ギターキッズを熱狂させた“神”ことマイケル・シェンカーによる名盤『神(帰ってきたフライング・アロウ)』

2015年5月15日 / 18:00

『The Michael Schenker Group』のジャケット画像 (okmusic UP's)

 1980年代にハードロックを通って来た者、とりわけギターを手にした者にとって、“神”といえばマイケル・シェンカーだ。本稿では、その称号の由来ともなっている、マイケル・シェンカー・グループのデビューアルバム『The Michael Schenker Group(邦題:神(帰ってきたフライング・アロウ))について語ってみたい。

 1955年、西ドイツ・ハノーファーで誕生。兄であるルドルフの影響で9歳でギターを始めたマイケルは、11歳で自らのバンド活動を開始。その後、ルドルフのバンドで後にドイツを代表することになるハードロックバンド、スコーピオンズに加入。バンドがアルバム『Lonesome Crow』でデビューを果たした時、マイケルは弱冠17歳。その後、スコーピオンズがオープニングアクトを務めた英国のバンドUFOから声がかかり、意を決して単身イギリスに渡る。
 UFOにおけるマイケルの活躍は目覚ましいものだった。マイケルの代名詞的な曲でもある「ドクター・ドクター」や「ロックボトム」をはじめ、当時の楽曲やアルバムはブリティッシュ・ハードロック・シーンに多大な影響を与えた。そんな活躍とは裏腹に、マイケルは英語が喋れないストレスとバンド内の人間関係悪化によりアルコールやドラッグに溺れ精神的に蝕まれていった。ツアー中に失踪する騒ぎを何度も起こした末、1978年にバンドから離脱し、故郷のドイツ・ハノーファーに戻った。
 「もう二度と戻ってこないのではないか」。不本意なかたちでの脱退だったため、そんなことが囁かれたのも不思議ではなかった。新世代のギターヒーローとして認知され、期待が大きかっただけに、落胆の度合いもそれに比例した。しかし、マイケルは帰ってきた。リハビリ入院を経て心身ともにリフレッシュしたマイケルが世に送り出したのが、アルバム『The Michael Schenker Group』だ。“グループ”とついているものの、実質的にはソロアルバム。邦題に“帰ってきた~”とあるのは、復帰を待ち詫びていたファンの思いがそのまま投影されている。軽快なリフでアルバムの幕を明ける「アームド・アンド・レディ」は、それまでマイケルが取り憑かれていた全ての呪縛から解放されたかのような爽快感に満ちあふれている。80年代の代表的ハードロック・アンセムのひとつであることは間違いない。
 本作のクライマックスは間違いなく、レコードでいうところのB面1曲目の「イントゥ・ジ・アリーナ」だ。ギターインストの定番中のド定番。スリリングかつドラマティックな展開に汗を握る。この曲がきっかけでギターを買いに楽器屋へ走ったというキッズも多い。その他、哀愁が怒濤のように押し寄せる「クライ・フォー・ザ・ネイションズ」、陰鬱な「ロスト・ホライズン」、クラシカルな「ビジョー・プレジュレット」など楽曲はバラエティーに富んでいるが、その全て刻み込まれているのがマイケルの泣きのギター。その1音1音が、心に突き刺さる。
 マイケルからの影響を公言しているアーティストの中には、メタリカのジェイムス・ヘットフィールドとカーク・ハメット、日本ではB’zの松本孝弘がいる。松本は学生時代にこのアルバムの全楽曲をコピーしまくったという逸話も残されているほどで、ROCK’N ROLL STANDARD CLUB BANDのカバーアルバムで前述の「イントゥ・ジ・アリーナ」を取り上げている(ちなみに彼を中心としたハードロックバンドTMGの略称はMSGに倣ったもの)。というよりも、80年代にハードロックをかじっていて、マイケルの影響を受けていないギタリストが果たしているのだろうか。
 現在は“マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロック”として活動しており、6月には来日公演が控えている。日本中のギターキッズを熱狂させたあの頃と変わらない、キレのある泣きのギターを聞かせてくれるに違いない。彼がなぜ“神”なのか、きっと分かるはずだ。


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