松川ケイスケ(LACCO TOWER)- Key Person 第14回 –

2021年5月20日 / 10:00

松川ケイスケ(LACCO TOWER) (okmusic UP's)

自分たちをカッコ良く見せられるのは 自分たちしかいない

J-ROCK&POPの礎を築き、今なおシーンを牽引し続けているアーティストにスポットを当てる企画『Key Person』。第14回目は2002年の結成から来年で20周年を迎えるLACCO TOWERの松川ケイスケ(Vo)。長年バンドをセルフプロデュースする中で自分が強くこだわっている部分と、それでも“周りの人に育てられた”と語る真意に迫った。
“カッコつけすぎてる”と 引っかかってた部分を突かれた

──2001年に結成した前身バンドを経て、02年7月に渋谷CYCLONEでLACCO TOWERとしての初ライヴが行なわれましたが、当時はどんなお気持ちだったのでしょうか?
「その結成日までにいろいろあったので、僕らは普通に集まって渋谷CYCLONEでライヴをしたわけではないんですよね。もともと前身バンドの時に韓国でデビューすることが決まっていたんですけど、バンドではなくアイドルっぽい売り出し方に少し疑問を感じていて。それを経て、お世話になっていたライヴハウスの店長さんをはじめ、周りの方の力を借りて、なんとか初ライヴの日を迎えたから、“ようやくライヴができる”って気持ちでした。」
──うまくいかなかった時に、メンバーがバラバラになったりもぜす?
「やっぱりバンドをやりたかったんですよ。別に当時の事務所のやり方も間違ってはいないと思うんですけど、その出来事があったことでメンバーは一致団結してました。相手がイメージしていることと、自分たちがやりたいことの温度差をどうやって解消するかっていうところで、弱気になるというより“やってやるぜ!”って感じのほうが強かったと思います。」
──その翌年の03年に初企画を行なった高崎club FLEEZは、LACCO TOWERにとって思い入れの深いライヴハウスのひとつだと思うのですが、何か印象的なエピソードはありますか?
「今は高崎にありますけど、当時は前橋にあったんですね。その初企画以降に何回かイベントをやって、初めてチケットがソールドした時は本当に嬉しかったです。バンドとしてもそれが初めてのソールドだったんじゃないかな? 高崎に移転したあとも思い出があって…演奏中にバッタが飛んできたこと(笑)、先輩方と対バンしたのもそうだし、思い出のひとつひとつにFLEEZが入ってます。」
──結成時からライヴハウスとのつながりは大事だったと思うんですけど、特に背中を押してもらった人はいましたか?
「仙台の長町にあるLIVE STUDIO RIPPLEに僕らの2、3個年上の店長がいるんですけど、初めてのツアーでライヴをした時に“お前らは明日解散すると思ってライヴをやってない”と言われたのをずっと覚えてます。普段は本当にちゃらんぽらんな人なんですけど(笑)、“だから、解散ライヴをするバンドには勝てないし、いいライヴができないんだ”と言われて、“明日解散するわけじゃなくても、来ているお客さんにとってはそれで終わりかもしれないし、一回一回の出会いはそこでしかないから、それくらいの気持ちでやらないといけない”って思い直しました。あとは、音楽仲間で後輩なんですけど、back numberを2年くらいツアーに連れて行った時、清水依与吏に急に呼び出されて“ケイスケさんはカッコつけすぎてる”って夜に説教をされたことがありました。あいつも酔っぱらってたんですけど、それもすごく記憶にありますね。」
──後輩なんですよね?(笑)
「はい。今考えてもどついたらなあかんって思いますけど(笑)。そのふたつの言葉は誰かが言ってくれそうで誰も言ってくれなかったことだったので、すごく心に残ってます。」
──松川さん自身も気を張ってた時期だったのでしょうか?
「そうですね。どう魅せるかっていう部分でも気を張ってたし、自分の中でも引っかかってた部分を突かれたので響いたんだと思います。」
──LACCO TOWERの歴史をおうかがいする上で、13年に塩崎啓示(Ba)さんが代表取締役となって株式会社アイロックスを設立したことも重要な出来事だと思うのですが、そこにはどんな決意があったのでしょうか?
「もともとDIYが染みついていたバンドではあったので、社会的にも認められるようなかたちでやっていこうっていうのが一番大きかったから、全然違うステージに行こうとしたっていうより、暑いからクーラーの温度を下げるみたいな感じでしたね(笑)。やるならちゃんとやるかって。啓示をリーダーに指名したのは僕なんですけど、彼の人柄もあって周りの反対もなかったです。」
──自分たちに合ったバンドのスタイルを見つけていく中で、松川さん自身が先ほどの気を張っていた状態から変わっていった感覚はありました?
「毎日変わっている気がするんですよ。思い返してみても“ここで変わった”というのがなくて、本当に徐々に変化してます。昨日は正しいと思ってやったことが今日は違う気がしたり、“ここがターニングポイントだ”って言えるほど自分が成長できてないのかもしれないですね。ただ、作詞家としてターニングポイントになったのは「薄紅」(2016年2月発表のシングル)で。リリースしてからですけど、書き方やアプローチの仕方が変わったというか。「薄紅」の歌詞は30分くらいで書いたんですよ。それまでは歌詞を書く前に軽く小説みたいなものを書いていて、“先に小説を書いてるから歌詞にしても大丈夫だ”っていう安心感が自分の中にあったんですけど、いきなり歌詞から書いたんです。その違いが僕の中では結構大きくて、初めて降りてきた感覚があったのが「薄紅」なのかなと。」
──「薄紅」はアニメ『ドラゴンボール超』のエンディングテーマですが、もともとは「奇々怪々」がエンディングになる予定で先に出来上がっていたことも関係あるんですかね。
「「奇々怪々」はもっとテクニカルで、ベジータの台詞を歌詞に入れていたりしてたんですよ。それがあったからなのか、「薄紅」はすごくスラスラ書けましたね。」
──ちなみにLACCO TOWERの楽曲タイトルを漢字にこだわっている理由は?
「これは完全に僕が漢字フェチだからです(笑)。最近気がついたんですけど、活字が好きなんですよね。歌詞を書く時はいつもパソコンなんですけど、自分で書く字よりも活字で出てくるところが好きで、明朝体を見るとホッとするんです。“檸檬”なんて見ただけで堪らないので、ちょっと変態なんですよ(笑)。」
──画数が多いほうがいいんですか?
「いや、そういうわけでもなくて。語感というか、漢字の並びですかね。僕らの曲って果物のタイトルの曲が多いんですけど、あえてタイトルにしていない果物もいっぱいあるんですよ。漢字的にハマるものとなると違うんですよね。“無花果”なんてそれっぽいんですけど、何か違ってて。まぁ、ただの活字中毒です(笑)。」
LACCO TOWERの活動が ひとつの生き方になったら

──2014年に“故郷の群馬でロックフェスを開催すること”を旨にイベント『I ROCKS』を立ち上げ、群馬音楽センターでのback numberとの2マンから始まり、2019年には4日間連日開催、21年はコロナ禍でも群馬・伊勢崎市文化会館でワンマンを含む5日間公演を開催されましたが、改めて『I ROCKS』への想いをお聞きしたいです。
「今の僕が思う『I ROCKS』は、club FLEEZで初めて企画をやった時に一番コアにあった“好きなバンドを呼んで、みんなで楽しもう”っていう気持ちと変わらないんですよ。その時々の状況や年齢も絡み合って、来てくれる方や協力してくれる方が意味をつけてくれるんだと思います。やっている側として考える濃度や時間は年々変わっていますが、根本にあることは同じですね。」
──『I ROCKS』含め、LACCO TOWERがこだわってきたことのひとつに“セルフプロデュース”があると思いますが、そこにこだわる理由は何ですか?
「こだわったって言うと聞こえがいいんですけど、たぶん“自分たちをカッコ良く見せられるのは自分たちしかいない”ってどこかで意固地になってたんですよね(笑)。それって、猛烈な自信と、猛烈な無知識が備わっていたからこそ、そう思えていたんじゃないかなと。今では仲間のバンドがやっていることや、音楽に触れたり、年齢を重ねていく中で、改めていろんなものを取り入れることの大切さも感じてます。でも、一周回った今でも“自分たちのことは自分たちが一番よく見せられる”って思ってるところはありますね。前ほど“こうじゃなきゃいけない”という感じではないんですけど、例えば“自分にはこの髪型が似合う”ってあるじゃないですか。でも、美容室に行ったら意外と“これもいいかも!?”ってなる感覚もある。だけど、そのために美容室に行くことをそんなに大事には思ってないというか。」
──言葉にするとそのLACCO TOWERのスタイルは孤高のバンドのように聞こえるかもしれませんが、『I ROCKS』でたくさんのバンドとライヴを作り上げていることもあって、LACCO TOWERに対して一匹狼なイメージはまったくないです。ご自身ではLACCO TOWERをどんなバンドだと思ってますか?
「面白いバンドだなって思います。いよいよ結成20周年を迎えて、こんなに素直なバンドは珍しい気がするし、まだ伸びしろがあるように感じるのもすごいことだと思いますね。孤高なバンドって、たぶん男の子として憧れていた部分はあるんですけど、それになれなかった僕らの弱さというか(笑)。よく言えば、そのへんの可愛らしさもあって変なバンドだなと。“〇〇っぽいな”っていうのがあまりないので、LACCO TOWERの活動がひとつの生き方になったらいいなと思います。」
──孤高になれなかった弱さというより、いい意味で頑固すぎなかったのではないですか?
「全然頑固じゃないですね! いや、頑固なのかな?(笑) 自覚はないんですけど、周りから見たら頑固なバンドかもしれないです。自分の中に譲れない部分があるというか、何をするにしても“どういう意味合いを持ってそのことをやるのか?”にはこだわりがあると思います。その行動が合っているかどうかではなく、どんな想いがあってやったのかをちゃんと答えられるかどうかに。」
──21年3月にリリースしたアルバム『闇夜に烏、雪に鷺』がベスト盤ではなく、“黒白極撰曲集”であることもそうですよね。
「そうですね。そういう“なぜこれをするのか?”という部分ではメンバーとも喧嘩します(笑)。決まる時にフワッとしてても、そこにもちゃんと想いがあるはずだから話したいっていう面倒くさい性格ではありますね。」
──ひとつひとつの行動に対する意思をしっかり確認している中で、LACCO TOWERがメジャーシーンで音楽活動をしていくことをどう受け止めていますか?
「メジャーとインディーの違いというより、気の合う仲間や一緒にやってて楽しい人たちがメジャーにいたというか。バンド活動でいろんな人と巡り会ってきたけど、最初から腹の中まで見せることはできないし、仕事上の話であればそんなことは起こり得ないのかもしれない。それでも“この人を喜ばせたい”と思える人であるかどうかが僕の中ですごく大事で、その喜ばせたい人たちと一緒にやっていける環境がたまたまメジャーだったのかなと。結果論ですけど、そう思います。バンドにとっても大きい出来事で、“メジャーデビューしたぜ!”みたいな若い気持ちもありましたけどね。」
──バンド結成時から自分の気持ちだけでなく、周りの人との意思疎通もすごく大事にされていますよね。
「そうですね。所詮は楽器しかできない5人っていうのもあるので、人の支えがないと何もできないし。このコロナ禍の中、自分ができないことをやってくれる人が周りにいるのはすごく幸せなことだなって感じました。自分たちでは分からないこと、気づかないことを与えてくれたり、今までに意思疎通ができなかった人もいましたけど、それでも周りの人に育てられたと思っています。」
──そんな今までの活動も振り返って、松川さんのキーパーソンとなる人物はどなたですか?
「音楽面で言うと、僕はTULIPが好きなので財津和夫さんなんですよ。歌詞を書くというルーツを作ってくれた人なので。でも、生き方だったり、大事なタイミングで思い出すことがあるのは依与吏かもしれないですね。最前線で活動し続けていて、“だからこそ”って思ってる僕らもいるし、自分の気持ちを奮い立たせてくれたり、当時言われたことが心に残っているっていうのもあるし。10年振りくらいに会った時、白い服にワインをこぼされましたけどね。後輩だから2発分どついたらなあかんと思うんですけど(笑)。んー、あいつをキーパーソンにするのはちょっとしゃくやな…。」
──あははは。ちなみに他にも思い浮かんでる方は?
「一回バンドを辞めようと思った時に助けてくれたSUPER BEAVERの渋谷龍太だったり…あと、同い年でいつも悩みを聞いてくれるのが中田裕二で。まぁ、やっぱりあいつのおかげで頑張ってこれてるところもあるので、キーパーソンはback numberの清水依与吏ですね。」
取材:千々和香苗
LACCO TOWER
ラッコタワー:日本語の美しさを叙情的リリックで表現し、どこか懐かしく切なくさせるメロディー、またその世界とは裏腹な激情的ライヴパフォーマンスで、自ら“狂想演奏家”と名乗り活動。自身主催のロックフェス『I ROCKS』を2014年から開催している。復活したレーベル『TRIAD』と契約し、15年6月にアルバム『非幸福論』でメジャーデビューを果たし、20年に5周年を迎えた。現在まで、フルアルバム5枚、ミニアルバム1枚、シングル1枚をリリースしている。


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