『#これくる2021』にランクインした新世代ユニット“空白ごっこ”とは? アグレッシブなバンドサウンドと求心力抜群のボーカルに注目<コラム>

2021年1月15日 / 18:00

 音楽ストリーミングサービス「AWA」が、1月12日に『#これくる2021』の結果を発表した。『#これくる2021』は、2020年12月22日から2021年1月4日までの期間において、ユーザーが2021年にブレイクしそうなアーティストの楽曲を集めて公開したプレイリストの内容を集計し、2021年にユーザーが注目するアーティストのランキングとして発表する企画だ。

 1位は、昨年『第62回輝く!日本レコード大賞』にて「新人賞」を受賞した現役大学生ラッパー・Rin音。甘く切なくほろ苦い歌詞がTikTokユーザーから共感のバブルを生んだ「snow jam」は、現在では、ストリーミング累計1億回再生超え。2位は、動画共有サイトにオリジナル楽曲、カバー楽曲をアップし続けたことが後の「東京フラッシュ」のヒットに繋がったVaundy。見ての通り、ランキングにはネットを活躍の場とするアーティストが勢揃い。そして本稿では、10位へとランクインした空白ごっこについて触れたい。

◎『#これくる2021』トップ10
1位:Rin音
2位:Vaundy
3位:藤井風
4位:マカロニえんぴつ
5位:ずっと真夜中でいいのに。
6位:NEE
7位:優里
8位:yama
9位:緑黄色社会
10位:空白ごっこ

 空白ごっこは2019年12月29日、動画共有サイトに公開した「なつ」をスターティングポイントとして彗星のごとく現れた3人組音楽ユニットだ。ボーカルは、セツコ、コンポーザーは、数々のボーカロイドヒット作を生み出してきたkoyori、針原翼。2020年1月に「リルビィ」、3月に「雨」、4月に「だぶんにんげん」を立て続けに公開したのち、7月29日に、ダウンロード&サブスクリプション先行で1stEP『A little bit』を、10月21日にCD版『A little bit』をリリース。気になる“空白ごっこ”という浮遊感のあるユニット名に込められているのは、何もないけど(空白)/何かある(ごっこ)。喪失感と遊び心のふたつを感じさせるユニット名といえる。

 ユニットが結成したのは、セツコがSNSで公開していた針原の楽曲のカバーをたまたま針原が聴いたことから。『A little bit』の収録曲「ピカロ」が、電子マンガ・ノベルサービスピッコマ『暴君には悪女がお似合い』篇のCMソング、「雨」が、フジテレビ系バラエティ番組『突然ですが占ってもいいですか?』の挿入曲に起用されるなど、メディアからも関心を集めている。そして、12月29日に配信シングル「キザな要素が足りない」「リスクマネジメント(リアレンジVer.)」をリリースした。

 空白ごっこがどんなバンドなのかは、2021年1月1日に動画共有サイトにて、ミュージックビデオが公開された最新曲の「運命開花」を見れば明らか。耳に刺さるアグレッシブなバンドサウンドに負けることのない歌声の圧倒的な破壊力。これが、空白ごっこの歌そのものの生命力だ。藻掻きながらも、自身の群青な運命を自分で切り拓いていく強さをエモーショナルに歌い上げるセツコ。自然と発する嗚咽のような声が、アウトロ前の〈鼻啜り涙を拭き空を見上げろ〉と重なって、リアリティを増す。求心力抜群のボーカルである。

 koyori、針原によるギターロックを主軸としたフックのあるダークなナンバーはもちろん、空白ごっこは、とりわけ、このセツコの歌声が与えるインパクトが強い。まず、セツコにはソングライティングの資質がある。『A little bit』に収録された初のオリジナル楽曲「選り好みセンス」では、浮遊感のある独特なリズムを用い、類稀なる才幹を開花させた。それから「運命開花」にも繋がるダイナミズムある歌声表現の一部としての裂けるようなブレスが果たしている役割も大きい。空白ごっこの楽曲は、「だぶんにんげん」のサビ冒頭の〈お前は〉の次にコードという配置であることをはじめとして、声を生かす曲作りになっていることもあり、よりセツコの歌声がダイレクトに刺さってくる。

 さらに、言葉を貼り付けたようなコンテンポラリーな歌詞に散りばめられているギミックも、空白ごっこの楽曲に彩りを添える重要なファクター。koyori作詞作曲の、気になる君と繋がりたいと歌う「リルビィ」の〈くりんくりんくしたい〉は、りんく=リンク=繋がりを指していたり、セツコによる作詞曲「ピカロ」の〈 「謾ッ驟阪@たい 驕ク縺ー繧後縺たい」〉は、復元すると「支配したい 選ばれたい」になっていたりする。

 新星ユニットが次々と出現するなかでの2021年、音楽シーンへニューウェーブを吹き込む空白ごっこの快進撃はこれからやってくる。

Text:小町碧音


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