奇妙礼太郎とモカキリで幕開けした音楽のレイトショー

2012年9月28日 / 13:25

 渋谷スペイン坂の頂上で元映画館のユニークなつくりを生かして多彩な音楽を届けるWWWとFUJI ROCK FESTIVAL、朝霧JAMなどのプロデュースを手掛けるDoobieが手を組んでスタートさせたレギュラーパーティー【レイトショー】。第一回目となる今回は奇妙礼太郎リトルスイングとMOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROがその幕開けを飾った。

 “レイトショー”ということもあり、オープニングアクトである思い出野郎Aチームの演奏もスタートは20:00からと通常のイベントと比較すると遅めのスタート。また、平日水曜日とイベントとしては集客しづらい日程にも関わらず、会場には新しいイベントの幕開けを楽しもうとする多くの音楽ファンが駆けつけていた。

 ほぼ時間きっちりにステージに現れたのは奇妙礼太郎リトルスイングのバンドメンバー達。ギター、ベース、ドラム、キーボード、サックスの5人編成と普段のトラベルスウイング楽団から人数は少ない。5人のリトルウイングがイントロをかき鳴らし演奏を開始すると奇妙礼太郎がぴょんぴょんと跳ねながら登場。そのまま「機嫌なおしておくれよ」など疾走感たっぷりの定番曲を続々と披露していく。「この最初の3曲が一番しんどい」語るも、疲れは全く見えない様子。ギターを持ち、演奏を再開するかと思えばピックを忘れたと笑わせる。前の3曲でも歌詞を忘れていたが、関西ミュージシャンの得意な分野なのかそんなアクシデントも“俺たちの音楽”と言わんばかりに笑い飛ばして魅力に変えてしまう。その後も「SWEET MEMORIES」「星に願いを」「オーシャンゼリゼ」おなじみとなった名曲カバーが続く。奇妙礼太郎が思うがままに独特の間で歌う、フレーズの繰り返しとアドリブはバンドも合わせるのに一苦労しているようだ。アドリブが過ぎて「バンドがもう止めたそうなので」と演奏する5人の空気を読んで終了させる場面も。思いつくまま動き、オーディエンスを虜にする歌声と憎めないキャラクターは替えの利かないミュージシャンの証だろう。ご機嫌な音楽と彼らの不思議な世界感は会場に幸せの余韻を残した。

 そして、関西ミュージシャンの好演に負けじと自称“埼玉の粗大ゴミ”ことMOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROが登場。ドラムのTigerが1人で先にステージへ現れ、オーディエンスに手拍子を促す。盛り上がってきたタイミングでドラムを叩き始めるも、その手拍子を裏切ってくるリズム(笑)でのスタートは流石。残りのメンバーが登場し、一気に怒濤のファンクナンバーで会場を圧倒し、オーディエンスを踊らせていく。彼らのディープ・ファンクの魅力は日本人離れした「黒さ」だ。踊り狂う為のバッキバキの曲からぐっと心を掴んでくるミドルな曲もメロディは勿論、音色チョイスのセンスからアレンジまでファンク愛の強さを感じさせ、その実力は「俺もファンク好きやけどあんたらも好きやねぇ」とスライ、ミーターズ世代も唸らせるのだろう。ファンも続々と増やしているようだ。中盤では彼らが発案したという「剣道ダンス」が伝授される。オーディエンスも最初は面を打つ動きに拒絶反応があったようだが、あっと言う間に会場は異様なダンスフロアに変身していた。そして、今日の公演でステージ上のメンバーの誰よりも、フロアで踊るオーディエンスの誰よりも踊っていたBobsanが最後はボルテージMAXといったソロでステージを所狭しと動き回り、今日の主役はオレです!と言わんばかりにもっていき、一旦終了。アンコールではスペシャル・ゲストとして奇妙礼太郎がボーカルとして参加。モカキリの演奏でビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を(歌詞カードを見ながら)味わい深く歌った。

 元映画館である会場で行われた“レイトショー”は音楽に身をまかせて踊った後の心地よい疲労感と「明日からまた仕事だけど頑張ろう」と思わせる活力を与えてくれた。レギュラーパーティーとして今後も素晴らしい時間を提供してくれるはずだ。


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