『ラヴ+フィアー』マリーナ(Album Review)

2019年4月30日 / 18:00

1985年生まれ、英ウェールズ出身。マリーナ・アンド・ザ・ダイアモンズの名前で知られるマリーナは、メディアや評論家から高く評価されている、2010年代のイギリスを代表する女性シンガーソングライター。ハスキーでミステリアス、そしてエモーショナルなボーカル。ジャンル区分するのが難解な、独自のソングライティング力。そして、蠱惑的な美貌。アーティストに求められる全てを兼ね揃えたその様に、自身も敬愛するケイト・ブッシュの再来とまで絶賛されている。

 日本をはじめ、アジア諸国では浸透率が低いものの、アメリカでは2015年にリリースした前作『Froot』が最高8位をマークし、人気・知名度を高めている。一方母国イギリスでは、2010年のデビュー・アルバム『ザ・ファミリー・ジュエルズ』が5位、「プリマドンナ」含む2012年の2ndアルバム『エレクトラ・ハート』が自身初のNo.1獲得を果たし、前作『Froot』も10位にランクイン。デビューから3作連続のTOP10入りを果たす、絶大な人気を誇っている。

 本作『ラヴ+フィアー』は、その『Froot』からおよそ4年ぶり、自身4枚目のスタジオ・アルバム。マリーナ・アンド・ザ・ダイアモンズから“マリーナ”に改名してから初のアルバムで、心機一転、再出発を期すべく重要な作品となる。タイトルが示しているように、前半8曲が『ラヴ』サイド、後半8曲を『フィアー』サイドに分けた2部構成になっていて、『ラヴ』に収録されたナンバーは同月4月4日に先行リリースされた。

 昨年11月にリリースされた、クリーン・バンディットの新作『ホワット・イズ・ラブ?』のリード・トラック「Baby」が、本作からの1stシングルとして『ラヴ』サイドに収録されている。この曲は、プエルトリコのラテンシンガー=ルイス・フォンシを加えた、ラテン・ハウスの真骨頂ともいえるダンス・トラックで、ルイス・フォンシはスペイン語と英語を使い分け、マリーナはエキゾチックなボーカルでよりムードを強調している。フラメンコやコンガのリズムも取り入れた、本作中最も華やかな一曲。クリーン・バンディット名義のタイトルだからか、若干浮いている感じも否めない。

 一方、今年2月にリリースされた「Handmade Heaven」は、 エレクトロ・ポップを下敷きに、讃美歌や子守歌のような要素も含んだ、マリーナらしいタイトル。ロードやラナ・デル・レイの亜流といわれそうではあるが、マリーナのキャラクターにはぴったりハマっている。プロデュースは、そのロードやR&Bシンガーのカリード、ショーン・メンデスなどを手掛けるニュージーランドの音楽プロデューサー=ジョエル・リトル。ジョエルとは、マイナー調のミディアム「To Be Human」でも共作。意味深な歌詞と、ミステリックなサウンドが、聴き終わった後も脳裏をよぎる。

 前曲「Handmade Heaven」のムーディーな雰囲気を引き継いだ「Superstar」は、米LAを拠点とする音楽プロデューサー=サム・デ・ジョン(リトル・ミックス、ディスターブド等)と、米LAの音楽プロダクション・チーム、キャプテン・カッツが手掛けたナンバー。マドンナの「Frozen」(1998年)を彷彿させるミッドテンポのエレクトロ・メロウで、マリーナのチェストとファルセットの境を曖昧にした ボーカルが、曲の持ち味を引き出している。サム・デ・ジョンは、『フィアー』サイドに収録された「Emotional Machine」、「Too Afraid」、そしてラストのピアノ・バラード「Soft to Be Strong」の3曲もプロデュースしている。

 アルバムの発売直前、米テレビ番組『レイト・ナイト・ウィズ・セス・マイヤーズ』で披露した「Orange Trees」もすばらしい曲。同曲は、スウェーデンの男性シンガーソングライター=エリック・ハッスルとの共作で、基はダンス・ポップだが、どこか民族音楽的な要素を感じる、不思議で中毒性の高いナンバー。その不思議な世界観を身体で表現した、TVでのパフォーマンスも見事だった。プロデュースは、同ウェーデン出身の音楽プロデューサー=オスカー・ゲレス(マルーン5、DNCE等)。

 『フィアー』サイドの目玉は、 何といってもニュージーランド出身の兄妹デュオ=ブルーズとのコラボ曲「Emotional Machine」。妖艶な雰囲気のエレポップに乗せて、マリーナが終始、浮遊感漂わすボーカルで魅了する。後半で聴かせるハイトーン・フックには、その流れに身を任せるしかない。かと思えば、前述にある「Too Afraid」で、壊れそうなほどやさしさに溢れたボーカルを聴かせるから凄い。マリーナの魅力は、やはり独創性のあるボーカルにある。「Too Afraid」は、リアーナやラナ・デル・レイ、エリー・ゴールディングなどのタイトルを手掛ける、イングランドの音楽プロデューサー=ジャスティン・パーカーがソングライターとしてクレジットされている。

 「愛」と「恐れ」という2つの感情をそれぞれ表現した、マリーナの最新作 『ラヴ+フィアー』 。(ラヴ)には愛や幸せ、平和などの肯定的な歌詞が、(フィアー)には、怒りや憎しみ、不安などの否定的な感情が詰まっていて、アルバムのコンセプトに則った、すばらしい作品に仕上がっている。“マリーナ”として再出発した彼女が、再びシーンで注目される日も近い。

Text:本家一成


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