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予想だにしなかった企画というのは、いつも嬉しい驚きがあり、桑田佳祐が自身のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』で発表した新プロジェクトは、瞬く間に話題に上った。桑田佳祐 feat. 佐野元春、世良公則、Char、野口五郎のシングル「時代遅れのRock’n’Roll Band」は、2022年5月21日の夜に告知され5月23日に配信リリースされた。2022年6月1日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では、初登場9位を記録している(【表1】)。
多くの問題を抱える今の社会で、世界中の子供たちの明るい未来と平和を願うという趣旨で作られたチャリティ企画のこの曲は、列記されたビッグ・アーティストが集結。しかも、全員同じ学年だというのが意外で面白い。こういった話題性を盛り込みつつも、グサッと世の中に響く楽曲を生み出す桑田佳祐はさすがといっていいだろう。
チャート動向でユニークなのが、配信リリースであるのに対し、ダウンロードでは堂々たる1位を獲得しているにもかかわらず、ストリーミングでは圏外になっていること。このあたりは、ファン層がサブスクとは縁が薄いということだろうか。配信リリースの場合、比較的両者は連動するパターンが多いのだが、ここまで乖離しているというのは興味深い。その代わり、動画再生数は33位と多少は健闘している。YouTubeで公開された動画は、MVではなく静止画とオーディオのみということもあり、いわばストリーミングの代用といってもいいだろう。できることなら歌詞がわかるリリック・ビデオにすれば、もっとアクセス数を稼げたかもしれない。
また、当然のことながら、ラジオのオンエア回数も圧倒的な1位となっている。話題性を考えるとこの結果は納得だ。Twitterは54位とまずまずの結果で、これはもしかしたら長いタイトルとアーティスト名がネックになったのではないだろうか。チャート対策ということを考えると、もう少しそのあたりは練り直す必要があったはずだ。そうすれば、さらにSNSで拡散されていた可能性も考えられる。
とはいえ、この曲の趣旨はただ単に話題作りをしてヒットをすることではない。あくまでも、深い意味を持ったチャリティ・ソングなのだ。そう考えると、強豪がひしめくチャートの上位に食い込んだことは素晴らしいし、非常に意味のあること。ぜひオールスターの歌声を聴きながら、彼らとともに社会への問題意識を持とうではないか。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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