<ライブレポート>山崎育三郎、初のフルオーケストラ公演5都市全8公演を完走

2021年9月8日 / 15:00

 ミュージカル界のプリンス山崎育三郎。2021年のコンサートツアーは、待望のフルオーケストラとのコラボレーションが実現した。9月3日、東京芸術劇場 コンサートホールで開催された千穐楽の模様をレポートしよう。

 秋めく9月初旬の夜、東京芸術劇場 コンサートホールは熱気にあふれていた。<SFIDA~挑戦>と銘打たれた2021年の山崎育三郎によるコンサートツアー千穐楽。オーケストラとのコラボレーションは、日本を代表する実力派、新日本フィルハーモニー交響楽団、そして、指揮に栗田博文という超豪華版だ。

 ステージ幕開けを告げる序曲は、ミュージカル・ナンバーのメドレー形式。第一部のセットリストは、山崎のミュージカル人生を振り返る内容になっており、この冒頭のメドレーも、山崎が子役時代に出演した『フラワー』のメロディから始まり、『モーツァルト!』の「影を逃がれて」まで、山崎が経験した主な演目のヒットナンバー7曲がオーケストラのみで演奏された。

 序曲が鳴りやむと、山崎が颯爽と登場。スタイリッシュな黒のフロックコートと赤のジレのビビッドなコントラストが何ともカッコいい。そのまま、『モーツァルト!』から「僕こそ音楽」を熱唱。オクターブのファルセットも完璧に決め、1曲目から万雷の拍手で迎えられる。続いて、『レディ・べス』から1曲と、『プリシラ』から2曲を披露。「俺は流れ者」 (『レディ・べス』)では、愛に、旅に生きる流れ者の自由奔放さをダイナミックに表現し、甘く、柔らかな歌声が会場を包み込んだ。

 ここで山崎によるトーク。ツアー千穐楽の当夜、会場には13台のカメラが入っており、10月30日午後7時からTBSチャンネル1(CS放送)で当ファイナル公演の模様が放映決定をアナウンス。満場の客席を沸かせた。続いて「スペシャルな自慢話」 (本人談) を独特の漫談風で一席。偶然にも、本日の演奏会場のある池袋は、山崎にとって音楽大学時代を過ごした想い出の場所だ。在学中、19歳でミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディションに参加し、2万人の中から5次審査をクリアして待望のマリウス役をつかみ取ったのだという。山崎のミュージカル人生を象徴するようなワンシーンの一人語り。実際のストーリーながら、見事なまでにドラマを感じさせてくれた。

 『レ・ミゼラブル』から「カフェ・ソング」と「彼を帰して」の2曲。その秀逸な歌唱から、この作品が山崎のキャリアにとって、いかに切っても切り離せないかけがえのないものであるかが強く伝わってきた。発する一つひとつの美しい言葉の響きもまた、聴き手の心を揺り動かしてやまない。

 指揮者とピアニスト(宗本康兵)の紹介を挟んで 『アラジン』から「ホール・ニュー・ワールド」と「フレンド・ライク・ミー」の2曲。チャールストン調の2曲目で見せた洒脱なリズム感や、自然な身体の動きの俊敏さと洗練はさすがだ。フルオーケストラのダイナミックな音にも負けない熱量とオーラが全身にあふれていた。

 続いて、「子供の頃から憧れていた」という『ミス・サイゴン』から「SUN AND MOON」と「WHY GOD, WHY?」。そして 『エリザベート』から 最後のダンスの3曲を続けて。真摯に歌い上げた『ミス・サイゴン』の2曲では、艶のある瑞々しい歌声が印象的だった。そして、『エリザベート』のナンバーでは、少し危険な香りを漂わせる音楽を、大胆に、そして、セクシーに聴かせた。

 第二部は、NHK朝ドラ俳優としてのキャリア、そして、全国高等学校野球選手権大会の開会式での熱唱や新たなニューシングルリリースなど、近年の山崎の活動の多彩さや新たなチャレンジの軌跡が感じられる構成になっていた。序曲の後に、まずは自身の楽曲「Congratulations」。フルオーケストラバージョンとの共演となると、お馴染みのナンバーもまた一味違う。ノリに乗った山崎と会場が一体となって手拍子で盛り上げる。最後は指揮の栗田からタクト(指揮棒)を譲られ、山崎自らがオーケストラを指揮してのゴージャスなエンディング。

 会場が一つになったところで、山崎が「心打たれた」という、さだまさしの名曲「いのちの理由」。そして、再び「ひそかな夢」(『美女と野獣』)のミュージカル・ナンバー2曲を熱唱した。ロマンティックなメロディは山崎の真骨頂。ディズニーらしい、共感を呼ぶ真摯なリリシズム(抒情性)もまた聴き手の心を揺さぶる。

 次なるナンバーは、あの甲子園球場を沸かせた「栄冠は君に輝く」。NHKの朝ドラ『エール』出演がきっかけとなり、高校野球開会式でこの大会歌をアカペラ(無伴奏)で歌うことになった経緯を語る山崎。当夜はオケバージョンで全三番を堂々と歌い上げた。一流のオーケストラと指揮者、一流の編曲者、そして、一流の歌い手というすべてのプレーヤーたちの情熱が一つのステージに実現したことで、伝統とともに受け継がれてきたこの歌と詞に新たな価値を見出した人々も多いことだろう。

 第二部最後の楽曲は、2021年8月11日にリリースされたニューシングルのタイトルソング「誰が為」。コロナ禍で甲子園に出られなかった球児たちとの出会いをきっかけに生まれた “頑張るすべての若者” へのエールソングだ。山崎は、自らも野球少年だった頃の想い出、つねに支えてくれた母や父のぬくもりや姿を感じながらこの曲を描いたという。情熱を持って立ち向かう若者たちに輝く未来を謳う詞は、どの世代の心にも強く響いたことだろう。山崎はこのラストソングにすべての希望を込めて力強く歌い上げ、2時間半にわたるコンサートを、そして3か月にわたるツアーのプログラムを美しく締めくくった。

 鳴り止まぬ拍手とともに、再び山崎がステージに登場し「Wonderland」を熱唱。客席も手拍子で一体になり、高揚感も最高潮に。山崎も小気味良い軽快なリズムと自然な身体の動きで喜びを表現し、客席の熱い想いに応えていた。そのリズム感の冴えと洗練されたダンサーのような美しい動きに、最後の最後まで並外れた舞台人のオーラが精彩を放っていた。

 歌い終えると、コロナ禍での長期コンサートツアーの完走に、客席に向かって心からの感謝を述べる山崎。アンコール2曲目は、バラード調のオリジナル楽曲「君に伝えたいこと」。バックステージのスクリーンには、全国から寄せられた“会いたいけれど会えない大切な人”の膨大な枚数の写真をコラージュしたイメージが投影された。「あなたの一番大切な人を思い浮かべながら聴いて欲しい」という思いを込めて、山崎は切なくも、希望に満ちた心の襞 (ひだ) を繊細に歌い上げた。

 最後に「これからも、僕のすべてであるこのようなステージをやり続けていきます。皆さん、どうか身体だけはお気を付けて。また笑顔でお会いしましょう!」と、爽やかなエール。全客席がスタディングオベーションで惜しみない拍手を贈っていた。

 山崎育三郎という希代のエンターテイナーの人生が凝縮された華麗な一夜。コロナ禍の今だからこそ、心に響く歌と言葉の力が、どれほど私たちの心に寄り添い、明日への勇気と希望を与えてくれるかを改めて感じさせてくれた。

Text by 朝岡久美子
Photo by 成瀬正規
 

◎ツアー情報
【billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2021 -SFIDA-】
(1)2021年6月15日(火)東京・Bunkamuraオーチャードホール
(2)2021年7月4日(日)名古屋・愛知県芸術劇場 大ホール
(3)2021年7月8日(木)福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
(4)2021年8月7日(土)西宮・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
(5)2021年8月8日(日)西宮・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
(6)2021年8月19日(木)札幌・札幌文化芸術劇場 hitaru
(7)2021年9月2日(木)東京・東京芸術劇場 コンサートホール
(8)2021年9月3日(金)東京・東京芸術劇場 コンサートホール

出演: 山崎育三郎
指揮・管弦楽:
(1)栗田博文/東京フィルハーモニー交響楽団 
(2)田中祐子/京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
(3)田中祐子/九州交響楽団 
(4)(5)太田弦/日本センチュリー交響楽団
(6)田中祐子/ビルボードクラシックスオーケストラ 
(7)(8)栗田博文/新日本フィルハーモニー交響楽団

◎番組情報
『billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2021 -SFIDA-(仮)』
【収録】2021年9月3日(金)東京芸術劇場 コンサートホール
【放送】2021年10月30日(土)午後7時~午後9時(TBSチャンネル1)
放送局:TBSチャンネル1
出演:山崎育三郎/【指揮】栗田博文/新日本フィルハーモニー交響楽団
番組内容:山崎育三郎、初のフルオーケストラコンサートをテレビ初独占放送。ツアーファイナルを飾った2021年9月3日開催の東京公演を、必見のスペシャルインタビュー付きで届ける。


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