『レア』セレーナ・ゴメス(Album Review)

2020年1月14日 / 18:00

 3曲の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”TOP10ヒットを輩出した2015年の2ndアルバム『リバイバル』から約4年、3作目のスタジオ・アルバム『レア』を発表したセレーナ・ゴメス。その間、カイゴとのコラボ曲「イット・エイント・ミー」(全米10位 / 全英7位)や、「バック・トゥ・ユー」(全米18位 / 全英13位)等がチャートを荒らしたが、闘病生活や恋人との破局、SNSの中傷に悩まされる等、私生活は散々だった模様。

 そんなこんなを経ての新作ということもあり、待望だったファンの喜びもひとしお。また、アルバムから先行シングルとして発表した「ルーズ・ユー・トゥ・ラヴ・ミー」が、2019年11月9日付“Hot 100”で自身初のNo.1獲得を果たしたことも大きな話題となり、アルバムの期待値を高めた。

 「ルーズ・ユー・トゥ・ラブ・ミー」は、セレーナの人気曲「ハンズ・トゥ・マイ・セルフ」(全米7位)を手掛けたマットマン&ロビンに加え、ビリー・アイリッシュの兄でシンガー・ソングライターのフィニアスがプロデュースを担当。季節的にもハマったゴスペル調のバラード曲で、初の全米1位も納得の完成度の高さ。歌詞が(元彼)ジャスティン・ビーバーへの……的なお約束ネタもSNS等で話題となったが、果たして。そういえば、そのジャスティンも先日新曲「Yummy」で復帰を果たしたばかり。2020年は両者揃って再ブレイクか?

 「ルーズ・ユー・トゥ・ラブ・ミー」の翌日にリリースされた「ルック・アット・ハー・ナウ」は、対照的なダンス・ポップ。ジュリア・マイケルズ&ジャスティン・トランターの黄金コンビに加え、イアン・カークパトリックがソングライターとして参加している。立ち直るまで数年かかった、彼と別れた今の彼女は、突き進む姿を見て……等、この曲の歌詞も元彼へのメッセージと連想されがちが、恋多きセレーナの場合、誰にあてたものなのかは特定し難い。それよりも、iPhone 11 Proで撮影したというミュージック・ビデオのクオリティには驚かされた。カメラ機能もここまで進化した、とは……。

 アルバムの発売同日には、タイトル曲「レア」のMVも公開されている。セレーナの代表曲「グッド・フォー・ユー」を手掛けたサー・ノーランによるプロデュース曲で、タイトルにも通ずる90年代あたりの洒落たレア・グルーヴ的要素もちらほら。「ルーズ・ユー・トゥ・ラブ・ミー」のような壮大なバラード曲もいいが、個人的には浮遊感漂うこのテのサウンド&ボーカルワークが、最も彼女にフィットする気がする。ワンピース・ドレスで森を舞う、ファンタジックなビデオも超キュート。本作の中では1、2位を争う傑作か。

 参加ゲストは2組。「クラウデッド・ルーム」にフィーチャーされたのは、2018年にリリースした2ndアルバム『イースト・アトランタ・ラブ・レター』が全米アルバム3位を記録した、米アトランタ出身のラッパー/シンガー=6LACK(ブラック)。もう1人は、「デイ・アンド・ナイト」(2009年)等のヒットで知られる米オハイオ州のラッパー、キッド・カディ。キッド・カディの参加曲はアルバムの最後を飾る「ア・スウィーター・プレイス」で、プロデュースはヒップホップ・アーティストを多数手掛けるマイク・ディーンが担当している。クレジット通り、2曲いずれもサウンドの仕上がりは黒い。

 「クラウデッド・ルーム」はスタンダードなラブ・ソング、「ア・スウィーター・プレイス」は、迷走期を経てようやく自分らしさを取り戻せたと歌うポジティブ・ソング。本作について、セレーナは「過去の作品よりも正直な気持ちが表現できた」と話しているが、これらが正直な気持ちであれば、心の健康度合いも良好かと思われる。重低音をキかせたハウス・トラック「ダンス・アゲイン」ではトラウマが解消されていく様を、ダンスホールとラテンを融合させた「レット・ミー・ゲット・ミー」でも同様に、有名人であることを取っ払って“自由を取り戻した”と、高らかに歌っている。

 カミラ・カベロ路線のラテン・ポップ「リング」では上から目線で男(共)を罵ってみたり、R&B寄りのミディアム「カインダ・クレイジー」では裏切られた相手への恨み節を綴ってみたり。親友テイラー・スウィフトが歌いそうなポップ・ソング「ファン」では、お気に入りの誰かについて「でも彼氏になる相手じゃない」という意味深なフレーズを用いたりと、過去の作品に通ずる恋愛絡みの曲も健在。ザ・モンスターズ・アンド・ストレンジャーズ(マルーン5、フィフス・ハーモニー等)がプロデュースしたドリーミーなエレクトロ・ポップ「ヴァルネラブル」も、決してポジティブなラブ・ソングではない。

 恋愛絡みで最も話題を呼んだのが、レトロな雰囲気の「カット・ユー・オフ」。この曲に登場する「1460日」という日数が、ジャスティンと交際していた期間を示しているとファンの間で盛り上がっているようで、共同制作者の女性ソングライター=ライザ・オーウェンも、それを仄めかせるようなコメントを残している。予想が事実と直結すればなかなか……だが、“こじらせた”感じがセレーナの魅力だし、こういう曲があってこそと、いえなくもないが。そういったありのままの自分を曝け出したのが、本作『レア』の醍醐味ともいえる。

 日本盤には、前述にある「イット・エイント・ミーwithカイゴ」と「バック・トゥ・ユー」、2017年にリリースした「バッド・ライアー」、「フェティッシュfeat.グッチ・メイン」、「ウルヴスwithマシュメロ」の計5曲が、ボーナス・トラックとして収録される。新作が、これらのシングル曲をコレクトした寄せあつめ集にならなかったことが何より。過去2作、1st『スターズ・ダンス』(2013年)、2nd『リバイバル』(2015年)はいずれも米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”でNo.1獲得を果たしている。新作『レア』で、デビュー作から3作連続の快挙達成となるか。「ルーズ・ユー・トゥ・ラブ・ミー」の快挙と共に、完全復帰からの快進撃がはじまる。

Text: 本家 一成


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