『Live Life Fast』ロディ・リッチ(Album Review)

2021年12月21日 / 18:00

 2019年12月にリリースしたデビュー・アルバム『プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル』が、同月の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で自身初のNo.1デビューを飾り、R&B/ヒップホップ・アルバム・チャート、ラップ・アルバム・チャートの3冠を達成。アルバムからカットしたシングル「The Box」が、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で計11週、ダベイビー名義のシングル「Rockstar feat.ロディ・リッチ」も7週のNo.1をマークし、昨年大ブレイクを果たしたロディ・リッチ。以降、故ポップ・スモークやガンナ、DJキャレド、ポロ・G、カニエ・ウェストなど、著名アーティストの作品に参加し、世界規模で多くのフォロワーを獲得している。

 出世作の後の作品は、どのアーティストも大きな期待が寄せられる。ロディ・リッチは、わずか23歳でこれだけのヒットを輩出し、【グラミー賞】も受賞。大衆の心を揺さぶることのできる数少ないラッパーだけに、そのプレッシャーも大きくのしかかるワケだが、本作『Live Life Fast』を通じて、その不安が解消された……ファンも少なくないだろう。人目をひく黄色のジャケットを着て黒のロールスロイスで駆け抜ける、カバー・アートに直結した自信とスピード感も耳で潜り抜けることができるハズ。

 6月にリリースした先行シングル「Late at Night」は、ソング・チャート“Hot 100”で最高11位を記録した「Ballin」(2019年)や、前作からのヒット・チューン「High Fashion」で再タッグを組んだDJマスタードとのコラボレーション。この曲も、ソング・チャートで20位、R&B/ヒップホップ・チャートで6位、そしてリズミック・ソング・チャートでは1位のヒットを記録し、アルバムのプロモーションに繋げた。クール&ドープなトラック、ロマンティックな歌詞もさることながら、夜の観覧車から80年代へタイムスリップするミュージック・ビデオが傑作で、故マイケル・ジャクソンの「Thriller」(1982年)をソックリ写した構成・ビジュアルと合わせることで“完成形”となる。同ビデオには、クリス・ブラウンとのゴシップで世間を騒がせたカルエッチ・トランも出演し、話題を呼んだ。

 マスタードの他のゲストも、強力なラインナップ揃い。重いベースラインと磨きのかかったシンセ&スネアを備えた「All Good」にはフューチャーが、弦と笛の音が“和”を連想させるウィージーによるプロデュース曲「Hibachi」には、コダック・ブラックと21サヴェージが調和のとれたリードを取り、シンセサイザーとハイハットが“未来的”なイメージを掴む、ボーイ・ワンダ作の「Paid My Dues」にはミーゴスのテイクオフが、若手らしい“イキった”メッセージをピアノ主体のビートに乗せる「Moved to Miami」にリル・ベイビー、その続編的な「Don’t I」にガンナがそれぞれフィーチャーされてている。中でも、ケニー・ビーツがプロデュースを手掛けた、ファイヴィオ・フォーリンとのタッグ曲「Murda One」は、ゴリゴリのドリルビートで圧倒するヒップホップ・ファン必聴の傑作。

 タイ・ダラー・サイン、そしてアイズレー・ブラザーズを身内にもつ、米LAのR&Bシンガー=アレックス・アイズレーが参加したゴスペル風の「Slow It Down」、同LAのシンガー・ソングライター、ビビ・ブレリーのボーカルを早回しした「Bibi’s Interlude」は、ゲストのパフォーマンス~ソウルを基とした曲調がすばらしく、どちらもインタールード(短尺)なのが非常に惜しい。また、ジャケ写に直結したスピード感ある冷涼ビートと、エコーをきかせたフックがスライドする「No Way」も、アウトロで助言するジェイミー・フォックスの活躍がもう少しあっても……という気がしないでもない。とはいえ、あの声で諭すように喋る30秒間の存在感は何やら凄いモノがあり、流石だ。

 ジャケ写に直結した曲は、その他にもピアノ主導の90年代風アーバン・ヒップホップ「Man Made」や、ボーカル・パートをメインとしたアーバン・メロウ「More Than a Trend」、チャイルディッシュ・ガンビーノにインスピレーションを受けたというハイトーンが特徴的な「Everything You Need」など、アップもメロウも優れていて、キャリアの成功と女性絡みのトピックにもフィットしている。都会的なトラックとロディのボーカルも相性良く、テーマと音がリンクした非常に良くできたアルバムだ。

 全18曲中のTOP5を厳選するなら、以下のタイトル。まず、自身が影響を受けた一曲でもあるリック・ロス&カニエ・ウェストの 「Live Fast, Die Young」(2010年)を使用したビッグ・ショーン風のストリート・アンセム「LLF」。それから、サウスサイドがプロデュースした次曲「Thailand」も、キャリアの成功とその先を見据えたリリック、「The Box」を彷彿させるロートーンなトラック、バイオリンとピアノが奏でるクラシカルなアウトロ、スリリング且つ繊細さを兼ね備えた大傑作。

 低音と高音を使い分けた揺るがすボーカル・ワーク、甲高いフルートとラテン・ギターによるオリエンタルなサウンド、ロッド・ウェーブに似せたフックも特徴的な「Rollercoastin」、ファンキーなチョッパー・ベースにジャジーなピアノ・ライン、古典的なオルガンの演奏を融合した70年代スタイルの「Crash the Party」、そして巧みなラップ・スキルとヒップホップらしい重低音を唸らす最終トラック「25 Million」。この5曲は、前作になかった魅力、意欲、向上心が伺える。「Crash the Party」は、こういった時世を経て築いた「困難な状況の中で見出す希望」、「25 Million」は、リッチなライフスタイルをリアルに“垣間見る”そんな歌詞の世界観もいい。

 トップ(ラップ)スターとして、どういう思想をもって、どう進展していきたいのか、そんな内情も綴っている本作『Live Life Fast』。全体的には落ち着いたトーンで、時に時速を上げ、時に下げ……とギアを切り替えるスタイルは、まさにタイトルそのもので、作品(音楽)を通じてエキサイティングなドライブに我々を連れて行ってくれる。ロディ・リッチの新しいフィールドは如何なものか?前作ほどの大ヒットには至らずとも、確実に成長が伺えるそのビジョンが見えてくるのではないだろうか。

Text: 本家 一成


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