<ライブレポート>和楽器バンド 全国に光照らす新年の舞い【大新年会2021】

2021年1月6日 / 21:05

 和楽器バンドが2021年1月3日・4日に恒例の新年ライブ【大新年会2021 日本武道館2days ~アマノイワト~】を開催した。本レポートは2日目の模様をお伝えする。

 ツアー・タイトルのアマノイワトは、あまり聞きなじみのない言葉であるが、漢字で書くと「天岩戸」で、『天岩戸神話』に登場する岩でできた洞窟を意味する。その昔、太陽の神である天照大神(あまてらすおおみかみ)は田を荒らす弟・須佐之男命(すさのおのみこと)に怒り、天の岩戸に隠れる。陽が上らない世界は暗闇に覆われ、草木や作物が育たなくなってしまう。なんとかして天照を外に出そうと考えた八百万の神々は岩戸の前で舞う。天照は明るく騒がしい外の気配が気になり、外の様子を見ようと岩戸を少し開けた途端、力の神・手力男命(たぢからおのみこと)が岩戸を開け、天照を外へ連れ出すことに成功。その後、世の中が再び明るくなり、平和な暮らしに戻ったという。

 新型コロナウイルスにより、どこか閉塞的なまま新年を迎えた2021年。この神話と昨今の状況を重ねるように、今年の【大新年会】は暗闇を吹き飛ばす盛大な舞いが繰り広げられた。スタートを切ったのは、ライブ終盤がお決まりだった「千本桜」。桜の花びらの紙吹雪が大量に吹き飛び、まるで「このままコロナなんて吹き飛ばしてやる!」と意思表示しているようだった。「reload dead」、「反撃の刃」と、序盤から和楽器バンドらしい激情ロックで攻め、勢いよく開く襖や『鬼滅の刃』の無限城を思わせるような古風な館を高速で進むような映像と鼓動が共鳴した。

 この日、和楽器バンドの2021年8大トピックスの1つとして、4月放送のTVアニメ『MARS RED』のオープニングテーマに新曲「生命のアリア」が起用されることが発表され、楽曲初披露の場にもなった。白と黒と真紅で統一された新調された衣装は大正レトロを存分に感じさせ、大正時代を舞台に、対ヴァンパイア機関・第十六特務隊(通称:零機関)の活躍を描くスリル溢れる作品の世界観が具現化されていた(刺繍や革素材など高級感と重厚感が溢れるデザインで、個人的にもとても惹かれるルックスだ)。ライブ終演後には、アニメの世界に入り込んだような、怪しげな雰囲気のMVも会場限定で一足早く公開された。

 その新しいコスチュームに身を包み、和楽器バンドはこれまで通りのパワフルでかつ心洗われるパフォーマンスで新年をスタートさせたわけだが、今のこのコロナ情勢に合わせるように、キャパ50%以下の有観客&オンライン生配信という、新しいライブの楽しみ方・臨み方を昨年夏から続けている。マナーを守って会場に行くファンも、お家で参加するファンも、それぞれの選択が正しく、また、それぞれが楽しめるショーを展開していることも事実だ。MCでは終始、目の前の観客はもちろん、画面越しのオーディエンスを気にかけており、動画や写真撮影のSNS投稿の呼びかけ、ハリセンを使った参加型コーナー(オンライン参加の場合は手拍子)など、今だからこそできる・楽しめる方法を十二分に提供してくれているのだ。

 この日一番のド派手さを放った祝賀ムード満開の「あっぱれが正義。」に続き、「細雪」から「IZANA」で本編は幕を下ろした。「IZANA」は、昨年8月に開催された【真夏の大新年会2020 天球の架け橋】のスタートナンバーだ。その公演が筆者にとって新型コロナウイルス感染拡大以降、初めて現地参加した有観客ライブで、コロナ禍におけるライブ興行が緊迫していた時期であったこと、そして曲の背景が当時の状況にリンクすることから、その出だしのパートを強く覚えている。

 【真夏の大新年会】の幕を開けたこの曲が今回、本編ラストに選ばれていることに色んな思いが巡る。鈴華ゆう子(Vo.)が自然災害といった運命に抗えずに起こる別れ・苦しみから、人々を癒やすことを願って書いたこの曲は2019年12月に発表されたものだが、その頃はまだ、コロナの存在など微塵も感じていなかった。その数か月後にはライブ自粛モードに入り、一時は落ち着きを見せたかにも思えたコロナが、遺憾にもぶり返している今、意図せずして繋がる曲になっている。その曲をラストに持ってきたことで、エンタメ業界、そして日本・世界に元気を与えるべく活動する彼らが、同時に癒しも忘れずに提供していることが感じられた。

 事前に世界中のファンから集められた動画とともに送る「暁ノ糸」で幕を開けたアンコールでは、手を合わせながら町屋(Gt. & Vo.)、黒流(和太鼓)、神永大輔(尺八)が登場。そして、それぞれの音色に呼応するように他メンバーも登場し、徐々に重なっていく。同曲の冒頭では藤野君山の「宝船」が吟じられ(大海原のかなたから、宝と書かれた帆を上げた宝船がやってくる。その船には安らかな笑みを浮かべた七福神が同乗している、という内容)、ファンの歌声に合わせて、和楽器バンドの新年に向けた希望とパフォーマンスが届けられた。最後はコロナ禍で山葵(Dr.)が「いつの日か一緒に歌えることを信じて」作った「Singin’ for …」でお別れ。バックに吊られたライトが、大きな鳥へと姿を変え、羽を広げて飛んでいく様から、2021年も大きく羽ばたいていくという彼らの意思を受け取った。

 デビュー“8”周年を迎えた和楽器バンド“8”名による“8”回目の【大新年会】。2時間を超えるライブはあっという間に終わってしまったが、8名が放つ音のパワーで心がチャージされた。これから発表されていく8大トピックスの残りの内容がすでに楽しみである。和楽器バンドの2021年に注目だ。

Text by Mariko Ikitake
Photos by KEIKO TANABE、上溝恭香 / Kyoka Uemizo

◎【大新年会2021 日本武道館2days ~アマノイワト~】セットリスト
※2021年1月4日(月)公演
0. Overture~アマノイワト~
1. 千本桜
2. reload dead
3. 反撃の刃
4. 華火
5. オキノタユウ
6. 起死回生
7. 日輪
8. 生命のアリア
9. 月下美人
10. Episode.0(町屋・黒流・亜沙)
11. Wagakki & EDM Session -春の海 Remix-(蜷川べに・いぶくろ聖志・神永大輔・黒流・鈴華ゆう子)
12. スペシャルメドレー2021(チルドレンレコード~Perfect Blue~World domination~花一匁~Ignite~月・影・舞・華~虹色蝶々~星月夜)
13. ドラム和太鼓バトル~登攀猛打~(山葵 vs 黒流)
14. あっぱれが正義。
15. 細雪
16. IZANA
<ENCORE>
17. 暁ノ糸
18. Singin’ for…


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