秋山黄色、アーティストとしての覚醒を伝えたドキュメントのような配信ライブ

2020年8月30日 / 16:00

 秋山黄色の配信ライブのオフィシャル・ライブレポートが到着した。

 秋山黄色が初の有料配信ライブ【秋山黄色「一鬼一遊」】を開催した。

 今年3月に1stフルアルバム『From DROPOUT』をリリースし、初の東名阪ツアーを行う予定だった秋山黄色。開催中止となったツアーの最終日に行われたライブは、アーティストとして目覚ましく覚醒しつつあるその姿を生々しく伝えるものだった。

 映像は、階段を登りステージに向かう秋山黄色の後ろ姿を追う場面からスタート。場所は渋谷クラブクアトロ。ツアーで立つはずだった場所だ。気だるげなカッティング・ギターから始まった「chills?」からライブはスタート。画面には開演を待っていたファンたちのコメントがライブチャットに高速で流れる。白いTシャツ姿の秋山黄色を中心に、サポートメンバーの井手上誠(g)、神崎峻(b)、片山タカズミ(dr)を従えた4人編成だ。

 さらには変則的なアンサンブルからエネルギッシュなサビへとなだれ込む「Caffeine」、そして「クラッカー・シャドー」、「夕暮れに映して」と続ける。そのパフォーマンスには、思わず惹きつけられるような“緩急”が宿っている。たとえば「クラッカー・シャドー」曲後半の〈明日になったら変わるかな〉と歌う箇所でふっとバンドが演奏を止めアカペラになるような引き算のポイントが見せ場になっている。その瞬間をドラマティックに切り取る照明やカメラワークも印象的だ。

 「ありがとう!」と一言告げると、続いては新曲「月と太陽だけ」を披露。四つ打ちのダンスビートとうねるベースに乗せて2本のギターが掛け合うフックの強い一曲だ。ライブチャットには「え?」「新曲ですか?」と戸惑う声が流れ、それが徐々に驚きと興奮の声に変わっていく。さらに、演奏の途中で秋山はギターを置き、ステージを降りてライブハウスのフロアに向かい、カメラがそれを追う。臨場感たっぷりの展開だ。

 そのまま秋山はフロアの階段に腰掛け、アコースティック・ギターを抱えて「ドロシー」を弾き語りで披露。歌声が持つ熱量をストレートに伝えるような演奏だ。歌い終えると、アコースティック・ギターでフレーズを爪弾き、ボディを叩いてリズムを奏でる。その音にバンドが徐々に合わせ、フリーセッションへ。バーの冷蔵庫から自分でドリンクを出して飲んだりと、かなり自由な動きを見せつつステージに戻った秋山を加えた4人のバンドは、ファンキーなギターのカッティングから徐々に熱量を上げ、激しいインタープレイの応酬に向かう。

 そこから一瞬の間を置き、アカペラの歌声から始まった「モノローグ」は、この日のハイライトとなるような瞬間だった。ダイナミックなアンサンブル、畳み掛けるようなメロディ、分厚いハーモニーも含めて、ソングライターとしての秋山黄色の進化を感じさせる一曲だ。

 息もつかせぬまま、ステージはさらにダイナミックな展開の後半へ。喉から絞り出すような叫びに転じた「やさぐれカイドー」、井手上と神崎が何度も飛び跳ね、秋山も髪を振り乱しパンキッシュなテンションで駆け抜けた「猿上がりシティーポップ」を経て、ようやくこの日初めてのMC。

 「僕からしてみたら、こんなところが自分のお客さんで埋まるようになったんだということで、ものすごく感慨深いんですけど、いないというわけで――」と、秋山は語る。本来ならこのツアーで満員の渋谷クラブクアトロのフロアを前にステージに立っていたはずで、コロナ禍を受けてしょうがないこととは言え、会えないことへのやるせない思いもあったはずだ。

 「待ってくれる人がいるし、正直、僕も歌いたい。おそらく死ぬまでやめないので、絶対また会えるので、今はディスプレイ越しで我慢してほしいんですけれど、いつもと変わりなく全力で歌います」そう告げて、ラストは「エニーワン・ノスタルジー」。オレンジ色の照明にてらされ、〈いつまでも〉と繰り返し歌う。「また会おうぜ」と告げて、ギターを持ちステージを降りた。

 「アンコール!」というコメントがチャットに並ぶ中、再びステージに現れた秋山は再びバーカウンターに向かい、「これはAPOLLO BASEのぶん、これは大阪Shangri-Laのぶん」とツアーで行くはずだった名古屋と大阪のライブハウスの名をあげながらチューハイ2缶を手にする。

 「必ず、あなたの街まで行きますので」と告げてプレイした「スライムライフ」から、「正真正銘、ラストです。最後まで楽しんでいこうぜ!」と「ガッデム」。身体に残るエネルギーを全部出しつくすようなパフォーマンスだ。ステージを降りるとコメント欄には「ありがとう!!!」という言葉が並び、配信ライブは終了。

 次こそは、リアルの場所で。そう思えるステージだった。彼が立つ現在地を鮮やかに切り取った、ドキュメントのようなオンラインライブだった。

TEXT:柴那典
PHOTO:鈴木友莉

◎セットリスト
【秋山黄色「一鬼一遊」】
01. chills?
02. Caffeine
03. クラッカー・シャドー
04. 夕暮れに映して
05. 月と太陽だけ
06. ドロシー(弾き語り)
07. モノローグ
08. やさぐれカイドー
09. 猿上がりシティーポップ
10. エニーワン・ノスタルジー
EN. スライムライフ
EN2. ガッデム


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