ダーティー・プロジェクターズの色彩豊かな素晴らしきアンサンブル

2012年10月10日 / 22:50

 既に今年の最高傑作と評価の高い新作『スウィング・ロー・マゼラン』をリリースし、偉大なロックバンドになるべく、そのキャリアを進めるダーティー・プロジェクターズが来日。朝霧JAM出演後の単独公演ツアーとして、10月9日渋谷O-EASTで公演を行った。

 まずはオープニング・アクトのダスティン・ウォングがテレキャス一本と足元に置かれた多数のエフェクター類とその抜きんでたセンスで観客を圧倒した。エフェクターを使用し、アコーディオンのような音だったり、サックスのような音だったりと、シンセサイザーと化したギターでフレーズ、リフ、メロディーといった音たちを巧妙にループさせ、ノンストップでギターを弾きまくる。これだけならちょっとしたライブで見かけるが、彼はダーティー・プロジェクターズのオープニング・アクトとしてこのステージに立っている。魅力はテクニックではない。積み重なった音像は幻想的で後を引く。更に突然構築していた音像を打ち消し、別の音像を作り上げていく。その振り幅の余波が残るのだ。圧倒された観客も演奏中は茫然と立ちすくみその世界に飲み込まれていたが、演奏が終わると大喝采となった。

 そして、20時を少し過ぎたくらいでダーティー・プロジェクターズの面々が登場。まずはデイヴ(Gt/Vo)、アンバー(Gt/Vo)
、ナット(Ba)、ブライアン(Dr)の4人のみがステージに上がり、新作のタイトル曲「Swing Lo Magellan」で幕開け。シンプルな楽曲だけにシンプルなバンド構成でサラっとしたプレイは人里離れた山の中で制作されたという新作の製作風景を見ているようでもあった。2曲目はオルガ(Vo)、エンジェル(Vo/Key)の2人が登場し、「Offspring Are Blank」。静寂からギターとドラムが暴れだすように高まるこの楽曲でオーディエンスの心を鷲掴みにした。3曲目にはアンバーがリードとなる「The Socialites」。手拍子を求め、オーディエンスもそれに応えてゆく。この後も満員の客席がキッチリ合わせるのはちょっと難しいのではないか?と思われる手拍子を求めるが、緻密に練り上げられた楽曲でも嫌味じゃないところが彼らに引きつけられる要因だろう。

 新作から頭3曲披露したところで、出世作『ビッテ・オルカ』から「Cannibal Resource」。イントロのギターで歓声が起こる。広がり続ける音像、コーラスが彼らの音世界へ入口の扉を開き、続いてビョークとの共演作『Mount Wittenberg Orca』から「Beautiful Mother」を披露。一気にその音世界に連れ去られることになった。中盤は新作の「See What She Seeing」、前作「No Intension」を挟み、最新シングル“About To Die”を披露。これまでどの演奏も音源を超えた圧巻の内容ですべての楽曲で演奏が終わる度に大喝采が送られた。そのまま最新作の楽曲を惜しみなく、途轍もないクオリティで繰り広げていく。本編ラストは前作から「Useful Chamber」で終了。カラフルなバンドアンサンブルで凄味を増していく演奏がオーディエンスのテンションをどんどん上げていく。これが絶頂に上っていく現在進行形のバンドの強さなのだろう。

 アンコールは新作から「Dance for You 」、前作から「Stillness is the Move 」、ラストは「Impregnable Question 」と色彩豊かな彼らの音世界が会場いっぱいに広がっていく。今日一番の喝采がバンドに送られ、「もっと欲しい」と歓声、拍手が続くが、BGMが流れあっさりと終了。だが、余韻に浸る観客は皆満足そうな表情を浮かべていた。じわじわと入口まで引きよせ、あっという間に音像の中に連れ去り、最後は幸福感たっぷりにし、着地させる。このセットのバランス感覚は既に大御所ロック・バンドの域に達しているようにも思われる。最近は今回に近いセットリストのようで、すぐにでもまた観たくなる素晴らしい公演だった。

Photo:古溪 一道(コケイ カズミチ)

◎ダーティー・プロジェクターズ
10月09日(火)渋谷O-EAST SET LIST

01.Swing Lo Magellan
02.Offspring Are Blank
03.The Socialites
04.Cannibal Resource
05.Beautiful Mother
06.See What She Seeing
07.No Intention
08.About to Die
09.Just From Chevron
10.Maybe That Was It
11.Gun Has No Trigger
12.Useful Chamber
En1.Dance for You
En2.Stillness is the Move
En3.Impregnable Question


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