「1人で始めたけど、今は1人じゃない」初の有観客ライブでsyudouが見せた生々しい迫力とピュアな喜び

2022年8月10日 / 22:30

 syudouが2022年8月8日に東京・中野サンプラザホールで開催した初の有観客ライブ【syudou Live 2022『加速』】の公式レポートが到着した。

 シンガーソングライター/ボカロPとして数々のヒット曲を世に送り出してきたsyudou。今年5月3日には初のオンラインライブ「狼煙」を開催したが、生身の身体をもって人前でパフォーマンスを行うのはこれが初めてのこととなる。チケットはソールドアウトで、2000人超の客席は満員。記念すべき日に見せてくれたのは、初ライブとは到底思えないほどのエネルギッシュで迫力に満ちたパフォーマンスだった。

 国内外のヒップホップナンバーからセレクトされた会場BGMを経て、開演時間を少しすぎると、オープンカーに乗ったsyudouの姿を描いたイラストレーターのsakiyamaによるオープニングムービーからライブはスタート。1曲目はリリースされたばかりの新曲「いらないよ」だ。ホリエマム(Dr)、長島涼平(B)、Kuboty(G)、モチヅキヤスノリ(Key)というバンド編成を従え、syudouはステージ中央に設けられた2mほどの巨大なお立ち台の上に登場。バックの巨大なスクリーンにはMVの映像が映し出される。

 まず目を引いたのはsyudouの激しい動きだ。「行くぜ! 中野サンプラザ!」と声をかけ、飛び跳ね、マイクを握り歌いながらステージ全体を縦横無尽に駆け回る。続く「たりねぇ」でも、ステージ前方左右のお立ち台も使い、くるくると回ったり、低く腰を落としたり、全身を躍動させながら歌う。

 「はじめまして、syudouです!」と挨拶し「モテたいと思って音楽を始めたのが10年前なんですけれど、間違いなくモテはじめました」と笑顔を見せるsyudou。「ライブ自体が初めての人?」とお客さんに問いかけると、かなりの数の手が挙がる。これまでネットを通じた活動が主だっただけに、syudou自身にとっても、ファンにとっても、いわばこれが出会いの場になったわけだ。

 続いては「幼馴染のK君への嫉妬を込めて作った曲」とMCで語った「邪魔」。syudouが今の作風とアーティスト性を確立したターニングポイントになった曲だ。さらに「馬鹿」「アンチテーゼ貴様」とボーカロイドを用いて発表した初期のナンバーをたたみかける。

 続けてMCではsyudouは「最初のライブはせっかくやるなら思い入れのある場所にしたいと思って――」と、中野サンプラザへの思いを語る。子供の頃に乗っていた電車の車窓から見た場所であり、オタクだった学生時代にもたびたびイベントを観にきた場所だったという中野サンプラザホールでライブが実現した喜びを語り、客席からの大きな拍手に包まれる。

 続いては「一緒に手拍子をやってください」とオーディエンスのハンドクラップと共に披露した「ビターチョコデコレーション」「孤独の宗教」、ギターを抱えて歌った「フラミンゴ」、優しいメロディを持つミドルバラードの「灯火」と続けていく。

 MCでは、「こんなにバンドが楽しいとは知らなかった」とsyudouは告げる。バンドを断念した学生時代を経てボカロを選んで1人で活動をはじめた頃を振り返りつつ「ボカロだろうと自分で歌う曲だろうと、内容はすべて地続きで、自分が思ったこと、気持ちの体重が乗ることを曲にしているので、ずっとつながっているんです。その流れをよりよくしていきたい」と、今回のライブのタイトル『加速』に込めた思いを語った。

 ライブ後半は5月のオンラインライブで初披露した「狼煙」からスタート。力強いシャウトを響かせる決意表明の歌だ。真っ赤なライティングの光に包まれ、ステージ中央のお立ち台に立ったsyudouが大きく横に手を広げ、歌う。その姿は不思議なカリスマ性を感じさせる。

 「へべれけジャンキー」「コールボーイ」と酒をテーマにした楽曲を続け、「取扱注意」では高速ラップとファルセットのヴォーカルを披露。本編ラストの「ギャンブル」ではマネーガンを片手に紙幣を模した“syudouマネー”を客席にばら撒き、全力を出し切ってステージを降りた。

 大きな拍手に迎えられ、ギターを抱えて再びステージに登場したsyudouは、アンコールに応えて「笑え」を披露。音楽活動に専念するべく会社を辞めるかどうか迷っている時期に書いた曲だという。その時に友人との何気ない会話の中で立てた目標が、キャパ1000~2000人の会場でワンマンライブをすること。それが叶ったことへの感謝を告げ「もしみなさんの中にも、打ち込んでることがあったら、自分のペースで続けてください。楽しい人生になると思います」とファンに語りかけた。

 「最後は笑って終わろうぜ!」と、ラストは「爆笑」。アグレッシヴな曲調のこの曲に乗せ、syudouは喉をからして叫び、ステージ中央のお立ち台に駆け上がり、寝転がり、のたうち回る。最後まで目が離せないパフォーマンスだ。歌い終えたsyudouは、マイクを使わず生声で「ありがとうございました!」と声を張り上げ、ステージを降りた。

 「1人で始めたけど、今は1人じゃないと思ってます」とMCで語っていたsyudou。ライブの楽しさをたびたび表現していたこと、そして何度も繰り返しメンバーやスタッフ、周囲の人々やファンへの感謝を告げていたのも印象的だった。ダークな曲調、妬みや悪意などを生々しく切り取ったリリックとは対象的に、人懐っこく人間味あふれるsyudou自身の素顔も存分に伝わってくるステージだった。

 「最初のライブが中野サンプラザという夢みたいな場所だったんですけれど、欲は出てくるもんで。武道館、行きたいよね!」と、次なる目標についても語っていたこの日のライブ。アーティストとしての晴れやかなスタート地点を刻み込んだ一夜だった。

文/柴 那典

◎公演情報
【syudou Live 2022『加速』】
2022年8月8日(月)中野サンプラザホール

セットリスト:
1. いらないよ
2. たりねぇ
3. 邪魔
4. 馬鹿
5. アンチテーゼ貴様
6. ビターチョコデコレーション
7. 孤独の宗教
8. フラミンゴ
9. 灯火
10. 狼煙
11. へべれけジャンキー
12. コールボーイ
13. 取扱注意
14. ギャンブル

En1. 笑え
En2. 爆笑


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