<ライブレポート>結成20周年のいきものがかり、約4時間の配信イベント開催「観てくれている人がいると思うだけで違うものだね」

2020年9月21日 / 18:00

 今年結成20周年を迎えたいきものがかりが9月19日、自ら主催する配信ライブイベント【いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! ~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~】を行なった。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、4月から予定していた全国ツアー【いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2020 ~結成20周年だよ!! WE DO!!!~】が全公演延期となってしまった彼ら。さらに、9月から開始予定だった全国アリーナツアー【いきものまつり2020 ~結成20周年だよ!! お祝いしまSHOW!!!~】も全公演が中止に。今回のイベントは、そのアリーナツアーの初日公演が予定されていた日に合わせて開催されたものである。アニバーサリーを楽しみにしていたファンに向けて、感謝の気持ちを「今できる形で」届けたいというバンドとスタッフの思いから実現に至った。いきものがかりと同じく、今年開局20周年を迎えたBSフジの協力のもと、無観客のフジテレビ・スタジオが会場に。ゲストには、進行を務めるモノマネ芸人・Mr.シャチホコをはじめ、Creepy Nutsや緑黄色野菜、どぶろっく、森山直太朗ら、いきものがかりと親交のある豪華な顔ぶれが並んだ。

 和田アキ子に扮したMr.シャチホコの呼び込みで、いきものがかりの吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)、山下穂尊(G, Harmonica)が登場。イベントの趣旨を説明した後、まずはトップバッターであるCreepy Nutsの演奏がスタートした。ターンテーブルを置くためのブース以外、セットも派手な照明もないシンプルなスタジオで、R-指定とDJ 松永の2人だけがパフォーマンスをする潔さ。新曲「ヘルレイザー」から始まり、「よふかしのうた」「合法的トビ方ノススメ」など代表曲を次々と繰り出していく。緩急自在かつエモーショナルなR-指定のフロウと、華麗なDJ 松永のターンテーブルさばきによって、イベントは初っ端からヒートアップ。途中のMCではR-指定が、「俺たちが学生の頃にブチかましていた人たちが、今もブチかまし続けているなんて凄い」といきものがかりに賛辞を送り、DJ松永も「ずっとかまし続けていると、20周年なんて感じさせないんだね」と、彼らしい表現で同意した。

 続いて登場したのは緑黄色社会。まずはTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』のエンディングテーマにもなった「Shout Baby」でスタート。振り絞るように歌う長屋晴子(Vo, G)の情熱的なボーカル、ソリッドでエッジの効いた小林壱誓のギター、メロディックかつグルーヴィーな穴見真吾のベース、そして軽やかに舞うpeppeのピアノが有機的に混じり合い、縦横無尽のアンサンブルを生み出していく。その後も、自粛期間中に作曲したという切なくもポップな「夏を生きる」、高揚感たっぷりのアップチューン「sabotage」、軽やかなホーンセクションとソウルフルな長屋の歌が心躍る「Mela!」など次々と披露。メンバー全員が揃い音を合わせることを、心から喜んでいる様子がPC越しにも伝わってくるようだ。「音楽に興味を持つようになったきっかけが、いきものがかりの歌でした」と、その熱い思いを語り、最後はバラード「想い人」でこの日のライブを締めくくった。

 森慎太郎と江口直人によるお笑いコンビ、どぶろっくが「オトコの身勝手な妄想」をコミカルに歌い上げた後は、森山直太朗によるパフォーマンス。控え室と思しき場所で、ソファに座り「あなたがそうまで言うのなら」「レスター」をアコギの弾き語りで披露する。歌の合間にはノートパソコンでコメント欄をチェックし、視聴者からの気になったコメントを読み上げるなど和やかな雰囲気に包まれた。その後、場所を移動しピアニストとともに、「夏の終わり」「どこもかしこも駐車場」を歌う。さらに、ステージ袖で見守っていた吉岡を呼び込み「さくら」をデュエット。美しいハーモニーを響かせた。吉岡は大学時代、声楽を習うもスランプに陥り、あるとき森山の歌う「生きとし生けるもの」に衝撃を受け、再び歌う気力を取り戻したことがあるという。その時のエピソードを本人から明かされた森山が、照れ臭そうにおどけるという微笑ましい一幕もあった。

 ゆず、秦基博、Superfly、上白石萌音らバンドにゆかりのある人々からの、バンド結成20周年と吉岡の結婚への祝福コメントが流れた後は、Mr.シャチホコがMr.Childrenや桑田佳祐、玉置浩司らの「歌マネ」を披露。歌う前にMr.シャチホコは、「ここからの時間は真剣に観ないようにお願いします」などとアナウンスしていたが、その「完成度」の高さは舌を巻くほどだった。

 路上ライブを行なっていた結成当初から現在までを振り返るVTRを流し、いよいよいきものがかりの登場だ。プロデューサー / アレンジャーの本間昭光(Key)を筆頭に、安達貴史(Ba)、林部直樹(Gt)、玉田豊夢(Dr)ら強力なサポート・メンバーとともに登場した3人は、アップテンポなナンバー「笑ってたいんだ」からライブをスタート。ステージ狭しと走り回る吉岡は有観客ライブさながらのテンションで、歌詞の中の“一歩!”というフレーズを、PCの向こう側にいる視聴者へ一緒に歌うよう呼びかける。畳み掛けるように「キミがいる」を繰り出し、心弾むようなモータウンビートに観ているこちらの体も自然と動き出す。気づけば「アイデンティティ」の後半のコーラスを、メンバーたちと共にシンガロングしている自分がいた。

 UKロックへの憧憬を思わせるヘヴィ・チューン「コイスルオトメ」は、ライブのたびにアレンジを変えながら演奏してきた、本人たちにとっても思い入れのある楽曲だ。本来はアリーナツアーで披露するはずだった新アレンジを、この日ようやく奏でられるとあってメンバー全員が嬉しそうだった。「配信ライブ、どんな感じになるのか不安だったけど、観てくれている人がいると思うだけで違うものだね」と、演奏後の水野が興奮気味に話していたのも印象的だった。そこへ、再び森山直太朗がアコギを抱えてステージに登場し、「帰りたくなったよ」を一緒に演奏。パワフルな吉岡の歌声と、透明感のある森山の歌声が絶妙なコントラストを描いていた。

 ライブは後半戦へ。「ブルーバード」で再び気分を上げたところで今度は緑黄色社会の長屋晴子が再登場。「気まぐれロマンティック」を吉岡とともに熱唱した。さすが、いきものがかりで音楽に目覚めたというだけあって、メンバー全員でジャンプしながら心から楽しそうに歌う姿を観ているうちに、こちらも幸せな気持ちになった。長谷を送り出すと、最後はいきものがかり+バンドのみで「YELL」を演奏しライブ本編は終了。アンコールでは、この特別な日を記念してインディーズ時代の楽曲「からくり」(これまでライブでも一度しか演奏したことがないレア曲)を披露。続けて最新曲「きらきらにひかる」と、ライブのアンセム・ナンバーである「じょいふる」を披露し、およそ4時間にわたる配信イベントに幕を下ろした。

 誰もが一度は聴いたことのある楽曲を次々と生み出し、人柄も含めて多くの人たちから20年にもわたって愛され続けてきたいきものがかり。本日のイベントは、そんな3人の魅力がひしひしと伝わってくるものだった。

Text by 黒田隆憲

◎公演情報
【いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! ~リモートでモットお祝いしまSHOW!!!~】
2020年9月19日(土)

<セットリスト>
・Creepy Nuts
M1. ヘルレイザー
M2. よふかしのうた
M3. 合法的トビ方ノススメ
M4. サントラ
M5. 月に遠吠え
M6. かつて天才だった俺たちへ

・緑黄色社会
M1. Shout Baby
M2. 始まりの歌
M3. 夏を生きる
M4. sabotage
M5. Mela!
M6. 想い人

・森山直太朗
M1. あなたがそうまで言うのなら
M2. レスター
M3. 夏の終わり
M4. どこもかしこも駐車場
M5. さくら
M6. 最悪な春

・いきものがかり
M1. 笑ってたいんだ
M2. キミがいる
M3. アイデンティティ
M4. コイスルオトメ
M5. 帰りたくなったよ
M6. ブルーバード
M7. 気まぐれロマンティック
M8. YELL
EC1. からくり
EC2. きらきらにひかる
EC3. じょいふる

◎番組情報
BSフジ『BSいきものがかり DIGITAL FES 2020』
2020年10月18日(日)22:00~24:30


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