友との対話から生まれるヒント【世界音楽放浪記vol.85】

2020年2月22日 / 12:00

作家の平野啓一郎さんが著した「分人」という考え方が、とても好きだ。人間には、さまざまな面がある。もちろん、公私混同は厳に慎まなければならないが、1人の人間に、複数の顔や活躍の場があっても、コンプライアンスを遵守し、なおかつ他の方に迷惑をかけなければ問題がないと思う。

「趣味は何ですか?」と聞かれることがある。人生そのものが趣味のようなものだ。誤解が生まれないように説明を加えておくと、仕事は「プロ」として行う。決して、自己満足でも大丈夫な「ホビー」という意味ではない。クオリティ高いものをコンスタントに作り続けることが、プロの仕事だと考えるからだ。しかし、「フェイバリット」、つまり「好きなものか?」と聞かれれば、その通りだ。

語義を分けるなら、「お仕事(ルーティーン)」は、やらねばならないことだが、辛いことも正直ある。だが、「仕事(ワーク)」のことは、いつも考えている。そして、「ワーク」は、趣味の域のものであっても、真剣にきっちりと行うことも多い。その原動力は、やることが好きだからだということに尽きる。

時間で考えれば、1日の3分の1は、業務に従事している。残りの3分の2は、まさに「分人」の出番だ。近所の方は、私がどんな仕事をしているか知らない。職場の同僚と、休みの日に一緒に行動したり、ましてや旅に行ったりすることも、ほぼない。そこには、利害関係も上下関係もない、友人がいる。「友」と呼べる方との出会いは、運命的ともいえる。「この方とは心を開けるなという感覚」は、不思議なことに、お互いが同時に持つものだ。そこには、老若男女も、言語も出自も関係ない。

昨年末も、私より年上の友人~作詞家、大学教授、音楽関係者~と一緒に、九州に旅に行った。大人の遠足だ。とても楽しく、居心地が良く、忘れられない大人の遠足となった。

2人の娘も、大事な「友」だ。彼女たちが成長するにつれ、多くのことを教えてくれる。当然、親子なので、間違ったことはきちんと指導する。だが、親が必ずしも正しい訳ではない。私が悩んだり、困ったりするとき、彼女たちに相談することが増えてきた。

「友」の定義は、人それぞれだ。以前、親しくさせて頂いている方から、「いまの立場や職責でなくなったら、誰も付き合ってくれないのではないだろうか」という不安を打ち明けられたことがある。それも真理だろう。だが、それは、それまでの付き合いだったということ。また、合わない方は仕方ない。誰とでも仲良くするつもりはないし、そんなにフレンドリーなタイプでもない。私は、適度な距離感を持ち、お互いにリスペクトとユーモアを抱き、私利私欲なくお付き合いが出来る方が「友」だと考えている。

何かを与えることは出来ないが、背中を押したり、少しだけ力になったりすることは出来る時もある。つい先日、聡明で活発な女性3人と、男性の弁護士と大学教授の友人を交えて、行きつけの居酒屋で会食をした。女性たちは、自分たちの手で、とても興味深いカルチャーイベントを立ち上げようとしていた。衝動、情熱、行動。どれもが、感嘆に値する、素晴らしい試みだった。その中心的人物の話を聞くと、どうやら、背中を押した一人は、私らしい。私は、無意識というか、何かを作為的にやった覚えはなかった。だが友人が躊躇し、悩んでいた時に、少しでも力になっていたなら、こんなに嬉しいことはない。

私は、「友」はマッチングサービスや、人脈を広げるためのパーティーなどで出会うものではないと考えている。もちろん、それは千差万別、あくまで私の場合だ。これから、どんな友情を築いていくことが出来るのか、楽しみでならない。

Text:原田悦志

◎原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明治大学講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。現在は「イチ押し 歌のパラダイス」「ミュージック・バズ」「歌え!土曜日Love Hits」(NHKラジオ第一)などを担当。


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