『Nexus』は4人編成となったストレイテナーの真の1stアルバムと言っていい自信の漲った作品

2019年6月5日 / 18:00

6月5日のZepp Tokyo公演を皮切りに同世代3バンド、ACIDMAN、ストレイテナー、THE BACK HORNによる東名阪ツアー『THREE for THREE』が始まるということで(6月21日がZepp Nagoya、6月28日が Zepp Osaka Bayside)、今週はストレイテナーを取り上げるみた。いつも以上に個人的な見解が濃い原稿となってしまったのは少し反省しなければならないとは思うが、その分、いつも以上に正直に書いたので、その点をお含みいただければ幸いである。
異例と言える2人編成でデビュー

本稿作成にあたって、初めてストレイテナーのライブを見たのは2001年に行なわれたthe PeteBestとのスプリットツアー『DRAGORUM』だったかなぁ…などと思って、よくよく考えてみたら、それ以前に10-FEETだったかマキシマム ザ ホルモンだったかと対バンしていたのを見ていたような気もしてきた。どうもはっきりしない。未だ2人だった頃のストレイテナーを見ていることは間違いなく、“見た”という記憶はあるのだけれど、それが何時でどんなライブであったのか、まったく思い出せない。当時の彼らにインタビューでもしてその記事が残っていたとしたら、“そうそう、そうだったそうだった”などとなるのだろうが、それもないし、加齢によって短期記憶ですら怪しいのでそもそも如何ともし難いのだが、正直に言えば、筆者自身にとってその時の彼らが興味を惹かれるものではなかったからだと思う。上からの物言いとなってしまって申し訳ないけれども、それはあくまでも筆者だけにとってのことだったとご理解いただきたい。

その印象が少し変わったのは、2004年の『ROCK END ROLL』の時。この年からストレイテナーに取材させてもらうようになり、ホリエアツシ(Vo&Gu)とナカヤマシンペイ(Dr)両名に話をうかがったのだが、メジャーデビューフルアルバム『LOST WORLD’S ANTHOLOGY』から約半年後という短いインターバルで発表された『ROCK END ROLL』に何か熱いものを感じた。流石にどんな話の展開だったのかは記憶にないけれども、当時は未だ“レギュラープレイヤー”という肩書だった日向秀和(Ba)の名前を挙げて“サポートの日向さんとのアンサンブルもこなれてきた感じなんでしょうか?”みたいなことを言ったんだと思う。すると、ナカヤマが間髪入れず、“いや、(日向は)サポートではないですね。もうメンバーの1人です”と言い切った。当時、日向はART-SCHOOLを脱退してZAZEN BOYSのベーシストであったし、正式メンバーとしてバンドを掛け持ちするアーティストがまだそれほど多くない頃だったので(思えば日向はその先駆者だ)、最初は“ほとんどメンバーの1人と言っていいほどのサポートプレイヤーなのだろうな”と思っていたら、本当に正式加入していて少し驚いた。そして、あとになって『ROCK END ROLL』から何か熱いものを感じたというのはそういうことだったのかと妙に納得したものだった。

そこからストレイテナーには彼らがアルバムをリリースする毎に取材させてもらう機会に恵まれ、何度もホリエに話を聞いたのだが、実は彼とのインタビューが大きく盛り上がった印象がない。もちろんそれはストレイテナーやホリエに何か瑕疵があったとかいう話ではなく、筆者の場合がそうであったということで、完全に自分の訊き手としての力不足が原因だったと振り返るが、とにかく訊くことに窮した。今もよく覚えているのは、確か2006年の『Dear Deadman』リリース時の取材だったと思うのだけれども、“それでは、そうした楽曲が収録されたアルバムにこのタイトルを付けたのはどういう意図があったんでしょう?”みたいなことを訊いた時、“それを考えるのは僕じゃないでしょう”と返答されたことだ。物腰はやわらかかったので、○○○○○○や△△△△(※共に自主規制)に対峙した時のようなピリッとした緊張感ではなかったけれども、“さて、どうしたものか?”と焦った記憶は今も残っている。彼にはその手の質問はご法度であることは充分に認識したが、それ以後の取材では、楽曲のことを尋ねるにしても“この楽曲の背景は?”なんて訊けないだろうし、かと言って、その楽曲に対するこちらの印象を多めに語ってしまうと、インタビューではなく訊き手の感想文になりかねないし……なんて考えた。自分にとってのストレイテナーのインタビューはいつ頃からか憂鬱な案件となったし、包み隠さずに告白すると、彼らの音楽からの興味を失っていった。

そんな状態でのインタビューでもその原稿は世に出たのだが、やはりこちらの精神状態が行間に出てしまうのか、ストレイテナーと仲のいいバンドのあるメンバーから、それを指摘されたことがある。そのバンドの取材を終えてから、「前号のストレイテナーのインタビューを読んだんだけど、あれはないよ。(ホリエの意図を)分かってないね」と言われたのだ。かなりドキッとした。駄文に目を通してもらったのもありがたかったけれども、それが駄文であったことを白日の下に晒されるのは究極にばつが悪い。今もその時の叱咤には感謝しているし、大いに反省もしたのだが、そうは言っても、そこで彼らの音源への興味が出たかというとそんなことはまったくと言っていいほどなく、以後、それが傍からどう見られたかはともかく、仕事としてやるべきことをやった…という感じだった。念のため、再度断っておくが、そこにストレイテナーやホリエアツシに何かあったわけではない。単にこちらがインタビュアーとして実力不足だっただけの話だ。
3ピースから4人編成へと究極進化

個人的にはそんな風に捉えていたストレイテナーなので、2008年に大山純(Gu)が加入するとの報を聞いた時もさほど驚きはしなかった。そもそもスタート時のストレイテナーはボーカリスト兼ギタリストとドラマーという変則的な布陣であったので、正規のベーシストが加入して3ピースバンドとなり、そこへさらに二人目のギタリストが加わってスタンダードなロックバンドのスタイルとなること自体、非難すべき要素はどこにもない。それが、スタッフがどこかから連れてきた得体の知れない人物であるのなら別だが、大山は日向と同様に元ART-SCHOOLのメンバーで、ホリエ、ナカヤマとも友人であって気心が知れているとあれば、むしろ歓迎されることであろう。その時もそんなことを思った気がする。驚いたのは、4人編成での最初のアルバム『Nexus』を聴いた時だ。人が変わればバンドの音は変わるとは知っていたけれども、それを本当に実感したのはこの『Nexus』が初めてだったと思う。そうなるとこれが現金なもので、『Nexus』発売時にもホリエにインタビューさせてもらったのだが、その時はまったく憂鬱ではなかったことをよく覚えている(苦笑)。

さて、ここから『Nexus』の話。今改めて聴き直してみても、新メンバーが加わって4人編成となったことに対する自信が漲ったアルバムであることが分かる。オープニングM1「クラッシュ」のサウンドはまさしくその自信を具現化したような印象だ。4つの音のユニゾンっぽいイントロから始まって、一旦のブレイクのあとで、アルペジオのギターが奏でられて、そこにもう1本のギターとリズム隊が重なる。それまでの音源以上に4つの音が重なってひとつのバンドの音となっていることが強調されている。後半に進むに従ってすべての音が密集していくが、それぞれが実にエモーショナル。感情の赴くままに各々のフレーズを表現している様子もとてもいい。スリリングであるものの、キリキリとした嫌な緊張感ではなく、複数人での優れた体操やダンスを見ているかのような清々しさもある。

そうした、この時点での新しいバンドアンサンブルだったと言えるサウンドはM4「Lightning」やM6「蝶の夢」でも顕著に表れていると思うが、テンポがミディアムだからこそ、M4「Lightning」の方がその差異が分かりやすいだろうか。ループするエレピ、ベース、ギター。そして、パッと聴き、ナカヤマらしからぬ印象のある淡々としたドラミング。いずれも一見、地味に思えるが、お互いがお互いを支え合って独特のグルーブを生み、そこに流麗なメロディが乗った秀曲である。聞けば、[元々は日向と大山で制作していたものにホリエのピアノが合わさって完成した曲]だそうで([]はWikipediaからの引用)、曲そのものにバンドが4人編成になった効果がはっきりと表れていたと言える。M2「Little Miss Weekend」やM8「Stilt」、M10「ネクサス」といったグイグイと迫るギターバンドならではのロックチューンは、それまでもストレイテナーらしさではあったが、新たなバンドアンサンブルで繰り広げられることでさらに輝きを増した印象もある。個人的に最も活き活きとしていると感じるのはナカヤマのドラム。M6「蝶の夢」のビートが若干、突っ込み気味なのもとてもいいし、M5「Magic Blue Van」後半のサビでドラムのオカズが力強く聴こえるのも気のせいではなかろう。思わず全面的に支持してしまう。
バンドの進化でサウンドも歌詞も変化

アルバム『Nexus』で最も驚いたのは歌詞の変化だった。アルバム名に“つながり”や“結び付き”という意味があるからか、本作の歌詞のほとんどに“他者と手をつなぐ”といったテーマが横たわっている。それまでのホリエの歌詞にそういった要素がまったくなかったとは言わないけれども、ここまで多かったのは『Nexus』が初めてだろう。

《そして未来は訪れる/沈み行く太陽は月の影を白く染める/いつか願いは届いて/古ぼけた光が深い闇に消えていくよ》《今夜この街にいるすべての人が/同じ夢を見ているんだって》(M1「クラッシュ」)。

《気流が乱れてうまく飛べないけれど/少しでもいいから近付いていたい/煙る雨 軋む羽/未来へと運ぶ舟》《思考が暴れてうまく言えないけれど/今だけでいいから抱き締めていたい/強く願い 繋ぐ世界/未来へと拓く瞬間まで》(M3「Ark」)。

《生きていたい/いつまでも消えない炎で/肉体を失ってもこの思いだけ》《君がいてくれたら/他に何も望まない》《STRIKE ME WITH LIGHTNING/THEN I COULD COME BACK TO YOUR WORLD》(M4「Lightning」)

《僕らはたまたま同じ船に/乗り合わせただけの赤の他人/明日はすべてが嘘になっても/今日が本当なら大切にしたいよ今を》《生まれて死ぬまで平和を知らずに生きている/子供達へ》《遠回りして迷い込んだ路は/幼い日に見失った景色/僕らはたまたま同じ船に/乗り合わせただけの赤の他人じゃないのさ/わかっていたんだ》《ここでリンクした/ここにリンクした/遠い旅の空の下で》(M10「ネクサス」)。

当時インタビューで、この変化したと言っていい歌詞についての質問を、ストレートにホリエへぶつけると、彼もそこには自覚的だったようで、以下のような返答が戻ってきた。“今までは自分の内面から湧き出てくるものや内側に込めたメッセージを、そのままではなく落とし込みたいと思っていたんですけど、今回は自分の中から…ではなく、自分がおもしろいと思ったものを作りたいという意識があって。今まであまりしてこなかったことをストレートに書くものアリだなと気付いたんですよね”。そのこととバンドが4人編成となったことは因果関係があったのかと突っ込むと、“そうですね”と即答。“曲の世界観が鮮明というか、今までは自分が歌ってみないとその曲が持っている世界が分からないというようなところがあったけれども、4人になってからは自分が歌を乗せる前から曲の世界観が見えちゃう──そういう変化はあるかもしれないです”と続けた。それまでは“暗い曲だけど歌詞では明るいことを言ってみよう”といったところがあったと言うが、本作では暗いなら暗い、明るいなら明るいで、ストレートに書いたという。言い換えれば、分かりやすくなったとも言えるが、それ故に自分のようなものにも理解しやすく、共感し易いアルバムであった。

『Nexus』以降、ストレイテナーにインタビューする機会がなくなったので、オリジナルフルアルバムをちゃんと聴いておらず、もしかすると6th『CREATURES』から10th『Future Soundtrack』に至るまでに彼らの名盤と呼べる作品があるのかもしれないけれども、ここまで綴ってきた経緯から『Nexus』を個人的にはストレイテナーの名盤としたい。そのインタビューでホリエは本作を“これが1stですからね”とも語っていたから、あながちミスチョイスではないだろう。
TEXT:帆苅智之
アルバム『Nexus』
2009年発表作品

<収録曲>

1.クラッシュ

2.Little Miss Weekend

3.Ark

4.Lightning

5.Magic Blue Van

6.蝶の夢

7.Black Hole

8.Stilt

9.イノセント

10.ネクサス


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