『ホテル・ディアブロ』マシン・ガン・ケリー(Album Review)

2019年7月11日 / 18:00

 何かとお騒がせな、米オハイオ州出身の白人ラッパー=マシン・ガン・ケリーが、約2年ぶり、4作目となるスタジオ・アルバム『Hotel Diablo(ホテル・ディアブロ)』をリリースした。

 前作『ブルーム』からは、カミラ・カベロをフィーチャーした「Bad Things」が米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で4位をマークし、自身初のTOP10入りとなる大ヒットを記録。本作は、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で8位に、2012年にリリースしたデビュー作『レースアップ』は4位、2015年の2ndアルバム『ジェネラル・アドミッション』も同4位にランクインしていて、これまでリリースした3枚のアルバムはいずれも全米TOP10入りという快挙を達成している。

 昨年リリースしたEP盤『ビンジ』からは、エミネムとのディスり合いが話題を呼んだ「Rap Devil」がゴシップ・ネタとしても注目され、最高13位をマークするスマッシュ・ヒットを記録した。今作でも、エミネムについて触れた「Floor 13」という曲があるが、“時間をムダにした”というフレーズからも、どこか(対エミネムについて)冷めはじめた様子が伺えなくもない。おそらく、エミネムの「Killshot」についての言及なのだろうが、ディス・トラックとも少しニュアンスが違う気がする。

 「Floor 13」は、エレクトリック・ギターがアクセントになった、ロックとヒップホップの良いところをコンパイルしたミクスチャー・ソング。リリックの良し悪しは別として(?)、サウンド自体は男気溢れるカッコいい仕上がりになっている。レーベルやレコード会社に対する不満をぶつける「Hollywood Whore」も、ヒップホップというよりはミクスチャー・ロックに近いサウンドが特徴的で、アート・タッチなミュージックビデオでも、バンドをバックに従えて、ロック・シンガーのような振る舞いをした。

 5月にリリースした先行シングル「El Diablo」は、前述の「Rap Devil」や、火種となったエミネムの「The Ringer」をプロデュースしたロニー・Jがプロデュースを手掛けている。重量級のビートに乗せて、「落ち目」だと批判する“奴ら”に対して噛みつくマシンガン・ケリー。 今作ではこういった不満をブチまける歌詞が目につくが、世間の風当たりの強さに、相当ストレスが溜まっているの……かもしれない。

 攻撃的でネガティブなリリックも彼の“売り”だが、ラップスキルやサウンドセンスにも注目したい。たとえば、米LAのインディー・ポップ・バンド=フォスター・ザ・ピープルのマーク・フォスターが手掛けたネオ・サイケデリックのような「Sex Drive」や、 同じくLAの女性シンガーソングライター、ナオミ・ワイルドの透明感あるボーカルをフィーチャーしたミディアム・メロウ「Glass House」など、 ジャンルをクロスオーバーした傑作がある。こちらもナオミ・ワイルドがボーカルを担当した、10曲目の「Death in My Pocket」も好曲。

 アルバムと同日にリリースされた「I Think I’m OKAY」は、ジャンル区分すればポップ・パンクのような曲で、ここ最近ヒップホップ・アーティストのアルバムに頻出しているブリング182のトラヴィス・バーカーと、ヒップホップ~オルタナティブ・ロック、パンクまで網羅するイングランド出身のシンガーソングライター=ヤングブラッドの2人がゲストとして参加している。3月に2ndアルバム『Shelby』を発表したばかりのラップ界の新星=リル・スカイズがフィーチャーされた「Burning Memories」も、トークボックスを取り入れた意欲作だ。

 トリッピー・レッドとコラボした「Candy」も、ベースはヒップホップながら、どこかロックっぽい要素を含んでいる。未成年の少年たちが、タバコやドラッグに染まっていく様子を描いたミュージック・ビデオが衝撃的で、心情のみならず、現代社会の闇を訴えたリリックも色々と考えさせられるものがある。同ビデオには、アリアナ・グランデの元カレとしても知られるコメディアンのピート・デイヴィッドソンが出演した。

 その他には、前述の「Bad Things」やホールジー&G・イージーの「Him and I」、現在大ヒットしているエイバ・マックスの「Sweet but Psycho」などを手掛けたマディソン・ラブとの共作「Waste Love」や、Phemという女性シンガーがボーカルを務めるコカイン中毒について歌った「5:3666」など、それぞれ個性ある仕上がりになってはいるが、どこか既存感があるというか、誰かっ“ぽい”感じがしてしまうのが残念なところ。

Text: 本家 一成


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