デビュー20周年のGREAT3が円熟と革新を共存させた珠玉のステージをレポート

2015年10月17日 / 00:00

   時間の経過がもたらすのは熟成であり、それが醸す味わい深さは得も言われないものだ。しかし、熟成された状態は時として大胆な変化や新しい境地への到達を遮るものになったりもする。何においても円熟と革新は共存しえないもののようにも見え、どちらか一方を得れば、どちらか一方を逸するというのが世の常だ。しかし、GREAT3が10月14日にビルボードライブ東京で行ったライブはその常を覆し、まさに熟れた果実が新しい芽吹きを覗かせるような新体験を観る者に与えてくれるものになった。

 初めての会場ということで、集ったファンの方々もこれまでの彼らのライブに臨むのとは少なからず異なる感慨を持って集まっていたはずだ。そんな緊張感と期待が入り交じるビルボードライブ東京のステージに登場した片寄明人(vocal&guitar)、白根賢一(vocal&drums)、jan(vocal&bass)の3人。この日は清水ひろたか(guitar)と堀江博久(keyboards)をゲストに迎えた布陣となった。

 1曲目はなんと2002年にリリースしたアルバム『When you were a beauty』の冒頭を飾る「Ruby」。再始動後としては初めてセットに組み込まれたこの曲は不意をつくのと同時に、なるほどビルボードライブの雰囲気にじんわりと馴染んでいくようなメロディと楽曲の構築美が味わえる逸品で、すかさずオーディエンスが沸く。つづく「ジェット・コースター日和」「Golf」も最近のライブでは馴染みのうすいものだったが、それが逆に往年のファンの期待の隅を突くようで、会場を見ると一緒に口ずさんでいる方も多い。しかし、懐かしさよりも際立つのがタイトな演奏による充実感。場所が生む磁力も少なからず影響していると思うが、ステージ上の5人の技巧と思いが交錯しながら素晴らしいパフォーマンスを繰り出しているのがこの日の大きな特徴だ。

 新旧入り交じるという意味でそれぞれが幽玄なサイケデリアを顕現せしめた「ポカホンタス」と「Dew」(今回がライブ初披露)の流れは、ボーダーレスに時間を飛び越えるような印象もあり、GREAT3の音楽のいい意味での普遍性と唯一無二のオリジナリティが輪郭を露わにするような瞬間が訪れた。ちなみにこの日の演奏はライブ・アレンジというよりもより音源に近いアレンジの曲が多かったのだが、それでいて過去曲も再始動後の曲も並んでまったく違和感がなかったのも特筆すべき点。GREAT3の曲の持つメロディや歌詞の強度のなせる技だろう。

 序盤のクライマックスとなったのは静かなるエモーションが燃え上がっていく「嫉妬」につづいた「Under The Dog」。アーシーでフォーキーなこの曲はこれまでもGREAT3のライブで数々の名演を生んできたが、この日は丁寧に音を紡いでいく状態から次第に本能的で野生に還っていくような神がかった演奏となった。5人ともに音を操りながらも、その音自体と一体化していくかのようなダイナミズム。この曲が終わった瞬間、会場には興奮とため息が入り混じったことは言うまでもない。

 正直なところここまででライブ一本見終わったかのような満足感があった。”20周年”、”ビルボードライブ”というキーワードを踏まえれば、この時点で及第点を軽やかに越えた内容だったとも言える。しかし、GREAT3は決して”過去と向き合う”だけのバンドではない。そう、ここまでが彼らの円熟を味わえるものだとしたら、エクスペリメンタルなアレンジが施された「TAXI」を皮切りに新曲を中心に構成された後半はアグレッシブで革新的なバンドの精神性を垣間見るものとなったのだ。

 最新アルバム『愛の関係』に収録されている「モナリザ」と「愛の関係」はそれぞれが耽美で哀感すら潜ませながらもエクスタシーの域に昇華する都会のダンス・チューンとしての機能を存分に発揮していた。ちなみにこの2曲は白根の作曲によるもの。彼の妖しくも享楽的なメロディセンスに改めて耽溺させられるとともに、片寄による鋭く真理を貫くリリックが衝動や情念を刺激しながら絡みあってストーリーを生み出していくさまはGREAT3の醍醐味であり、この日はいつも以上にその妙味を存分に堪能できる一夜になったといっても過言ではないだろう。

 本編最後は「穴と月」「I.Y.O.B.S.O.S.」というロックな2曲で締めくくり、鳴り止まない喝采を受けて登場したアンコールでは「タランチュラ」でサイケデリアを再燃させつつ、「LittleJの嘆き」「SOUL GLOW」で大団円となった。

 この日の模様はライブレコーディングされ、早くも11月4日(水)にamazon LIVE DIRECTでCDリリースされる。その珠玉のステージの全貌をぜひその耳で確かめてみてほしい。

Text by 小林“こばーん”朋寛

Photo: Masanori Naruse

◎ライブセットリスト
GREAT3 at Billboard Live
2015.10.14 2nd Stage at Billboard Tokyo
01. Ruby
02. ジェット・コースター日和
03. Golf
04. ポカホンタス
05. Dew
06. 嫉妬
07. Under The Dog
08. TAXI
09. モナリザ
10. 愛の関係
11. 穴と月
12. I.Y.O.B.S.O.S
En.
1st LittleJ の嘆き~SOUL GLOW
2nd タランチュラ~LittleJ の嘆き~SOUL GLOW

◎公演情報
【GREAT3 at Billboard Live】
2015年10月14日(水) ビルボードライブ東京
2015年10月16日(金) ビルボードライブ大阪
Info: www.billboard-live.com/

◎リリース情報
『GREAT3 Billboard Tour 2015 [LIVE DIRECT]』
2015/11/4 RELEASE
(収録日:2015/10/14 ビルボードライブ東京)
2,800円(tax in)
URL: amzn.to/1Ge92BK


音楽ニュースMUSIC NEWS

BRADIO、最新アルバムより新曲MV第3弾を公開&全国12か所でツアーの開催が決定

J-POP2024年5月24日

 BRADIOが、5月24日のファンクラブ「FPP☆CLUB」限定ライブ【ファンピー★ナイトフィーバー LIVE】にて、ニューアルバム『PARTY BOOSTER』収録の「ヨルゾラTreasure」のミュージック・ビデオをライブ内で初公開後 … 続きを読む

SPECIAL OTHERS ACOUSTIC、 “ニコニコの日” リリース第4弾配信&MV公開

J-POP2024年5月24日

 SPECIAL OTHERS ACOUSTICの新曲「California」が5月25日に配信開始、あわせてミュージックビデオも同日0時にプレミア公開されることが分かった。  2024年は、アコースティックプロジェクトである”SPECIA … 続きを読む

グソクムズ、全国ワンマンツアー決定 ファイナルはバンド史上最大規模で開催

J-POP2024年5月24日

 グソクムズが、今年11月より全国7都市を巡るワンマンツアー【夢に飛びのって】の開催を発表した。  本ツアーは、、本日24日に東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで行われたアルバムリリースツアーのファイナル終演後に発表。大阪、愛知 … 続きを読む

ウルフルズ/大橋トリオら出演【ビショップ音楽祭】9月神戸で初開催

J-POP2024年5月24日

 株式会社ビショップの創立30周年を記念し、本社のある神戸市のメリケンパークを舞台とした野外フェスティバル【ビショップ音楽祭】を、9月15日に開催する。  お祭りをテーマに構成された会場では、ミュージシャンによるライブをメインに、音楽とファ … 続きを読む

SABLE HILLS主催のメタルフェス【FRONTLINE FESTIVAL】全ラインナップ解禁 国内外のアーティストが参戦

J-POP2024年5月24日

 SABLE HILLAが主催するメタルフェス『FRONTLINE FESTIVAL 2024』の全ラインナップを解禁。併せて一般発売もスタートした。  ドイツより、来日経験もある元アラズカのメンバー擁するフロヤ、国内からは盟友Earthi … 続きを読む

Willfriends

page top