<ライブレポート>Mrs. GREEN APPLEの“今”と“次章”への期待が詰まった【ARENA TOUR / エデンの園】ファイナル公演

2020年2月25日 / 13:00

 Mrs. GREEN APPLEの初のアリーナツアー【Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR / エデンの園】のファイナル公演が、2020年2月16日に東京・国立代々木競技場第一体育館で開催された。

 “楽園”を意味するエデンの園だが、筆者が“リンゴ(Apple)”と“エデンの園”から連想したのは、アダムとイヴのことだ。禁断の果実(リンゴ)を食べたことによって、アダムとイヴはその楽園から追放されてしまうという有名な神話があり、ライブ前はその神話に沿った演出がされるだろうと予想していた。しかし、そんな深読みをするまでもなく、ミセスのライブはいつだって“楽園(皆が幸せに過ごす場所)”であり、結果的に予想こそ外れてしまったものの、その【エデンの園】というツアータイトルに恥じない、壮大で感動的な一夜となったのだった。

 アリーナ頭上にぶら下がった植物のモニュメントが点滅すると、ステージにミセスがスタンバイ。2019年10月にリリースされたアルバム『Attitude』の収録曲「インフェルノ」のイントロが鳴り響き、「代々木~!!」と大森元貴(Vo./Gt.)がシャウトすると、どこもかしこも大興奮だ。“インフェルノ(炎)”らしく、パイロがリズムよく吹き上がると、それに合わせてオーディエンスも声を上げた。続く「藍(あお)」では先ほどの赤から一転して、青と白を基調にした刺すようなライティングで、1曲目とコントラストをつけて楽しませる。「踊れるか、代々木~!?」と大森が煽るが、ステージ後方と両サイドに広がるスクリーンには、いまだメンバー全員の顔はハッキリと映らず、そんな焦らしに「早く顔を見せて!」と思わずにはいられない、期待感をギリギリまで煽るようなオープニングとなった。

 メンバーの名前を呼ぶ声が至る所から聞こえ、大森が「代々木ー!」と返事をすると歓声が沸く。結成7年目、デビュー5年目を迎えるミセスは、2019年末からの横浜、名古屋、大阪を経て、この代々木のファイナルで自身初のアリーナツアーを完走したことになるのだが、これまでのキャリアを通して、着々と会場が大きく、そしてファンの人数が増えていくのを目にしてきたわけで、MCでも度々「こんな素敵な景色を見せてくれてありがとう!」と感謝の言葉を繰り返していた。そんな万感の想いが詰まったこの日、披露されたのは最新アルバムの収録曲に加え、初期の楽曲から代表曲、人気曲まで、アンコールを含めると計23曲だ。

 「藍(あお)」や「VIP」、「アンゼンパイ」など過去の楽曲は、オリジナルとは異なるアレンジが施され、観客をアッと驚かせた。中でも「アンゼンパイ」では、若井滉斗(Gt.)、藤澤涼架(Kb.)、高野清宗(Ba.)が揃ってステップし、大森の珍しいピアノ伴奏も楽しめた。その「アンゼンパイ」の次に披露された「ProPose」では、計算されたスクリーン演出も見どころに。ライブを通して、大森は楽器を弾くかのように、あるいは何かの信号を送るかのように指先を器用に遊ばせ、視覚的にもオーディエンスを魅了していったのだが、「ProPose」では赤とピンクの中間色がスクリーン中央から段々と広がっていき、まるで異世界へと続く扉が開いていくような映像を背景に、強調された大森のシルエット、その指先に視線が集まった。

 「懐かしい曲やります!」と「愛情と矛先」がスタートすると、気持ちの高揚に合わせて体を揺らし、クラップするオーディエンスが多く見られた。続く「Viking」ではドラマチックなピアノとストリングスのイントロに合わせて、海賊姿のダンサーが登場。気づけば高野がチェロを弾いている。ステージが一瞬にして大海原を航海する船上に様変わりしたが、ここで大森は千手観音のようにダンサーと息の揃ったダンスを披露する。最後は上昇したステージでV字のセンターに立った大森が手首を振り切る仕草で締めくくられた。ほかにもバスキアやモネを彷彿させるアートやミラーボールなど、様々なステージ・プロダクションが巧みに演出へ組み込まれ、観客を飽きさせることなくショーが進んでいく。

 ライブ終盤は興奮の連続だった。慎重に言葉を選びながら大森が「誰かと比べて『自分は何なんだろう?』って思うことが僕はあって、どうしようもない感情になって夜な夜な寂しくなるんです。人と比べる瞬間があっても、自分は素晴らしい存在なんだと思いたい、信じたいと思って書いたこの曲がきっかけで色んな方々に知ってもらえた、大事な1曲です」と「僕のこと」で会場を包み込むと、そこから「StaRt」「WanteD! WanteD!」「青と夏」、そして彼らの新しいライブアンセム「CHEERS」と、バンドを代表する楽曲を立て続けに披露。大合唱が起きた「lovin’」では会場のテンションも最高潮に到達した。

 本編は『Attitude』のラストを飾る「Folktale」で締めくくられた。ここで青りんご色の木がすくすくと育ち、花を咲かせる大木へと成長する映像が流れたが、その大木の下で演奏するミセスの姿を見て、ひとつの成長過程の終了を思わせた。ただしそれは、次のフェーズへ進むための第一章の幕切れという意味で、だ。

 10秒以上お辞儀をしてステージを後にした5人は、アンコールのMCでそれぞれの思いを語った。藤澤は「今日はみんなを楽しませるぞっていう気持ちで来たんですけど、今までのことを思い出したら自分の気持ちが爆発しちゃった。それくらい今回のツアーはとても大事なライブになりました。とっても楽しかったです!」と時折言葉を詰まらせながら心境を吐露し、ライブ中盤にしずかちゃんのモノマネで観客の笑いを誘った“新”リーダーの高野は「今までのMrs. GREEN APPLEを詰め込んだアリーナツアーだったので、終わりたくないですね。まだまだツアーを続けたいです。本当に幸せでした!」とツアーを終えた感想を率直に述べた。山中綾華(Dr.)も「今日は本当に楽しかったなって心から思える1日でした。こうやって会場に足を運んでくれて、声と熱を届けてくれて、皆さんに支えられているんだって思いました。音を鳴らして、演奏してて、すっごい幸せでした」と観客同様、幸せな時間を過ごせたと語ってくれた。

 結成当初の苦労と努力を思い返した若井は「この景色を見て、そういうことが無駄じゃなかったって思わせてくれました」と語った途端、大粒の涙を流し、それにもらい泣きするオーディエンスが続出。「がんばれー!」という掛け声が届けられ、若井は声を振り絞りながら「色んな人に支えられてここまで来れました。一人一人にありがとうと伝えたいです。ありがとうございます」と感謝を述べた。そして最後に大森が「これから先も良い曲を作って、皆さんに届けられればと思っています。第一章の集大成として、今、僕らの出来る最大限を出し切ったので、第二章がどういう風に始まっていくのか、僕らもワクワクしています。また遊びに来てね! この出会いに感謝してます!」と語ったのち、この日のエンド・ソングとして「我逢人(がほうじん)」を披露し、会場を感動と幸せに包み込んだ。約2時間に及ぶステージを終えたミセスは、30秒以上深々と礼をして、名残惜しそうにステージを後にするメンバーには会場から万雷の拍手が送られた。ミセスの5年間を具現化したこのライブは、彼らの言葉通り、ミセスの“これから”を予感させるライブでもあったのだ。

※高野清宗の「高」ははしごだか

Text by Mariko Ikitake
Photos by 上飯坂一、makiko takada

◎【Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR / エデンの園】セットリスト
※2月16日(日)国立代々木競技場第一体育館
1. インフェルノ
2. 藍(あお)
3. WaLL FloWeR
4. VIP
5. アンゼンパイ
6. ProPose
7. Soup
8. 愛情と矛先
9. Viking
10. クダリ
11. REVERSE
12. ア・プリオリ
13. ナニヲナニヲ
14. Ke-Mo Sah-Bee
15. 僕のこと
16. StaRt
17. WanteD! WanteD!
18. 青と夏
19. CHEERS
20. lovin’
21. Folktale
<アンコール>
1. Circle
2. 我逢人(がほうじん)


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