<インタビュー>X・アンバサダーズ、初来日公演への意気込みを語る「気をつけろ!日本に着いたら、一生帰らないかも(笑)」

2020年2月7日 / 15:00

 1stメジャー・アルバム『VHS』収録の「Renegades」で、米ビルボード・ソング・ソング・チャート“Hot Rock Songs”1位を獲得し、その名を轟かせた米NYイサカ結成のサム(Vocals)&ケイシー・ハリス(Keyboards)兄弟とアダム・レヴィン(Drums)による3人組バンド、X・アンバサダーズ。フロントマンのサムによる表現豊かなヴォーカル、エモーションとパワーを併せ持った現代らしいオルタナ・サウンドで人気を博す彼らは、イマジン・ドラゴンズのフロントマン、ダン・レイノルズに発掘され、これまでエミネム、リル・ウェイン、ゼッド、ビービー・レクサ、イレニアムなど様々なアーティストとコラボを行ってきた。

 2019年には待望の2ndアルバム『ORION』を発表し、ソングライター/プロデューサーとして参加したリゾの最新アルバム『コズ・アイ・ラヴ・ユー』が先日【グラミー賞】を受賞するなど、ジャンルを自由自在に操りながら、アーティストとして活躍の幅を広げ続けている。ここでは、最新作『ORION』をひっさげた初来日公演を2020年2月10日に東京・渋谷WWW Xで控えるバンドのフロントマン、サムとのインタビューをお届けする。

◎あなたたちがソングライター/プロデューサーとしてクレジットされているリゾの作品が、先日の【グラミー賞】で3冠に輝きましたね。おめでとうございます。
サム・ハリス:ものすごくクールで光栄だったよ!

◎ここ1か月ほどツアーは行っていなかったようですが、リフレッシュできましたか?
サム:実を言うと、ここ1か月間は結構忙しかったんだ。ニュー・アルバムに着手したり、数週間後にリリースを控えているEPを仕上げたり……。ライブやツアーは、心身ともにかなりタフだけれど、やりがいがある。毎晩人々の前に立てるのは格別で、自分たちの努力が報われたと感じる瞬間だから。

◎2020年初のライブは、昨晩のニュージーランド公演だったそうですね。
サム:移動が悪夢だったんだけど(笑)……良かったよ。ツアー・モードに戻って、みんなのためにパフォーマンスするのを楽しみにしてる。あと、とにかく日本でライブするのが待ちきれない!

◎日本のファンもとても楽しみにしていると思います。初の来日公演ということですが、現在の心境を教えてください。 やはり初めての国で、初めてのライブを行うのは多少緊張しますか?
サム:俺も、ものすごく楽しみにしている。昨晩は、ニュージーランドで初めて公演を行ったんだけど、マジで誰も来ないんじゃないかと思ってた。でもちゃんと来てくれた(笑)。日本でのライブにも、みんなが来てくれると嬉しいね。観客の人数に限らず、俺たちはいつだって全身全霊でプレイする。それに俺は日本が大好きなんだ!実は、昨年初めて日本をプライベートで訪れたんだ。しかも一人で。その時は、東京と京都に何日か行くこともできて、色々散策したんだけれど、本当にマジカルな場所だった。

◎そうだったんですね。どんなところが気に入りました?
サム:オーマイゴッド、全部だよ!食べ物、環境、景観。ゴミ箱がどこにもないのに、どこもかしこも清潔で驚いた。みんな礼儀正しくて、心優しいし、とても美しい国だと感じたよ。また行くことができて光栄だ。

◎楽しみながら充電できたようで、なによりです。
サム:そう、少しばかり休息が必要だったんだ。大勢の人々と一緒に過ごす時間が増えて、人生全般において様々な人々に頼られるようになってきたから、自分のために時間を取ってセルフケアを行う必要があった。だから意を決して1週間休んで、日本へ行くことにした。そして素晴らしい経験をすることができたんだ。

◎確かにフロントマンは、人知れずところで責任感や重圧などと葛藤しなければならない場合もありますしね。そういった面とクリエイティブ面をうまくバランスできている、尊敬するフロントマンはいますか?
サム:大勢いるよ。トム・ヨークは素晴らしいし、俺はデーモン・アルバーンの大大大ファンだ。ブラーもゴリラズも両方大好き。彼って全然周りのこととか気にしないだろ?その上、大胆で野心的で……ある意味向こう見ずなのかもしれないけど。自分にも彼ほどの行動力があったらと思う。あとはクリス・マーティンも好きだね。コールドプレイは、昔からずっとファンなんだけど、常に変化しながら成長しているし、これほど長く活動を続けてこれたのは並大抵のことじゃない。

◎話をツアーに戻すと…来日公演のセットリストは、最新作『ORION』の楽曲がメインになりますか?
サム:『ORION』と過去の曲、半々ぐらいで構成されている。昔の曲も、最新作の曲もプレイするし、冒頭で話したリリース予定のEPからの新曲も披露する予定。日本で公演を行うのは初めてだけど、最新のライブを楽しんでもらえると思う。

◎その時によって変化すると思いますが、『ORION』収録曲で今最もプレイするのが楽しいのは?
サム:そう、毎日にように変わるんだよね。個人的に今気に入ってるのは「Wasteland」かな。故郷のNY北部イサカについて歌っているんだけど、この曲を世界中で演奏できるのは嬉しい。場所に関わらず、地元を思い起こさせてくれるし、なんとなくアットホームな気持ちにさせてくれるから。ファンの反応がいいのは「Hold You Down」だな。これは自分と兄ケイシーの関係について書いた曲なんだけど、演奏するといい雰囲気になるんだ。前半でプレイする「Boom」も楽しい曲だから、いつも盛り上がるね。


◎キーボード担当のケイシーの名前が挙がりましたが、兄弟でバンド活動を行っているというのは、あなたたちの強みの一つですよね。
サム:お互いを知り尽くしているから、何をやるにしても直感的に分かり合える部分が多い―音楽的なこと、ステージにおけるコミュニケーション。長年一緒に活動しているから、バンドに対しての情熱、そしてお互いへのリスペクトも半端ない。兄弟として色々なことを乗り越えてきた。数えきれないほどの浮き沈みがあったけれど、お互いに手を差し伸べ合いながら、協力して頑張ってきた。彼との絆は、このバンドにユニークな側面を与えてくれていると感じるね。

◎幼い頃からほぼ盲目である彼の存在は、同じ障害や似た境遇のミュージシャンにとってインスピレーションになっていると思います。
サム:彼が成し遂げてきたことは凄まじいことだし、多くの人々に希望を与えていると思う。俺自身も彼にインスパイアされているよ。兄だから、喧嘩することもしょっちゅうだし、マジでムカつくと思うこともあるけれど(笑)、彼と毎晩同じステージに立つことができて光栄だ。

◎では、あなたたちのライブを観たことがない人々にその魅力を伝えるとすれば?
サム:とにかくエネルギッシュで多幸感に溢れている、と同時にデリケートな面もある……そう感じてもらえるように努力している。人間の感情をすべて網羅したような内容にしたくて、ダイナミズムと繊細さ、ラウドらと静けさ、その間のすべての感情を吐き出すようなショーになっている。どんな人でも受け入れられていると感じられるような、そして自分を好きなように表現できる、安全な空間にすることを心掛けている。だからと言って、周りの人々を傷つけるような行為はNGだけど。ファンと間近で繋がることも大事だし、俺たち自身が演奏しながらどう感じているのを見てもらうことも大切だ。客席に降りて行って観客の顔の目の前で歌ったりもするけれど、ステージ上で奏でる音楽に自ら身を任せることは同じぐらい観客の心を奪う行為だから。ライブについては、そんな風に捉えているよ。

◎先ほど少し触れていましたが、リリース予定のEPからの先行トラック「Everything Sounds Like a Love Song」について教えてください。
サム:アレサ・フランクリン、ザ・バンド、ザ・ステイプルズ・シンガーズ、ジョー・コッカーなど、俺たちが長年愛してきたアーティストたちの作品を彷彿とさせ、そういった音楽スタイルへ敬意を表した、トラディショナルなバラード曲に仕上がっている。こういったサウンドは、俺たちの音楽に大きな影響を与えている。冒頭でも話題に上がったけれど、俺たちが共同作曲・プロデュースしたリゾの「Jerome」は、この間の【グラミー賞】で<最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞>を受賞した。R&Bは俺たちの存在、DNAの一部だ。この曲、そしてこのEP全般についても言えることだけど、R&Bに傾倒した作品になっている。こういったサウンドを取り入れ始めたのは、2018年の「JOYFUL」で、EPはその延長線にある作品なんだ。『ORION』には合わなかったから収録しなかった楽曲たちで、制作中のニュー・アルバムにもハマらないけれど、単純にいい曲だと思うし、バンドの一部だからリリースしたいとは思っていた。それらを今回EPとして発表することにしたんだ。

◎ちなみに、この曲を月曜日にライブで聴くことができそうでしょうか?
サム:もちろん。昨日のライブでもプレイしたから、聴けるはずだよ。


◎リゾとの楽曲制作や人気TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のサントラのプロデュースなど活躍の幅を広げ続けていますが、他のアーティストとの作業から得た経験は、どのようにバンドの作品に還元されていますか?
サム:他のアーティストと仕事をすると、毎回様々なことを学ぶ。そういった場で自分の能力を発揮することも大切だけど、俺の場合はとにかく彼らから勉強したいんだ。リゾの場合は、彼女のEP『ココナッツ・オイル』を聴いて圧倒されたから、彼女から学びたいと思って、どうにか一緒に曲作りできないかと頼んだら、運よく実現した。会った初日に「Jerome」を書き上げ、翌日にはアルバムのタイトル・トラック「Cuz I Love You」、そして「Heaven Help Me」が出来上がった。彼女のサウンドとすぐにコネクトできたから、作業はスムーズに進んだ。ソングライティング/プロデューサー・チームとして、他のアーティストと曲作りを始めたばかりで、当時彼女は今ほどのスーパースターではなかったけれど、音楽が好き、というただそれだけの理由で一緒に仕事をすることができた。むしろそこが一番大事で、この経験から得た最も価値のあるレッスンだった。だから今後も、作っている音楽が心から好きと思えるようなアーティスト、世界ならずとも俺たちの人生に何らかの変化をもたらすようなアーティストとしか一緒に仕事をしたくないと考えている。

◎今の話に少し通じると思うのですが、バンド活動、ソングライティング、プロデュース面において、2020年の抱負や目標があれば教えてください。
サム:俺が個人的に苦悩したのは……可能な限り多くの人を満足させたいという願望に屈してしまっていた。発表するどんな小さなアートも、より多くの人に好いてほしいという願望。これはおそらくみんなに愛されなければならないという、俺の気質ゆえなんだろうけど。でも今年からは、そういったことをあまり気にせず、自分が好きなものだけを作ろうと思っている。これまでとは違う何か、自分にとって意味のある作品を。これは俺たちのファンの一部を遠ざけてしまう行為かもしれないし、その分新しいファンも増えるかもしれないが、そういったことに関わらず、もう今しかないし、俺たちの人生は限られている。だから、自分がやりたいことをやって、作りたいものを作って、その時間を有効に使わなければならない。そのタイミングを今か、今かって見計らってるわけにもいかないから、行動に移そうって。それが俺の今年の抱負だな。

◎過去のそういった考え方を変えるきっかけが何かあったのでしょうか?
サム:何だろうな……。去年結婚したし、兄に息子が生まれたから甥もできたし。人生におけるいくつかの出来事に関して、少し霧が晴れたという感じかな。長年の親友ノアがバンドを脱退したことだったり―彼のことは今でも心から愛しているけれど疎遠になってしまっていたり、ここ数年間悩ましいことがあったけれど、それが徐々に減り、きちんと前を見据えられるようになった。恐れではなく、愛やワクワク感を軸にして、行動できるようになった。きちんとセルフケアを行いながら、自分の人生を歩むという強い欲望に駆られているんだ。

◎昨年、米ビルボードとのインタビューで、オルタナティブ・ロックが衰退し、つまらないジャンルになっている理由について、多様性のなさを挙げていましたが、状況は変わりつつありますか?
サム:毎日少しずつ、いい方向に向かっていっているとは思う。例えば 、最近気に入っている「Get Up」という曲を発表した<キャピトル・レコーズ>と契約したてのタレル・ハインズというアーティストがいるんだけど、彼の音楽はどう形容したらいいのかわからないし……ビショップ・ブリッグス、ジェイコブ・バンクス、Kフレイなど、従来の流れを変えているゲームチェンジャーたちが大勢いる。スロウタイもそうだね。彼は、もうちょっとラップよりだけど、コラボしているムラ・マサはいわゆる“オルタナティブ”だ。だから徐々に変化はしてきているけれど、オルタナ・ロック専門のラジオ局をつけると、白人男性による同じようなバンドばかりだ。まぁ、俺もその一員で、自分も問題の一部だということは重々承知しているんだけど(笑)。けれどそのせいで、自分たちの仲間や個人的には知らないけど大好きなアーティストたちが、得て当然の評価、またはエアプレイを得られていないのは、とてももどかしい。ただ時代は変わりつつあって、今はストリーミング・サービスがラジオと同じ役割を果たしている。でもそれで満足するのではなく、よりインクルーシブするために、働きかけ続けなければならないと思っている。

◎現代の音楽シーンではジャンル自体が機能しなくなってきたような気がしますしね。
サム:そう、だからそれについてつべこべ言うのも、なんだかバカみたいだよ。俺たちは“バンド”で、それがずっと根の部分にあるし、ずっとそうあり続ける。ギターやドラムを演奏してる3人のキッズというイメージは拭うことはできないし、それが俺たちの原点だから。

◎最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
サム:日本のファンのみんな!俺たちはみんなに会うこと、そしてみんなのために演奏することを本当に、本当に楽しみにしているんだ。気をつけろ!日本に着いたら、俺はもう一生帰らないかもしれないから(笑)!

◎公演情報
【X Ambassadors THE ORION TOUR】
2020年2月10日(月) 東京・SHIBUYA WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット:オールスタンディング6,500円(税込/1Drink代別)
INFO: Creativeman http://www.creativeman.co.jp


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