多様な世界観を歌い分ける、suis(ヨルシカ)が持つ声の魅力とは

2021年6月11日 / 10:00

 ヨルシカが「春泥棒」以来約5ヶ月ぶりとなる新曲「又三郎」(ドコモdアニメストアのCMソング)を配信リリースした。

 「又三郎」は宮沢賢治の小説『風の又三郎』をモチーフに制作した一曲。現代社会の閉塞感を力強い歌声で吹き飛ばす、疾走感溢れるロックチューンだ。ヨルシカといえば、ボカロPとして活動するコンポーザーのn-buna(ナブナ)による緻密に練り上げられた歌詞世界や、独特のテーマ性を持った作品パッケージが魅力として語られることが多い。確かに、昨年発売のアルバム『盗作』における批評性や、『エルマ』や『だから僕は音楽を辞めた』といった作品で見せた物語性を持ったコンセプチュアルな構成は、ヨルシカ特有の個性があって惹きつけられるものがある。しかし、今回注目したいのはボーカルを担当するsuis(スイ)の“声”である。n-bunaの創り上げた世界観を感情たっぷりに表現するsuisの歌声も、ヨルシカの魅力のまた一つと言えるのではないか。

 たとえば先日、ディズニー・ピクサー映画『あの夏のルカ』の日本版エンドソングとして、suisが井上陽水の「少年時代」をカバーした。夏の終わりをノスタルジックに描いたこの名曲と、suisの透き通る歌声が見事に調和。綺麗な息遣いの発声も印象的だ。強く歌い叫ぶ「又三郎」とはまるで別人のように、聴き手に優しく寄り添うように歌いかけている。井上陽水の楽曲は、以前にもトリビュートアルバム『井上陽水トリビュート』でカバーしていて、その際には「Make-up Shadow」を大人っぽく、しかしどこか儚さも感じさせながらしなやかに歌っていた。アーティストごと、というよりは、しっかりと楽曲によって変化させているようだ。疾走感のある「又三郎」には声を荒げて叫ぶように、ゆったりとしたノスタルジックな「少年時代」には優しく、怪しげなムード漂う「Make-up Shadow」には大人っぽく、それぞれ歌い分けている。

 彼女のこうした表現力が活かされているのは音楽だけではない。最近はその声の美しさを活かし、音楽以外のフィールドでも活躍している。suisは先日、三井住友銀行の設立20周年を記念したCMでナレーションを担当した。

https://youtu.be/SPPJV30vebE

 このCMにおけるsuisの声からは、誠実さや前向きさ、自信といったものが伝わってくる。ヨルシカで見せているものとはまた違った一面だ。いかに信頼できるかを伝えるかが重要なこの役目に、彼女の声が完全にフィットしているように思う。

 そもそも、n-bunaがsuisに惹かれた理由も、彼女の声質が大きいという。

 「ヨルシカのボーカルとして一緒にやっていこうと思えた大きな理由は、声質ですね。僕はロックもポップスも、いろいろなジャンルを雑多に聴いてきた人間なんですけど、それゆえに作りたい曲の方向性もたくさんあるんです。だから、ロックでもちゃんと映えて、かつバラードや浮遊感のある音楽にも対応できるような、ちょっとハスキー成分のある歌声の方を探していて。そこにちょうど当てはまる声質だし、しかも歌がうまい。「この人だ!」と思ってお願いしました」(https://natalie.mu/music/pp/yorushika

 多様なジャンルの音楽を歌いこなせて、かつハスキーな要素を持った歌声。声質という点では少々低めで透明感がある。そして、彼女の歌い方で最も特徴的なのは、言葉をはっきりと発音している点だろう。最近はJ-POPでもリズムが複雑化していて、日本語を英語的に滑らかに歌ってみたり、複数の文字を強引に同じ拍子に当てはめてみたりなど、アーティストによって様々な工夫が見られるが、なかには一聴して聞き取れないほど発音を崩して歌う者もいる。それはある面で画期的ではあるが、同時に難解と言えなくもない。

 suisは、普段の話し言葉に近いアクセントか、それよりも少しアクセントを強めたセリフ口調くらいの明瞭さで歌う。もちろん、n-bunaが作る曲自体がそう歌えるように出来ているわけだが、そこに感情を乗せ、語尾までちゃんと発音することで、言葉一つ一つに力が篭っている。だから彼女のボーカルは、初めて曲を聴いた人でも誰でも歌詞を理解できるほど、聞き取りやすい。言葉がストレートに耳に届く声だと感じる。それを考えれば、CMのナレーションに彼女が抜擢された理由も頷けるだろう。

 また先日、Apple Musicのラジオ番組『J-Pop Now Radio』にヨルシカがゲスト出演した際に、suisは自身のボーカルについてこんなことを話していた。

 「女優というとおこがましい響きになっちゃうんですけど、でもその役に入り込んで、役の気持ちになって歌うっていう意味では“演じる”っていうのは近いものがあって。(中略)歌を録った後に熱出したりとかあったくらい」

 さらに別のラジオ番組では、以下のようなことも口にしている。

 「出来上がった音源が自分好みになるように、自分が聴いた時に、とにかく嬉しい歌になるようにっていうことを意識して。当たり前かもしれないんですけど、歌い分けるっていうのは自分の声に飽きないようにするっていうのもあるので」(https://www.tfm.co.jp/lock/staff/index.php?itemid=16192

 時には熱が出るほど役に入り込み、自分の声に飽きないように作品ごとに演じ分けることで、人々に新鮮な感動を与える。簡単に聞こえるかもしれないが、努力と技術が必要とされるのは間違いない。そして何より、一曲一曲に真摯に向き合っていることがうかがえる。だからこそ我々も、ヨルシカの音楽に感動させられ、何度も聴き入ってしまうのだろう。

Text:荻原梓

◎リリース情報
ヨルシカ「又三郎」
2021/6/7 RELEASE
https://youtu.be/siNFnlqtd8M

デジタル・シングル「又三郎」
https://lnk.to/mtsbr  

「又三郎」特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/yorushika/matasaburou/

suis from ヨルシカ 
デジタル・シングル「少年時代(あの夏のルカver.)」
https://umj.lnk.to/Shonenjidai_Luca 


 


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