<コラム>70年代から続くアル・ディ・メオラの魅力

2020年1月2日 / 12:00

 名ギタリスト、アル・ディ・メオラがリターン・トゥ・フォーエヴァーの『銀河の軌映(Where Have I Known You Before)』で鮮烈なデビューを飾ったのは1974年、彼が20歳のときだった。翌1975年にはリターン・トゥ・フォーエヴァー『ノー・ミステリー』で「驚異の速弾きギタリスト」の評判はますます高まり、1976年には豪華メンバーを集めた初リーダー作『白夜の大地』をリリースした。今回の来日は、音楽活動45年を記念する「パスト・プレゼント・フィーチャー・ツアー」の一環だが、デビュー以来ずっとディ・メオラの活動をウォッチし続けてきた身としては感慨深いものがある。

技巧が支える幅広い音楽性

 デビュー当時しばらく、ディ・メオラは「正確で美しいフレーズを弾きまくる超絶技巧のギタリスト」という側面ばかりがクローズアップされてきたきらいがあった。しかし、今デビュー作を改めて聴いてみると、ジャズやフュージョンにとどまらない幅広い音楽性が、すでにこの時点でしっかりと提示されていたことに気づくはずだ。アコースティック・ギターによるバッハの小品、ディ・メオラが歌詞も書いたヴォーカル曲、ジャコ・パストリアスが参加した「組曲『黄金の夜明け』」、チック・コリアのアコースティック・ピアノのとのデュオ。

 そして1976年に録音され、翌1977年に発売された『エレガント・ジプシー』で、ディ・メオラは敬愛するフラメンコ・ギタリストのパコ・デ・ルシアと共演し、それをきっかけに彼はアコースティック・ギターによる演奏をより重視するようになった。パコ、ジョン・マクラフリンとの「スーパー・ギター・トリオ」による『スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!(Friday Night In San Francisco)』(1980年録音、1981年発売)、同じメンバーによるスタジオ録音『情炎(Passion, Grace & Fire)』(1983年) を聴くと、ディ・メオラがパコから受けた影響の大きさを実感することができる。そしてそのフラメンコへの憧憬は、現在に至るまでのディ・メオラの活動の根底にあるものだ。

傑作『オーパス』を携えて登場

 さて、今回の来日公演は、アコーディオンのファウスト・ベッカロッシ、ピアノのケムエル・ロイグとのトリオによるものだ。最新作『オーパス』(2018年)は、作曲家としてのディ・メオラの才能が全開になった、美しい旋律が次々に溢れ出てくる傑作だったが、そのレコーディングのキー・メンバーであるロイグ、ディ・メオラの音楽的パートナーとも言えるベッカロッシを引き連れてのステージは、『オーパス』の楽曲が中心になるのでは、と推測できそうだ。

 タンゴから出発したアストル・ピアソラが、ジャンルを超えた「美しい音楽」の巨匠になったように、ジャズ/フュージョンから出発したディ・メオラも、長い道程を経て、ジャンルを超越した「音楽家」になった。今回の公演は、そのことを実感させる素晴らしいものになることだろう。

TEXT : 村井康司

◎公演情報
【アル・ディ・メオラ】
<ビルボードライブ東京>
2020年2月3日(月)- 4日(火)
1stステージ 開場17:30/開演18:30
2ndステージ 開場20:30/開演21:30

<ビルボードライブ大阪>
2020年2月6日(木)- 7日(金)
1stステージ 開場17:30/開演18:30
2ndステージ 開場20:30/開演21:30

詳細:http://www.billboard-live.com/


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