子に包まれた。続く2曲目は日本のテレビCMでもお馴染みの「ナ・ナ・ナ」。というのは、日本公演ならではのファン・サービスだろうか。 更なる盛り上がりを見せると一気に自分たちのペースへと巻き込んでいった。「チアリーダー」のカバーの後、一旦ひと息付くとスコットが「日本に戻って来られて嬉しいよ。ミンナ ダイスキ」と挨拶。この後も各メンバーが代わる代わるMCを担当し、流暢な日本語を交えながらステージは進行していった。

 「マイケル・ジャクソン・メドレー」では彼らのエンターテイナーとしてのショーマンシップが炸裂。キレ抜群のダンスと早替わりを思わせる素早い展開で楽しませた。かと思えば、ジャスティン・ビーバーの「ラヴ・ユアセルフ」や「ホエア・アー・ユー・ナウ」のカバーにおいては、声とハーモニーそのものの美しさで魅了。その最高峰と言えるのが、ジョン・レノンの「イマジン」のカバーであり、前半の最大のハイライトとなっていた。この曲は来日記念盤としてリリースされたばかりの最新EP『PTX VOL.IV –クラシックス』にも収録。永く愛される名曲のカバーは、彼ら自身のルーツを再確認するかのようでもあり、 基本に立ち返ったアカペラ・グリープとしての実力を存分に見せつけた。

 中盤にはケヴィンによるチェロ演奏をしながらのビートボックスや、ファンを舞台に上げての「ミスビヘイヴィン」など見せ場もたっぷり。特に後者ではファンと一緒にクッションに座って歌ったり、セルフィーを撮るなど各メンバーの気さくな人柄が愛らしすぎ。「Perfumeメドレー」に至っては、主にリードを取ったカースティンを始め完璧な日本語アカペラに脱帽させられた。

 終盤はお馴染みの「アハ!」でミッチがドラマチックなソロ・パートを決めまくり、「ダフト・パンク・メドレー」で会場を興奮の坩堝と化させ、「ハレルヤ」ではこの5人でしか創造し得ない、まろやかに溶け合ったハーモニーで圧倒した。

 この公演の僅か2週間前に、アヴィが今回のツアーをもってグループから脱退すると発表されたばかりだが、それに関してのコメントは敢えて成されなかった。が、アンコールで再登場した際に、客席から泣き叫ぶかのような「アヴィ!!」という声が多数上がると、それに応えるかのようにアヴィは「サヨナラは言わないよ」とコメント。そして歌われたのが「好きにならずにいられない」。最新EP『PTX VOL.IV –クラシックス』からのナンバーは、どんな別れの言葉よりも感動的で説得力を持っていた。

 今回の日本公演に選ばれたのは、すべてオーディエンスが着席する形式の会場。これまでのスタンディングと異なり、じっくりと鑑賞できるセッティングだったのも彼らのキャリアと自信の裏付けがあってこそ(とはいえ、実際には多数の人がほぼ立ちっ放しだったようだが)。老若男女の入り混じる幅広い客層を見るに付け、彼ら音楽のユニバーサルな魅力と、世界をひとつに結び付ける彼らのハーモニーの偉大なる力を再確認。なぜ彼らがこれほど生の歌声だけに拘ってきたかに納得させられると同時に、より完成度の増したペンタトニックスの姿を目撃することのできた最新ツアー初日のステージだった。

 この後、ペンタトニックスは5月27日と31日に東京、29日に名古屋、30日に大阪公演を行ない、7月からは大規模な全米ツアーを展開。アヴィが参加するのは最後でもある今回のツアー各方面から熱い注目を浴びており、既にソールドアウト公演が続出している。text by 村上ひさし photo by原依里


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