《湧出!FPP音泉~太陽の塔と京都タワー編~》OKAMOTO’Sとくるり、ひと世代違うふたつのバンドの粋な共演

2013年7月9日 / 19:10

 スタイリッシュな誌面で存在感を発揮しつづけるエンターテインメント・フリーペーパー「FLYING POSTMAN PRESS」誌と、ユニークなライブ興業が身上の関西のコンサートプロモーター「清水音泉」。両者がタッグを組んでおこなう名物のイベントシリーズも4年目に突入。今回、顔を合わせるのはひとまわり違う世代のバンド2組。どんな化学反応が起こったのか?

2013年6月28日(金) なんばHatch
湧出!FPP音泉~太陽の塔と京都タワー編~
OKAMOTO’S / くるり

 かねてより、ラジオ番組での共演やツアーへの参加などで交流の深い彼らだが、デビュー年でいっても干支ひとまわり違う2バンド。お客さんの年齢層も、それなりに違いがあるかと思われたが、意外にそうでもないようだ。

 先攻はくるり。3人のメンバーに、ドラムスとギターのサポートを加えた5人編成で、「ワンダーフォーゲル」「お祭りわっしょい」とアッパーな曲からスタート。

 途中、「ニュースの多いくるりから重大発表?!」と自嘲気味の笑いを取りながら、ベース・佐藤征史が「いまやった曲を最後にくるりのベースを辞めます」とマラカスへのコンバート宣言。代わりにベーシストとして「加入」したのは、オカモトズのハマ・オカモト。佐藤のプレイスタイルとは全く違う、ビュンビュンと走るベースでプレイされた「everybody feels the same」は新鮮。トランペットのソロパートでステージ前面に飛び出してくるファンファンのステップも、心なしかより軽やかな様子。曲中で29の都市名が羅列される意味深なくだりで代わりに織り込まれたのも、「京都」から会場のある「なんば」に至るまでの阪急京都線と地下鉄の駅名という、リラックスモードなもの。残念ながらこの一曲だけでハマは脱退。再び佐藤ベース体制のもと、ラストは「Baby I Love You」「ばらの花」「東京」という、沁みる曲を連発して締めくくってくれた。

 くるりというのは不思議なバンドで、ボーカル・岸田繁のリリカルな面が色濃く出る場合もあれば、サウンドの実験農場みたいな面が発揮されるときもあるし、王道のギターポップを思わせるタッチで来る瞬間もある。その振り幅が魅力でもあるわけだが、今回は全体的に、小細工なしの骨っぽいアレンジで聴かせるロックンロールバンドという雰囲気だった。年少のバンドの熱度に敬意を表したのかもしれない。

 その岸田が、「オカモトズは『かっこよたのしい(格好よい+たのしい)』のがいいですねえ」と紹介したとおり、後攻めのオカモトズものっけから飛ばしていく。

 ギター・オカモトコウキの自在なプレイが冴え、ブライアン・ジョーンズを思わせる金髪のボブヘアで、黙っていればカッコよろしいオカモトレイジがシンプルなドラムセットをクールに叩き続けるなか、ボーカル・オカモトショウが客席を煽り、コール&レスポンスで客席の温度を急速に上げていった。

 ただしここでも、ハマから緊急声明が、と−−これはもう信じる人間はいなかったかもしれないが−−気になる発表があり、小芝居を交えて見送られたハマのベースを、新加入した佐藤征史がそのまま借り受け、ストラップの位置も高いままで「あからさまに恋してる」を演奏するサプライズ(笑)が勃発。少々展開が読まれてしまったきらいはあるが、そこは1曲だけで脱退していった「マサ・オカモトに捧げます!」と、くるりの難曲「chili pepper japones」を見事にカバーしてみせて挽回。

 後半は、ニューシングル「JOY JOY JOY」、「青い天国」、必殺のルースターズ・カバー「恋をしようよ」、さらに呪術的でハードなブギ「まじないの唄」でフィニッシュを決めた。

 アンコールでは、両バンド全員がステージに。舞台中央に据えられたサンプラーマシンを駆使して(?)、撃鉄音+銃声、色っぽく「ハマくん~」と呼ぶ声、某クリニックのCMでお馴染みの「イエス!」というかけ声などなどを、主にレイジと岸田が乱れ打ち。まるでオモチャを与えられて喜ぶ小学生状態だが、そんな効果音が大活躍するナンバーが、この日のラストナンバーだった。「くるりとオカモトズといえばこの曲!」というショウの叫びとともに始まったのは、きゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」。まさかのセレクトに会場は爆笑と歓喜に包まれていった。

 この諧謔精神と、他の世代にも開かれたマインド。彼らに共通するのはこのふたつではないか。くるりも年長のミュージシャンからの信任が非常に厚いバンドである。思うに、ロックミュージックの世界から分かりやすい仮想敵が失われたいま必要なのは、いたずらに尖ることや奇をてらうことではなく、音楽への限りない愛情と情熱、あるいは音楽をたのしむ自分を肯定することではないだろうか。バンドだけでなく、スタッフともども全力でたのしんでいるこのイベントを観て、改めてそう感じた。

Text:大内幹男

もっと知りたい人は「FLYING POSTMAN PRESS 関西版 2013.7.20号」にライブレポート掲載!
http://flying-postman.com/kansai/


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