村上佳佑の5years ~過去・現在・未来~

2022年7月1日 / 12:00

2022年3月25日 『Kei's room vol.8』 at Blues Alley Japan (okmusic UP's)

今年6月にデビュー5周年を迎えたシンガーソングライターの村上佳佑。アカペラグループ・A-Z(アズ)のメンバーとして、09年にフジテレビの『ハモネプリーグ』で番組史上最高となる99点で優勝し、各所から称賛を得て、その後シンガー、シンガーソングライターとして一歩ずつキャリアを重ねてきた。そんな彼がこの5年間でどのような想いを抱きながら活動をしてきたのか? これまでの想い、コロナ禍を経験した今、どのような心境の変化があったのか? そして、自身が描く未来についてうかがうべく、本人を直撃した。
<vol.1 過去> ヴォーカリストとしての 自己を保ちつつ、 シンガーソングライターとして 個性を確立

 6月14日にデビュー5周年を迎えた村上佳佑。彼はこの5年間、葛藤の連続だったようだ。

「特にデビューしてすぐの頃は“普通の男の子がミュージシャンになっちゃった”って感覚が強かったんです。僕は子供の頃から歌うことが好きで、ただ歌を歌いたいだけ。それがデビューするとプロとして前に進まないといけない一方、自分は何がしたいのか考えないといけなくて。ずっと走りながら給水していくような難しさを感じていました」

 村上が脚光を浴びたのは大学時代に組んだアカペラグループ・A-Z。“アマチュアの最高峰”と称された当時の彼はまさしく歌の好きな青年で、歌うことに特化した存在だった。しかし、プロになったことで新たな壁が立ちはだかる。自分は何を歌えばいいのか? 自分はどんな表現者になりたいのか?

「僕は“自分の音楽”というものに目覚めた時期が遅いんです。曲を書き始めたのも大学生の頃だし。最初は“こんな歌が歌いたいな”って必要に迫られてスタートして、それが2019年以降、本格化していくんです」

 シンガーからシンガーソングライターへの移行。それがこの5年の村上の一番の変化だろう。歌を丁寧に歌うだけの存在から、自分が歌う楽曲は自分で作る全能型ミュージシャンに彼は舵を切った。それと同時にヴォーカリストとしての研鑽も引き続き行なっていく。

「この5年間で間違いなく歌い手として成長していると思います。デビュー時に比べて別物というくらい倍音も出ているし。クリス・ハートさん、平原綾香さん、佐藤竹善さん…たくさんの素晴らしい歌い手に出会って、少しずつ自分の声のポテンシャルを引き出せるようになったんです」
 一方で課題も見えてきた。

「これは僕の長所であり短所でもあるんですけど、どんな曲でもある程度歌いこなせちゃうんです。自分を殺してリクエストに寄せていける。でも、それはシンガーソングライターとして見た場合は問題で。“自分はこれしかできないから、こうなっている”っていうのがシンガーソングライターの理想なのに、僕はある程度のことはできちゃうから“結局、村上くんは何をしたいの?”って思われてしまうこともあるんですよね」

 ヴォーカリストとしての自己を保ちつつ、いかにシンガーソングライターとしての個性を確立させるか…長い模索期間を経て今、彼は音楽に関わるすべてが楽しいという境地に至ったという。

「今はライヴもレコーディングも全部楽しめるようなってきたんです。まさに今、クリス・ハートさんのツアーにコーラスとして参加しているけど、5年前にコーラスを担当した時は“ちゃんと役割を果たさないと!”という重圧でいっぱいだった。だけど、今は自分の中にそれを楽しめるキャパシティも実力もついてきて。自分のやりたい音楽に関しても、その輪郭がちょっとずつ見えてきた5年間だったと思うんです」
 では、村上が見つけたやりたい音楽とはどんなものか? その答えは5周年記念日の翌日にリリースされる配信シングル「なんのために」に表れている。
<vol.2 現在> 「なんのために」という 自問自答の時期を抜け 精神的に開き直ることのできた、 一線を越えた今

 ヴォーカリストとしてデビューした後、ミュージシャンとしての自我に目覚め、新たにシンガーソングライターの道を歩き始めた村上佳佑。彼がやっと見つけた“自分のやりたい音楽”は、デビュー5周年記念日の翌日にリリースされた配信シングル「なんのために」(2022年6月発表)に表れている。

「この曲はコロナ禍のステイホーム期間中、自分自身が不安を感じることがあって書いたんです。歌詞にある《なんのために生きてるのか》と僕も考えるけど、本当はそこまで重要なことではないと思っていて。“僕だって悩むことはあるんだよ“って伝えることで、同じように悩んでる人に少しでも前向きな気持ちになってほしい――そういうメッセージを込めました」

 《なんのために生きてるのか》と問うこの曲の主人公は、“どんな歌を歌えばいいか?”と自問自答し続けた村上自身の姿にも重なる。実際、村上もコロナ禍で思うように活動ができず、苦しい時間を過ごしたという。

「仕事の話も進まず、“自分はこれでミュージシャンと言えるのだろうか?”と疑問に思う時期もあったんです。でも、精神的に追い詰められたことで、逆に今、開き直れたというか」

 闇の先にあった光。迷いと葛藤をくぐり抜け、今の村上が手にしているのは音楽を奏でる歓びだ。

「これまでは自分の作る曲に裏付けがなくて不安だったんです。でもある時、自分の昔書いた曲を聴いて“やっぱいい曲だな”と素直に思えて。周囲の価値観に左右されず、自分がいいと思えばそれがいい曲。それを確かめられて作曲が楽しくなりました」
 歌に関しても成長を実感している。

「ひとつ壁を越えた手応えがあるんです。ゲームでも“このレベルに達するとこのスキルが使える”ってあるじゃないですか(笑)。ほんの数ミリの違いかもしれないけど、僕の中ではコロナ禍の2年間で一線を越えた感覚があって。自分の根幹が定まってそこに自信が持てたことで、今は何をやっても楽しいんです」

 3月にリリースされた「Alright」、そしてこの「なんのために」と村上の色は確実に増している。ネガティブなマインドに陥りがちなこの時代、「意地でも前向きなことを口にしていきたい」というのは彼の表現者としての態度である。

 もうひとつ興味深いのが、この2作の編曲を担当したのが松室政哉だという点だ。松室は村上と同じシンガーソングライターで、デビュー以前からの付き合い。2人とも共に32歳で同級生同士になる。

「日本社会って30代を越えてからが本番っていうところあるじゃないですか。僕自身も30代になって仕事への集中力が増していますし、自由が効くようになって楽しいです!」

 ガムシャラに走ってきた20代を終え、自分の往く道が見えてきた30代。その未来へのとば口に今、村上は立っているのだろう。では彼が見据える未来とはどのようなものか? 続く<vol.3未来>では村上佳佑が描く将来像について迫ることにしよう。
<vol.3 未来> おおらかで博愛の心を持つ “アメリカンボーイ” ナイスガイの歌声は 海の向こうの未来を見据える

「いろんなものが1周どころか3周くらいして、やっと今、音楽のすべての側面を楽しめるようになってきたんです。これから書く曲にはもっと僕らしさを出したいし、その曲を引っ提げてやるライヴもより自分らしさが出たらいいと思います」

 ミュージシャンとしての自己を模索し、デビュー5年目で開けた場所に到達した村上佳佑。そんな彼が目指す未来とはどのようなものだろう?

「音楽を大事にする音楽をやりたいです。個人的趣味としては音数が少なくて、グルーヴが深くて、それでいて軽快、メロディアス、さらに声がいい…とかありますけど、とにかく生々しい音楽。誰が弾いてもいいとかではなく、僕の声じゃないと意味がないし、あのドラマーじゃなきゃダメだよねっていう、プレイヤーの個性がちゃんと生きた音楽をやりたいんです」

 ナンバーワンからオンリーワンへ。こういう言葉を聞くと彼の自分磨きの旅はまだ始まったばかりのように感じられる。では、自身が思う“村上佳佑の音楽”を定義するならば?

「小学校の5年間、アメリカのアトランタに住んでいたことは大きいと思います。英語が話せないと分からないグルーヴ感ってあるし、身体的にもアジア人なのに首が太くて筋肉にバネがある。子供ながらにマイケル・ジャクソンを聴いて“このグルーヴ、心地良いな”って感じていたことがあって。それがアメリカで暮らしたことでさらに血肉化したところはあると思います」
 海外生活の経験のせいか、確かに村上の音楽には特徴的な空気がある。

「僕のやりたい音楽はブラウンアイド・ソウルなんですよ。黒人音楽を白人がやるとカントリー的な爽やかさが加わってブルーアイド・ソウルになるじゃないですか。それが一層ライトになって、モチッと粘った日本人なりのソウルミュージックになった感じというか」

 彼の発言を捕捉すると、村上の個性はもっと微妙なグラデーションの上にあるものだ。日本風にアレンジされたR&Bをブラウンアイド・ソウルと呼ぶのなら、それをもう少し本国寄りにした感じ。J-R&Bの本筋よりはスケールが大きく、包容力があり、どこか乾いている――まるで香水のようにほのかに香り立つ“本場感”こそが彼の音楽の体臭である。

「よく身近な友達から“やっぱ、アメリカンボーイだよね”って言われるんです。例えばディズニーランドで“3時間待っていて”と言われても苦じゃないし(笑)、自由の国で育ったので人は多様性があってしかるべきだと思っているし。そういう性格だから、日本の枠組みに留まりたくないんです。僕は純粋な日本人だけど、それでも世界でこれだけできるんだよってことを欧米やアジアの音楽シーンに提示していきたいです」

 おおらかで博愛の心を持ったアメリカンボーイ。なるほど、そう考えると見えてきた。ナイスガイな村上佳佑の歌声は海の向こうの大きな未来を見据えているのだ。
Text by 清水浩司
配信シングル「なんのために」
2022年6月15日(水)配信

Village U. Records

■配信リンク

https://linkco.re/2yYvFgnq
『Kei’s room vol.9 -Back to Kyoto-』
7/02 京都・someno Kyoto

※Streaming+にて生配信決定!

https://eplus.jp/sf/detail/3646830001-P0030001

詳しくはオフィシャルHPにて。
村上佳佑
ムラカミケイスケ:1989年、静岡県生まれのシンガーソングライター。幼少期に5年間、アメリカのジョージア州アトランタにて生活し、帰国後は静岡県富士市で高校生活を送った後、京都府の立命館大学へ入学。大学時代に出会ったメンバーで、話題を集めたアカペラグループ・A-Z(アズ)を結成。09年にフジテレビの『ハモネプリーグ』で番組史上最高となる99点で優勝し、各所から称賛を得た。11年まで同グループで活動するも大学卒業を機に解散。その後ソロに転じ、本格的に作曲を始める。16年にクリス・ハートの乱読ライヴ、47都道府県ツアーにコーラスとして参加。そして、『NIVEAブランド』の16~17年のCMソング「まもりたい~この両手の中~」にデビュー前のアーティストとしては異例の大抜擢。17年6月にミニアルバム『まもりたい』を発売した。18年11月に自身初となる1stアルバム『Circle』をリリース。21年に3カ月連続で配信シングルを発表し、22年4月に配信シングル「Alright」を発表。同年6月にデビュー5周年を迎え、配信シングル「なんのために」をリリースし、7月に京都での初ワンマンライヴ『Kei’s room vol.9』を開催する。


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