【INTERVIEW:Kobore】そこで見たものしか話せないし、聞いたものしか歌えない

2020年8月19日 / 12:00

Kobore:佐藤 赳 (okmusic UP's)

動画配信サービス『GYAO』、ストリーミングサービス『AWA』のフォローアップのもと、日本工学院専門学校の学生がアーティストインタビューを行う、ネクストブレイクアーティストをプッシュするコラボレーション企画『G-NEXT』。
今回の選出アーティストは、8月5日にメジャーデビューアルバム『風景になって』をリリースしたkobore。結成から5年、ライブバンドとして走り続け、満を持してメジャーの世界へ踏み出していくkoboreがこのアルバムで見せてくれる風景とは? そして、この状況下に於いてもライブバンドとしての姿勢を貫き通す、ツアー決行への熱い思いについて佐藤赳(Gt、Vo)に訊いた。
ふと思い出してくれるくらいでいい

ーーまず、メジャーデビューが決まった時の率直な感想を教えてください。

「…嬉しいです(笑)。ただメンバーもそれぞれ話してるけど、メジャーデビューだ!ってすごい感じはなくて。親とか友達からいっぱい連絡来るとか、そういうことばっかりですね。だから、まだ実感がないっていうのが一番大きいです。リリースしてから色んなところで言われてようやく浸透していくのかなっていう雰囲気は感じてます」

ーーアルバムでのデビューとなりますが、タイトル『風景になって』は、どういう思いでつけられたのですか?

「自分の作る曲が聴いてくれている人の風景になればいいなと思い、このタイトルを付けました。ただ『風景になって』というタイトル自体はアルバムを作る前から決まっていたので、このタイトルに曲をかぶせていった感じです。前作が『零になって』というタイトルだったんですけど、そのアルバムを引き継ぐように付けました。koboreはCDに色々な関連性を持たせるのが好きなので」

ーーkoboreとして印象に残っている風景は何かありますか?

「ライブを沢山やっているので、ライブですかね。でも、お客さんが居ない、まばらで少ない感じのほうが印象には残ってますね。地方とか行くとそういう風景がよくあって、くやしい!って気持ちになるから」

ーーでは、楽曲についてお聞きしますが、まず1曲目の「FULLTEN」ですが、この曲はメジャーデビューが決まってから作られたものでしょうか?

「そうですね。元々、こういう曲が作りたかったです。1曲目はショートチューンでプロローグみたいな曲にしたかったんですよね。歌詞はメジャーデビューが決まってからできた曲ではあるんですけど、自分たちに向けてメッセージを書いた曲というか、“こういう感じで歌っていくんで、よろしくお願いします!” みたいな1曲目だと思っています」

ーー MUSIC VIDEOは最初から最後までスタジオでの演奏シーンになっていましたね。これはメンバーの意見があってのものでしょうか?

「アルバムタイトルが『風景になって』ということで、白バックのほうが観てくれる人が風景を想像しやすいのかなと思って、“白バックにしてほしい!”って言って、あの背景になりました。koboreがどういうところで演奏したら似合うのかとか、そういういうところまで想像してもらえたら嬉しいです」

ーー歌詞中で メジャーでもインディーズでも自分たちは変わらないということを綴っていますが、そう考えるようになったきっかけはありますか?

「うーん…、そもそも音楽っていう存在はお金とかじゃないと僕は思ってるし、自分の憧れているバンドがそうであったように、自分もそうなりたいなって。あと、今までに歌った曲の歌詞を見て、やっぱり音楽は音楽として見るべきなんだなと思いましたね」

ーー変わらないと思う中でも、結成当初と現在を比べて成長していると思える部分はありますか?

「技術面においては、みんな意識は高まったと思います。僕はスタジオとか練習が嫌いなんですが、他の3人はライブが無い日とかオフの日とかは絶対スタジオに入るって決めて練習してるんです。その辺のスキル面やライブツアーもほかのバンドには何も言われたくないって思っているので、メンタル面はかなり向上できたんじゃないかなと」
ーー続いて「HAPPY SONG」についてなんですが、歌詞の“サニーデイ”“レイニーデイ”が英語ではなくカタカナ表記なのは何かしらの理由がありますか?

「あんまり英語が好きじゃなくて、今までは英語のタイトルをつけたことがなかったんですけど、今作はいくつか入っていてkoboreにとっては新しいんですよね。でも歌詞は別ですね。ここはあえてというか、見栄えの良さを意識してカタカナにしてます。カタカナがめちゃくちゃ好きなので、カクカクしててかっこいいなと(笑)」

ーー「イヤホンの奥から」は週刊誌やSNSで他人を叩くことに対して歌われていますが、これはご自身の経験からですか?

「これは、このコロナ禍を通じて書いてみようと思った曲です。自分がSNSをやめた理由を歌詞に起こしてみたらこういう感じになりました」

ーー歌詞中に《イヤホンの奥から 俺がなんだってひっくり返してやる / ぶっ壊してやる》とありますが、誰かが悩んでいる時にkoboreの曲を聴いてほしいと思ったりしますか?

「…全部聴いてほしい(笑)。でも、悩んでるから、悲しんでるから僕らの曲を聴いてくれって感じではなくて、ふと思い出してくれるくらいでいいんですよね。実際悲しくなったら、その人がその時に好きだと思った音楽を聴くのがいいんだと思います」

ーー「夜に捕まえて」もですが、koboreは夜をテーマにした曲が多い印象を受けます。楽曲制作の仕方との関係や意図するものがあるのでしょうか?

「特に僕らが夜を歌うバンドだって言っているわけではなくて、そういう感じになっちゃってるんだなって。みんなが言ってて、僕は改めて口コミの面白さとか怖さを感じましたね。でも、夜をテーマにした曲が多いっていう理由を1つ挙げるとすれば、単純に夜に歌詞を書くことが多いからですかね。帰りの機材車の中で書いてたりするので(笑)」

ーーそういうことなんですね。あと、「当たり前の日々に」ですが、この曲を聴いて“伝えられるうちに想いを伝えておかなければ”という使命感や祈りのようなものを感じたのですが。

「これは、4年前くらいのデモ曲を改めて再録したものなんです。当時ライブバンドにしたいがゆえに、年間140本くらいツアーを回っていた時期があったんだけど、その頃ってライブのある1日を一瞬、あっという間に感じてて。でも家に帰ったら、今度は1日がめっちゃ長いなって感じた瞬間に、“あの時の一瞬ってめちゃくちゃ噛み締めないといけなかったんだな”って思って、この歌詞を書き起こしました」

ーーこの曲がアルバムの結びの曲である理由も、何か意図するものがあるのでしょうか?

「メンバーチェンジした時に、もし今後メジャーデビューすることができたら、その時は全部今の俺らの音源に変えようって決めていたんです。で、その時出すアルバムの最後に入れようと思っていました」
ーー続いて、ツアーやライブについてお聞きします。まず、7月19日開催の『GREEN SPARK 2020@大阪城音楽堂』にて、久し振りに有観客ライブを行っての感想やお客さんの見え方の違いなど感じたことはありますか?

「ずっとふわふわしていて、感覚を思い出すという以前になんか面白い感じでしたね、いつもにはない緊張感というか。お客さんも行きたくてしょうがないけど行けない、何も言わなくてもマスク越しで伝わるヒヤヒヤした感じというか。やってみて凄く楽しかったけど、この状況が早く終わって、ちゃんとやりたいって思いましたね。ただ、そこでしか出来ないことは出来たんじゃないのかな。いつもは聴けないところを聴いたり、注視してないところが見えたりとか。野外っていうのもあって、いつものライブとは違った感覚を味わえてるようにお客さんから感じましたね。聴いてくれてるなって」

ーー3月には配信ライブも行っていましたが、目の前にお客さんかいない状態でのライブはどうでしたか?

「撮られているという感覚でライブをするのはすごく新鮮で、なんか変な感じでしたね。普段だったら最短距離で僕らのことを見れるのが、撮られている自分がみんなに写されて伝わっているというのは違和感がありました。でも府中Flightは自分たちにとって落ち着く場所だったので、やって良かったと思ってます」

ーー今回のアルバム発売に伴い、全国35ヶ所を回るツアー『HEBEREKE TOUR 2020』が発表されていますね。延期、中止が多い現在の状況下で、このツアー決行の決め手となったものはなんでしょうか?

「決め手というか、もう走り出しちゃったんで(笑)。走るしかないよね、って感じ。あと、この状況の中で、次とか言っていられないような気がして…。今35ヶ所回らないと、来年には無くなってるライブハウスがあるんじゃないかって。だから今やらなきゃって思ったんですよね。行きたいところに今行かないと、このアルバムをこの日に出した意味もないなと」
ーーkoboreのライブは熱さや思いが真っ直ぐに伝わってくる印象が強いのですが、ライブをする上で大切にしていることやツアーに向けての思いはありますか?

「“デフォルト”みたいなことはしたくないと思っています。元々こういうことを言おうとか決めてライブはしないようにしてる。その土地でしか言えないことがあると思うし、そこで見たものしか話せないし、そこで聞いたものしか歌えないし。その土地に合った、出逢った人とかを意識しながらそこでしかできないライブをしたいなと毎回思っていますね。ツアー先で散歩をするのが好きなので、そこで見た風景とかをアルバムに因んで話していければと思っています」

ーー散歩をするのがお好きという話がありましたが、今まで沢山の場所を回った中で特に記憶に残っている風景はありますか?

「島根県とか‥なんにも無くて良いですよ(笑)。なんにも無いところがめっちゃ好きで、邪魔なものが無いと言うか。風景は風景だけど色が多い風景が好きじゃなくて。島根県は本当に単色の景色がずっと流れているっていう感じが好きです。そういう色が少ない景色を見ると、自分でも溶け込んで良いんだって思わせてくれるんですよね」

ーー現在弾き語りツアーを行っていますよね。バンドとしてのツアーとは別に、弾き語りツアーを行う理由はなんでしょうか?

「画面越しで発信できるメディアは沢山ある中で、僕たちはずっとライブバンドとしてやってきたのでそこだけは絶対にブレたくなくて。実際に来てもらって、僕の音楽を聴いてもらった方が話は早いと思ったし。どうにかして行きたい所に行きたいって思った時にガイドラインが発表されて。これだったら弾き語りできるじゃんと思って、“やろう”って。キャンセルになってしまった所をひたすら書き出していって、今回その6ヶ所を回るツアーに至りました」

ーーライブやイベントの際に、スタッフに求めることは何かありますか?

「僕も元々ライブハウスの店員だったので…、“笑顔”じゃないですかね。人当たりの良さとか。素っ気ない感じはちょっとライブハウスっぽくないなって。あとフランクに接してくれるような人が1人いたらもっとライブハウスは明るくなるんじゃないかなとは思います」

ーーメジャーデビューを超えた今、今後の目標はありますか?

「ジャンルを無くしたいなと思ってます。ギターロックとかエモーショナルバントとか、意味の分からないジャンルをいっぱい耳にしたりしてて、このバンドはこうだっていう話になっちゃうのは勿体無いと思うんです。僕はみんなに色んな人に出会って、色んな音楽を聴いてほしいと思ってる。だからkoboreは色んなジャンルの音楽と戦えるようになりたいし、そういう壁を越えてお客さんと通じ合えるようなバンドになりたいと思っています」

ーーそれでは最後の質問になります。漠然とした質問になるのですが、あなたにとって音楽とは?

「ラストむず!(笑)。音楽は唯一触れられないもので、温度とか、そういう人間味とかを感じられるものだとは思っています。これ聞けって言われて聞くようなものじゃないと思うし、勝手に流れてくるぐらいがちょうど良いものだとは思っているので。イヤホンから流れてきた曲で熱量だとか、今回のタイトルじゃないですけど、この曲聴くとあそこの場所思い出すなあとか、そういうものであって欲しいなと思いますね」

取材:丸山桃花・備前桐香

(日本工学院専門学校 蒲田校 コンサート・イベント科)

撮影:うつみさな

  末田波輝(日本工学院専門学校 蒲田校 コンサート・イベント科)
アルバム『風景になって』
2020年8月5日(水)発売

COCP-41229/¥2,800+税

<収録曲>

01.FULLTEN

02.るるりらり

03.HAPPY SONG

04.HEBEREKE

05.イヤホンの奥から

06.夜に捕まえて

07.なんにもないの

08.君とじゃなくちゃ

09.二人だけの世界

10.ボクタチノアシタ

11.当たり前の日々に

『kobore HEBEREKE TOUR 2020』 
9月20日(日) 千葉 LOOK

9月21日(月・祝) 横浜 F.A.D YOKOHAMA

9月24日(木) 静岡 UMBER

9月26日(土) 四日市 CLUB CHAOS

9月27日(日) 梅田 Shangri-La

9月29日(火) 奈良 NEVERLAND

10月07日(水) 松江 AZTiC canova

10月08日(木) 岡山CRAZY MAMA 2nd Room

10月11日(日) 名古屋 RAD HALL

10月15日(木) 札幌 BESSIE HALL

10月18日(日) 青森 Quarter

10月20日(火) 新潟 GOLDEN PIGS RED

10月22日(木) 金沢 vanvan V4

10月23日(金) 仙台 MACANA

11月03日(火・祝) 下北沢 GARDEN

11月05日(木) 長崎 アストロスペース

11月07日(土) 熊本 Django

11月08日(日) 福岡 Queblick

11月10日(火) 松山 WstudioRED

11月11日(水) 高知 X-pt.

11月14日(土) 滋賀 B-FLAT

11月15日(日) 浜松 メスカリンドライブ

11月23日(月・祝) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2

11月24日(火) 松本 ALECX

11月28日(土) 和歌山 CLUB GATE

11月29日(日) 京都 KYOTO MUSE

12月01日(火) 神戸 KOBE 太陽と虎 

12月02日(水) 広島 Cave-be

12月04日(金) 鹿児島 SR HALL

12月05日(土) 大分 T.O.P.S Bitts HALL

12月06日(日) 徳島 club GRINDHOUSE

12月12日(土) 那覇 Output

12月17日(木) 盛岡 Club Change WAVE

12月19日(土) 郡山 CLUB#9

12月20日(日) 水戸 LIGHT HOUSE

※各地ゲストあり

※詳細は後日発表


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