ソロ作好調のデーモン・アルバーン、ブラー期の内省と現在の内省はまた違う?

2014年6月27日 / 18:49

 4月にリリースしたオリジナル・ソロ・アルバム『Everyday Robots』が全英2位と好評を博し、【FUJI ROCK FESTIVAL ‘14】でのパフォーマンスに期待が高まるデーモン・アルバーン(7/25~27の開催期間のうち、出演日は7/26)。デーモンと言えば、1990年のブラーのデビュー以来、オアシスと並んで所謂ブリット・ポップの隆盛を支えた顔役であり、21世紀に入ってからはヴァーチャル・プロジェクトであるゴリラズの立役者として『Demon Days』(2005・Billboardで最高位6位)、『Plastic Beach』(2010・Billboardで最高位2位)などヒット作を生み出してきた、今やUKポップ・スターの枠には収まらない世界的なアーティストだ。

 彼の留まることを知らない探究心と創作意欲は、例えばマリやコンゴといったアフリカ諸国の音楽やアーティストを研究しつつ欧米諸国のアーティストと結びつけるプロジェクトであったり、幾つかの映画のサウンドトラックであったり、はたまた西遊記をベースにしたオペラ作品といったふうに、常軌を逸したペースとレンジで行われて来た活動からも一目瞭然、というか、一目では到底フォローしきれないほどの多作ぶりである。

 バンド・プロジェクトにおいても、アフロ・ビートの名ドラマーであるトニー・アレンやザ・クラッシュのポール・シムノンといった、言わばデーモン自身にとってのヒーローたちと結成したザ・グッド、ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン、そしてレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーとも組んだロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンで、それぞれにアルバムを1作ずつ発表している。2003年以降、オリジナル・アルバムのリリースが途絶えていた本家ブラーは、2009年から断続的に再始動プロジェクトを行い、2014年1月にはオリジナル・メンバー4人で15年ぶりに来日公演を行ったのも記憶に新しいところ。

 さて、そんな多作家のデーモンだったが、今回の『Everyday Robots』に至るまで、不思議とプライヴェートなポップ・アルバムを発表したことはなかった。オープニングを飾る表題曲「Everyday Robots」は、携帯端末に捕われた生活の描写から歌い出されるデーモンらしいアイロニカルな歌詞であり、椅子に腰掛けて項垂れるデーモンの姿を捉えたジャケット・アートワークからも伺えるように、アルバム全体が極めて内省的な作風だ。飽くなきアートの探求から導き出された音楽が、彼自身を映し出す鏡のように機能する作品と言ってもいいだろう。過去を振り返りながら自嘲気味に歌われる「The Selfish Giant」や、ブライアン・イーノとのデュエットにスティールパンの物悲しい旋律が添えられる「You & Me」といった楽曲群も、本作の深く沈んだムードを助長している。

 ただし、例えばかつて滋味深いブルース・ギターと力強いゴスペル・コーラスに支えられて失恋の痛手から立ち直ろうとしたブラー「Tender」の内省と、今のデーモンの内省は違っている。項垂れて過去を振り返りつつ、それを引っ括めて人生を楽しんでしまうような、いわば大人のしなやかさ / したたかさが音になって表れている。『Everyday Robots』が、深く沈んだ作風なのにまったく息苦しくない、豊かなポップ・アルバムに仕上げられている理由。それは、音楽家デーモン・アルバーンが、悲嘆に暮れながら人生を謳歌しているからだと思えてならない。

Text:小池宏和

◎リリース情報
『エヴリデイ・ロボッツ』
2014/04/30 RELEASE
WPCR-15643 2,654円(tax in.)


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