<ライブレポート>Eveが鳴らした過去、現在、未来――自身初となるホールツアー終幕 「次来るときはもっと大きな舞台で」

2022年5月23日 / 21:00

 Eveの全国ホールツアー【Eve Live Tour 2022 廻人】が、5月23日兵庫・神戸国際会館こくさいホール公演にてツアーファイナルを迎えた。

 彼にとって2年4か月ぶりのライブであり、初のホールツアー【Eve Live Tour 2022 廻人】。同ツアーはニューアルバム『廻人』を引っ提げて開催されたものでありながら、Eveのアーティストとしての人生を廻ることに加え、未来を照らすものになった。このライブレポートではツアー7本目となる東京公演2日目の模様を書き記す。

 舞台に掛けられた斜幕には、開演前からアニメーションがリピートされている。開演時間になるとインスト曲「廻人」をBGMにその物語が進み、とある屋敷の中へと入っていく。ツアータイトルが映し出されると、ステージ上のバンドメンバーが「廻廻奇譚」のイントロを奏で出し、そこにハンドマイクスタイルのEveが現れた。斜幕一面には同曲のタイアップ作品『呪術廻戦』の“呪符”を模した字体で歌詞が次々と映し出され、スリリングな楽曲との相乗効果でまるで自分が封印を掛けられるような錯覚にも陥る。楽曲のクライマックスで幕が取れると、観客たちはEveの登場を拍手で大いに歓迎した。

 ベースソロから「夜は仄か」につないでアンニュイかつアダルティな空気で包むと、焦燥感と幻想性を併せ持つ「遊生夢死」で儚げなファルセットを響かせる。その後はリフレインが効果的な艶やかなミディアムナンバー「YOKU」、雄大なポップナンバー「心海」へ。シリアスなムードに晴れ間が差し込んでいくような、穏やかでポジティブな情景。それは自由へと解き放たれていく心の機微を彷彿とさせた。

 「doublet」をBGMに再び屋敷の映像が流れると、そこには『Smile』の文字が。考えてみると冒頭5曲は『廻人』の楽曲で、『Smile』は彼の前作のフルアルバムのタイトルである。どうやら映像が屋敷の奥に進むのと比例して、セットリストでは彼の作品を遡っているようだ。

 「LEO」で闇の中から必死に訴えかけるような感傷的かつダークな世界へ引き込むと、「闇夜」ではアコースティックギターを奏でながら、悲しみや憂いをなだめるように歌う。「いのちの食べ方」では一転、《退屈な今日を/超えていきたいんだきっと》という心情を真摯に放出。悲しみを受け入れながらも生きていく人間の意志を3曲で体現した。

 スクリーンには『おとぎ』の文字が浮かび上がり、「slumber」をBGMに屋敷の中へと足を進めていく。観客のクラップが鳴り響くなか「トーキョーゲットー」につなげると、「アウトサイダー」、「ラストダンス」と畳みかける。やはり『おとぎ』以前の楽曲はライブでやり込んでいることもあり、Eve本人だけでなく観客も生の感覚が身体に染みついているようだ。Eveの作り出す世界をじっくり味わうセクションから、ここを起点に会場中が一体となりグルーヴを作り上げていった。Eveもクラップを促したり、「いくよ!」と呼び掛けたり、ステージを闊歩しながら歌唱するなど観客と出来得る限りのコミュニケーションを取ってゆく。アコースティックギターを抱えた「君に世界」は、この日を迎えられた喜びがダイレクトに反映された、伸びやかな歌唱だった。

 バンドメンバーのみで演奏する「fanfale」に合わせて、映像内ではこれまでの屋敷の道のりを引き返す描写が広がる。演奏の熱気が上昇していくと『文化』から「ナンセンス文学」と「ドラマツルギー」を披露。こちらの手を取り、閉塞感から軽やかに連れ出してくれるようなエネルギッシュな躍動感が、非常に痛快だった。

 再び映像にスポットが当たると、これまで進んできた道のりが高速で巻き戻ってゆく。映し出されたのは再び屋敷の外。唯一違うのは屋敷が草木にまみれていた、すなわち時間が経過していたことだった。我々はEveと共にEveの過去へと思いを馳せることで、前に進んでいたのだ。『廻人』から「暴徒」を爽快感たっぷりに届けると、ラストは「退屈を再演しないで」。ダンスナンバーに乗せて、一言一言歌詞を噛み締めるように歌う。これがEveなりの、閉塞感や退屈な日常への抵抗なのだろう。日常から逃避するのではなく、傷つきながら、痛みを抱えながらも颯爽と躱しながら前に進んでいく姿、その決意が眩しかった。

 アンコールではまず最新曲「Bubble feat.Uta」を披露し、Eveは「この後の曲をやると終わってしまうのでさみしい」と話しながら自身の思いを語り始めた。不安定な状況下でツアーを回ることに不安があったこと。『Smile』をリリースしてすぐにコロナ禍が訪れ、リリースライブが叶わなかったこと。2年4か月という時間を経て、すべてのアルバムを振り返られて幸せだということ。そして「曲を作り始めてもうすぐ5年経つんですけど、5年前はこんなに大きな会場でライブをするなんて想像もしてなかった。今も夢を見ているような感覚です」と話すと、「まだまだ未熟なんですけど、来てくれるみなさんがいるおかげで僕はここに立てています。今日のライブは僕にとってかけがえのないものになりましたし、次につながる自信にもなりました」と感謝を告げた。

 話を締めくくったかと思いきや、「終わりたくないなあ……」と名残惜しい気持ちを前面に出すEve。後ろ髪を引かれつつ「群青讃歌」を歌い切ると、いたずらっぽく笑いながら「もう1曲やってもいいですか? もう1曲やらせてください! まだ帰りたくないよ!」と申告する。そうして披露されたのは初期曲「お気に召すまま」。しなやかに身体を動かしながら歌う彼は「楽しいよ、ありがとう!」と笑顔を浮かべ、観客も喜びを高らかなクラップで表現した。

 爽やかな表情で彼がステージから立ち去ると「藍才」をBGMにエンドロールが流れた後に追加公演として日本武道館公演2daysが発表された。彼がMC中に発した「次来るときはもっと大きな舞台で、成長して帰ってくる」という言葉はこのことだったのだと腑に落ちる。大舞台を前に全国の観客とともに自分のキャリアを振り返るこのツアーは、彼にとって非常に有意義なものとなっただろう。彼の未来に期待せずにはいられなくなる、そんな1日だった。

Text:沖さやこ
Photo:八尾武志

◎公演情報
【Eve Live Tour 2022 廻人】
2022年5月5日(木・祝)
東京・東京ガーデンシアター
<セットリスト>
00. 廻人 –inst-
01. 廻廻奇譚
02. 夜は仄か
03. 遊生夢死
04. YOKU
05. 心海
06. doublet –inst-
07. LEO
08. 闇夜
09. いのちの食べ方
10. slumber –inst-
11. トーキョーゲットー
12. アウトサイダー
13. ラストダンス
14. 君に世界
15. fanfare –inst-
16. ナンセンス文学
17. ドラマツルギー
18. 暴徒
19. 退屈を再演しないで
En1. Bubble feat.Uta
En2. 群青讃歌
En3. お気に召すまま


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