追悼・イノマー(オナニーマシーン)が教えてくれたパンクロック5選

2020年1月20日 / 18:00

ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲! (okmusic UP's)

昨年末の12月19日、病気療養中だった性春パンクバンド・オナニーマシーン(以下、オナマシ)のイノマーが死去した。バンド結成前、週刊誌『オリコンウィークリー』の名物編集長として知られていたイノマー。そんな時代のイノマーに拾われ、現在の活動につながる出会いや学びをたくさん与えてもらった僕はイノマーを“師匠”と呼び、良いことも悪いこともたくさん教えてもらいました。今回はそんな師匠を追悼して、僕の思い出とともにイノマーが好きだった5曲をセレクト。師匠の願い通り、PUNK ROCKでお別れしましょう。
「ロマンチスト」(’82) /ザ・スターリン

「風俗行ったことある?」と、オリコンの面接でいきなり聞かれたのがイノマーとの出会い。僕が大阪の風俗でぼったっくられた話をすると嬉しそうに笑い、イノマーは「合格!」と無責任に言い放った。ザ・スターリンとビートたけしが好きで、体制に全裸で立ち向かうパンクスピリッツがあるくせに、シャイで照れ屋でロマンチスト。大事なことは言葉で直接伝えず、文章で遠回しに伝えるイノマーのスタイルが僕はすげぇカッコ良いと思ったし、物書きとして憧れたし。昔からお兄ちゃんが欲しかった僕は、自慢のお兄ちゃんが出来たみたいで本当に嬉しかった。僕は世代的にザ・スターリンには間に合わなかったけど、オナマシを初めたばかりの頃、遠藤ミチロウ&ザ・クレイジーSKB&オナマシで演奏する「仰げば尊し」を観て、大感動したのを忘れない。
「GROWING UP」(’95) /Hi-STANDARD

オリコンでインディーズチャートを作ったり、『Indies Magazine』の立ち上げに関わったりとインディーズバンドを深く愛し、貢献したイノマー。イノマーがデビュー時から大ファンであることを公言し、その影響もあって僕もドハマリしたのがHi-STANDARDだった。97年にお台場で行なわれた『AIR JAM 97』を一緒に観に行って、帰りに呑んでたら興奮収まり切らなくなり、中野のエロいお店にふたりで行ったのも良い思い出。僕がフリーになって初めてやった仕事が『AIR JAM 2000』のライヴレポで、普段は褒めてくれないイノマーが「ちゃんと独り立ちできててエライな」と褒めてくれたのも嬉しかった。あれから20年を経て、ハイスタが18年振りのアルバム『THE GIFT』をリリース。さいたまスーパーアリーナで行なったライヴを、再び一緒に観に行くことができたのは実に感慨深かった。
「東京少年」(’01) /GOING STEADY

99年にオナマシ結成、その後オリコンを退社。イノマーと僕だけの事務所「オフィス☆イノマー」を立ち上げ、最初にやった大仕事が雑誌『STREET ROCK FILE』の創刊。そして、その頃、野外フリーライヴ『東京初期衝動』を観たイノマーが「とんでもないバンドに出会っちゃった!」と興奮して教えてくれたのが、「東京少年」をリリースしたばかりのGOING STEADYだった。その後、『STREET ROCK FILE』創刊号の表紙をゴイステが飾ったり、オナマシ主催の『ティッシュタイム』で共演して数々の伝説を作ったりと、ライター&編集者としてバンドマンとして、ゴイステと親交を深めていったイノマー。イノマーの死後、「学生時代にオナマシ聴いてました」と聞かされることが異常に多く、童貞たちの悶々とした想いをパンクロックや文章で昇華してくれたイノマーと峯田和伸が、全国の童貞たちに与えた力は計り知れなかったのだなと改めて思わされている。
「19 GROWING UP -ode to my buddy-」(’88)/プリンセス プリンセス

99年に始まった、オナマシ主催のライヴ『ティッシュタイム』。昨年の10月にはオナマシ結成20周年を記念して、豊洲PITで『ティッシュタイム・フェスティバル』を開催。ガガガSP、サンボマスター、氣志團、銀杏BOYZとオナマシと縁の深いバンドを招いた一大イベントを開催しましたが。『ティッシュタイム』でオナマシの出囃子として流れていたのが「19 GROWING UP」。99年のスタート時から前説を務めていた僕は、この曲を聴くたびに渋谷Lamamaのステージ下手から見る風景、メンバーがひとりずつステージに上がっていき、イノマーが「オナニーー!」と叫ぶ姿が頭に浮かぶ。イノマーの葬式では出棺時に流れたこの曲。オノチン(Gt)が条件反射的に「オナニーー!」と叫び、「ここ、葬儀場だぞ!」と大爆笑しましたが。僕も「オナニーー!」と叫びながら、「カッコ良いとこ観せてこい!」と、いつもの『ティッシュタイム』と同じ気持ちで師匠の棺を見送りました。
「ソーシキ」(’03) /オナニーマシーン

03年7月リリース、サンボマスターとのスプリットアルバムであり、オナマシとサンボのメジャーデビュー盤となる『放課後の性春』に収録されている楽曲。《オイラはどーせ死んじまうんだろ》と歌うこの曲を、まさか本当にソーシキで聴くことになるとは思わなかったし、「これ、「ソーシキ」のMV撮影でしょ?」とオノチンが言うくらい現実味がなかったが。イノマーは1年5カ月の癌との闘病を経て、本当に死んじまった。10月にリリースされた、オナマシの20周年記念BOX『おさるのパンク』のDVDに収録された、渋谷Lamamaでの舌ありラストライヴや、まともに立てないくらい病状が悪化してる中で敢行した豊洲PITのライヴでの勇姿を僕らの目に焼き付けて逝ってしまった。「ロックは生き様」なんてよく言うけど、最期に見せたイノマーの生き様はまさにロック。最期は言葉でなく、生き様で弟子である僕に大事なことを教えてくれた。カッコ良いまま勝ち逃げされてしまったので一生越えることのできない師匠の背中を追い続け、僕なりにイノマーのオナニイズムを継承していきたいと思う…てか、オナニイズムって何?(笑)
TEXT:フジジュン(おばけえんとつ)

フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野だが、EBiDANなど若い男の子も大好き。笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。


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