【米ビルボード 2020年間アルバム・チャート】ポスト・マローン『ハリウッズ・ブリーディング』首位、リル・ベイビー/ロディ・リッチが続く

2020年12月4日 / 08:00

 2020年の年間ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”は、ポスト・マローンの『ハリウッズ・ブリーディング』が1位に輝いた。
 
 2019年9月6日にリリースされた『ハリウッズ・ブリーディング』は、9月21、28日、10月5日、11月2日付チャートの計4週首位を獲得して、年間チャートでは発売わずか3か月で9位にランクイン。以降、2020年度も上位をキープして滞在週は60週を突破、集計期間終了の11月末時点でも17位にランクインするロング・ヒットを記録した。
 
 年間チャートの功績を振り返ると、1stアルバム『ストーニー』が2017年の年間7位、翌2018年は8位に2年連続でランクインし、2ndアルバム『ビアボングズ&ベントレーズ』も2018年の年間3位、2019年は5位と、いずれも2年連続のTOP10入りを果たした。そして本作『ハリウッズ・ブリーディング』も、昨年の年間9位に続き、今年は自身初の年間1位を獲得。デビュー・アルバムから3作が2年連続で年間TOP10入りするという、歴代初の大快挙を達成した。その『ストーニー』は、今年の年間チャートで45位、『ビアボングズ&ベントレーズ』は23位に粘り強くランクインしている。
 
 本作『ハリウッズ・ブリーディング』からは、2019年の年間ソング・チャート“Hot 100”で「サンフラワーwithスウェイ・リー」が2位、「Wow.」が5位を獲得し、今年の年間チャートでは「サークルズ」が2位にランクインした。アルバム・チャートに続き、ソング・チャートでも4年連続で年間TOP10入りするという歴代初の記録を達成している。
 
 続いて年間2位には、リル・ベイビーの『マイ・ターン』が自身初の年間TOP10入りを果たした。本作は、2020年3月14日にNo.1デビューした後、5月1日に6曲を追加したデラックス・エディションをリリースして再浮上し、6月20日から7月11日付チャートの4週トップを独占して通算5週の1位を記録した。主にストリーミングの強いヒップホップ・アーティストだが、今年は発売後に新曲を追加したデラックス盤をリリースして、再浮上を狙う戦略が主流となった。年間TOP10にランクインしている10作中、7作がデラックス・エディションを再発している。
 
 一方、年間3位にランクインしたロディ・リッチの『プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル』は、同様の手法を用いずヒットに繋いだ。首位獲得は2019年12月21日、2020年1月18日、2月8日、2月22日付チャートの計4週で、集計期間終了まで100位内に50週ランクインし続けた。ラッパーのデビュー・アルバムとしては、2003年に50セントが『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』で記録した6週に次ぐ首位獲得記録となる。本作からは、「ザ・ボックス」がソング・チャート“Hot 100”で2020年度最長の11週No.1をマークし、年間チャートでは3位にランクインする大ヒットを記録した。
 
 ヒップホップ・アーティストが年間アルバム・チャートTOP3を独占するのは歴代初で、首位獲得はケンドリック・ラマーが『ダム』で記録した2017年以来3年ぶりとなる。ラップ勢には及ばなかったが、年間4位にはポップ・シンガーのハリー・スタイルズ、5位にはテイラー・スウィフトがそれぞれランクインした。
 
 ハリー・スタイルズの『ファイン・ライン』は、2019年12月28日から2020年1月4日付チャートの2週1位を獲得して、集計期間終了まで49週間TOP20にランクインするロング・ヒットを記録した。本作からは、「アドア・ユー」が6位、「ウォータメロン・シュガー」が自身初のソング・チャート1位を獲得し、アルバムのプロモーションとストリーミング上昇に繋げている。前作『ハリー・スタイルズ』は週間チャートで同1位を記録しているが、年間チャートでは2017年の39位が最高位で、TOP10入りは初の快挙。
 
 なお、ワン・ダイレクションのスタジオ・アルバムは、デビュー作『アップ・オール・ナイト』が2012年の5位、2ndアルバム『テイク・ミー・ホーム』が2013年の3位、3rdアルバム『ミッドナイト・メモリーズ 』が2014年の4位、4thアルバム『フォー』が2015年の10位、5thアルバム『メイド・イン・ザ・A.M.』が2016年の8位に、5作すべてのアルバムが年間TOP10入りしているが、脱退したゼイン・マリク含むメンバーのソロ・アルバムとしては初のランクインとなる。
 
 テイラー・スウィフトの『フォークロア』は、今年最大の週間ユニット846,000を記録したデビュー週8月8日から9月12日付チャートまで、6週間トップを独占した後、10月3日、10月31日付チャートと2度の返り咲きを果たし、通算8週のNo.1をマークした。アルバム・チャートでは本作の8週が今年の首位最長記録で、セールスも今年リリースされた作品の中で唯一のミリオンを達成。2020年の週間アルバム・ストリーミングとしても、女性アーティストとしては最大の2億8,985万再生を記録している。累計セールスが100万枚を突破した理由としては、小売店や公式ウェブサイトで販売されたサイン付きのCD、LPの売り上げや、デラックス盤の再リリース等が挙げられる。
 
 テイラー・スウィフトは、デビュー作『テイラー・スウィフト』が2008年の年間5位、2ndアルバム『フィアレス』が2009年の1位、3rdアルバム『スピーク・ナウ』が2011年の2位、4thアルバム『レッド』が2013年の2位、5thアルバム『1989』が2015年の1位、6thアルバム『レピュテーション』が2017年の1位、そして前作『ラヴァー』は昨年の4位にランクインし、これまでリリースした全てのスタジオ・アルバムを年間チャートでTOP5入りさせている。『ラヴァー』は年度をまたぎ今年の年間チャートでも15位にランクインしているが、本作『フォークロア』もリリースがもう少し早い時期であれば、TOP3入りしていた可能性が高い。
 
 続いて年間6位にランクインしたのは、リル・ウージー・ヴァートの『エターナル・アテイク』。2020年3月21日と28日付チャートの2週間首位をキープして、期間終了までTOP40に36週ランクインするロングランを記録した。本作は、3月6日にオリジナル、翌13日には14曲を追加したデラックス・エディションを発表し、初週3月21日付チャートで4億420万回、28日付チャートでは3億4,872万回の高ストリーミングを記録している。週間チャートでは、デビュー作『Luv Is Rage 2』(2017年)に続く2作連続の首位獲得で、年間チャートでのTOP10入りは初の快挙。前作『Luv Is Rage 2』は2018年の16位にランクインしたが、惜しくもTOP10には届かなかった。先行シングル「Futsal Shuffle 2020」も、リード曲としては自己最高位となる5位を記録している。
 
 7位はポップ・スモークの『シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン』が、9位にはジュース・ワールドの『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』がそれぞれランクインし、年間TOP10に故人のアルバムが2作並んだ。亡くなったアーティストの遺作(オリジナル・アルバム)が年間TOP10に2作同時ランクインするのは歴代初。
 
 『シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン』は7月18日付チャートで1位に初登場し、約3か月間TOP4をキープして、10月24日付チャートで首位復帰を果たした。11月最終週の時点で5位に滞在していることから、来年の年間チャートでも上位ランクインが見込める。ジュース・ワールドの『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』も、後を追うように翌7月25日付チャートでNo.1デビューして、以降19週間TOP10に滞在し続けている。9月5日、9月12日付チャートではその2作が2位、3位に連続チャートインすることもあった。死後、ベスト盤が上位に再浮上することはあっても、オリジナル・アルバムがヒットし続けるというのは珍しい。ジュース・ワールドは、生前リリースしたデビュー作『グッドバイ&グッド・リダンス』も、年間18位にランクインさせている。
 
 『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』は、初登場した7月25日付チャートに2020年度最大の週間ストリーミング4億2,263万回を打ち出した。2番目に高かったのが、前述にあるリル・ウージー・ヴァートの『エターナル・アテイク』(3月21日 / 4億420万回)、3番目もリル・ウージー・ヴァートの『エターナル・アテイク』(3月28日 / 3億4,872万回)。
 
 両アルバムを挟んで、年間8位にはザ・ウィークエンドの『アフター・アワーズ』がランクイン。本作は、初登場の4月4日から25日付チャートまで計4週1位をキープして、期間終了まで35週TOP30に滞在した。本作も、3曲を追加したデラックス盤と、シングルのリミックスを収録したEPを発売後にリリースして、セールス、ストリーミングを上昇させている。デラックス盤の効果もあるが、上位をキープした最大の理由は年間ソング・チャートで1位を記録した「ブラインディング・ライツ」のモンスター・ヒットが大きい。ザ・ウィークエンドの年間TOP10入りは、2016年の2ndアルバム『ビューティー・ビハインド・ザ・マッドネス』(9位)、2017年リリースの3rdアルバム『スターボーイ』(3位)に続く3作目。
 
 カントリー界からは、ルーク・コムズの『ホワット・ユー・シー・イズ・ホワット・ユー・ゲット』が10位に唯一ランクインし、自身初の年間TOP10入りを果たした。初登場は首位にデビューした2019年11月23日付チャートで、以降50週以上ランクインした後、10月23日にリリースされたデラックス盤の効果を受けて、2020年11月7日付チャートで1年越しに首位復帰した。ルーク・コムズの強みはストリーミングで、1位に返り咲いた11月7日付チャートでは、カントリー・アーティストとして最大の週間ストリーミング1億226万回を記録して、歴代最多を更新した。22位には、昨年の年間チャートで11位を記録したデビュー・アルバム『ディス・ワンズ・フォー・ユー』もランクインしている。
 
 上位にランクインしたアーティストをみると、ラップ系のアーティストが独占している印象を受けるが 、TOP10以下には11位に昨年の年間チャートを制したビリー・アイリッシュの『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』が続き、『ハミルトン』のブロードウェイ・オリジナル・キャスト盤が12位、『アナと雪の女王2』が13位とサウンドトラックが連続ランクイン。ラテン・シンガーのバッド・バニーが15位、女性R&Bシンガーのサマー・ウォーカーが17位、K-POPグループのBTSが20位にグループ初の年間TOP20入りする等、バラエティに富んだ面々がランクインしている。21位にランクインしたエミネムの『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』や、クイーンのベスト盤『グレイテスト・ヒッツ』(25位)など、ベテラン勢も奮闘。一方で、上位ランクインが期待されたジャスティン・ビーバーの『チェンジズ』(26位)や、ドレイクの『ダーク・レーン・デモ・テープス』(28位)は、いずれもTOP20入りを逃がし、伸び悩んだ印象を受ける。
 
 今年は、新型コロナウイルスの影響によりライブやメディアの露出等が自粛されたが、SpotifyやApple Musicなどのストリーミング・サービス、YouTubeの動画視聴回数は上昇した。続くコロナ禍で2021年がどういった世の中になるのかは予測できないが、引き続きストリーミングやSNSがヒットの鍵となるだろう。

Text:本家一成

◎【Billboard 200】2020年年間チャートTOP10
1位『ハリウッズ・ブリーディング』ポスト・マローン
2位『マイ・ターン』リル・ベイビー
3位『プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル』ロディ・リッチ
4位『ファイン・ライン』ハリー・スタイルズ
5位『フォークロア』テイラー・スウィフト
6位『エターナル・アテイク』リル・ウージー・ヴァート
7位『シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン』ポップ・スモーク
8位『アフター・アワーズ』ザ・ウィークエンド
9位『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』ジュース・ワールド
10位『ホワット・ユー・シー・イズ・ホワット・ユー・ゲット』 ルーク・コムズ


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