石月努が野村義男との2人きりによるアコースティックライヴを開催

2014年8月22日 / 16:00

90年代ロックシーンにおいて、FANATIC◇CRISISとして人気を誇り、現在はソロアーティストとして活動を行っている石月努が、8月16日にduo music exchangeで、「石月努Acoustic Live 2014」を行った。

野村義男を迎え、ふたりきりによるアコースティックライヴは、普段からよく飲んでいるというふたりの仲のよさがうかがえる、終始リラックスしたムードで進行した。

「茶会」「夜会」と題した2回公演となったこの日。セットリストは、石月初となる、カバーを中心とした内容。意外にも歌謡曲から演歌まで、彼の音楽的な好みが垣間見える興味深い内容となっていた。

特に、野村が「部長系」と称して笑いをとっていた、茶会で披露された「また君に恋してる」と、夜会での「氷雨」は、石月の印象を大きく覆した2曲。けれども、まるで演歌的な古さを感じさせないヴォーカリゼーションでありつつ、日本人の心を打つ情感をたっぷり漂わせ、会場を酔わせた。

また、茶会と夜会両方で、曲は違ったものが選ばれていた。玉置浩二や井上陽水の名曲からは、ロックバンドという形態を選びつつも、あくまで歌を大切にする、彼のヴォーカリストとしての姿勢を貫き続けている原点が感じられた。

茶会では、FANATIC◇CRISIS時代の名曲「SLEEPER」と「LIFE」を披露。ファンも一緒に歌い、懐かしさとともに、改めて曲のよさを噛みしめた。一方、夜会では、ソロのオリジナル曲から「最後の恋」と「秋桜」を選曲。

石月が初めて買ってもらったという、ある意味音楽の原点である「およげ!たいやきくん」を大きくアレンジを変えて、あくまでシリアスに歌い上げたり、メガヒット中の「Let it Go~ありのままで~」を伸びやかに聴かせたりと、幅広い選曲でとにかく飽きさせなかった。

FANATIC◇CRISIS当時から、歌唱力には定評のあった石月だが、ただ歌の上手いだけのカバーになることなく、どの歌も自分のものとして、自らの個性を生かしつつ聴かせた歌は、歌や曲そのものを楽しませる力があった。本人も、「カバーは歌に入り込めるのが楽しい」と口にしていたとおり、ヴォーカリストとしての楽しさや喜びを感じたのではないだろうか。もちろんそれを支え、ギター一本でまるで飽きさせることなく聴かせた、野村のギタープレイ(かなり指が痛いとぼやいていたが・苦笑)とアレンジのレベルの高さは言うまでもない。

たっぷりと音楽を楽しませる一方で、茶会の途中から、野村が持ち込んでいたジャック・ダニエルが登場。ふたりとも飲みながらのライヴとなり、特に野村の饒舌ぶりは進行するごとに磨きがかかり、会場は笑いの渦に包まれていく。「帰るとき、MCのことは忘れて」と口にするほど、とどまることを知らない自由奔放なトークにおおいに笑わせてもらった。

茶会ではシックなスーツ姿、夜会では夏らしい浴衣姿、そしてセットリストは1曲もかぶることなく、茶会と夜会で合計24曲をプレイ。暖かいなごんだ空間をふたりも楽しみながらも、高いクオリティのエンターテインメントを提供した姿勢は、まさにプロのミュージシャンにふさわしいもの。長いキャリアに裏打ちされた実力を堪能させてくれる場ともなった。

「努にだまされて出演することになった(笑)」と野村は口にしていたが、これだけ充実した内容を見せてくれるなら、ぜひまた次もだまされてほしいもの。そうそう目にすることができない、貴重なライヴを堪能できて、得した気分になって会場を後にした。

Text:村山幸


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