14作のミリオンセラーを記録しているMr.Childrenを探求「臼井孝のヒット曲探検隊 ~ アーティスト別 ベストヒット20」

2019年4月19日 / 18:00

(okmusic UP's)

CD、音楽配信、カラオケの3部門からヒットを読み解く『臼井孝のヒット曲探検隊』。この連載の概要については、第1回目の冒頭部分をご参照いただきたい。ただし、第5回の安室奈美恵からは2017年末までのデータを、そして前回の松任谷由実からは2018年までのデータを反映している。今回はMr.Children(以下、ミスチル)の総合的なヒットについて迫ってみたい。
「CROSS ROAD」で初のミリオン、 アルバムは10年代までメガヒット継続

ミスチルは、桜井和寿(主なパート(以下同):ボーカル&ギター)、田原健一(ギター)、中川敬輔(ベース)、鈴木英哉(ドラムス)からなる全員69年~70年生まれの同級生4人組で、92年にアルバム『EVERYTHING』でメジャーデビューを果たした。FMラジオ局や衛星波の音楽専門チャンネルにて人気を高めていたところ、翌93年に4thシングル「CROSS ROAD」がドラマ『同窓会』(日本テレビ)の主題歌に起用される。様々な愛の形を取り上げた当時としてはかなり画期的なドラマだったことと、新進気鋭のバンドが起用されたこと。そして、何よりメッセージ性が強くありつつ押韻や対句表現の多い文学的な歌詞や、それを伝えうる繊細さと大胆さを併せ持った歌声、演奏との相性が抜群で、初動6.5万枚から番組終了後もロングヒットを続け、累計125万枚を超える自身初のミリオンセラーとなった。これを皮切りに98年まで合計10作ものシングルでミリオンセラーを記録、またアルバムではCDバブル期をとうに過ぎた00年代や10年代も含め合計14作のミリオンセラーを記録している。
また、ミスチルは大型タイアップのついたシングルや、それら強力作を多く収録したオリジナルおよびベストアルバムを発売する一方で、ヒット確実な時期に敢えてより自由に制作できるノンタイアップ・シングルや、アルバムからのリカット・シングルを発売し、その商業性と音楽性のバランスの両極を往来することで、この25年以上の間、コアファンとライトファンを上手に育ててきている。
彼らのヒット曲は非常に層が厚いので、この3部門で切り取ってみることは他のアーティスト以上に有意義になるはずだ。
総合1位はドラマ『若者のすべて』 主題歌の「Tomorrow never knows」

総合1位は最大ヒットシングルの「Tomorrow never knows」となった。CD、配信、カラオケ全てTOP10入りしているのはなんと本作のみ。いかにミスチルの人気10曲というのが、見方によって大きく変動するということが分かる。

「Tomorrow never knows」は94年から95年にかけて277万枚を売り上げ、これは当時の年間1位シングル(94年度 Mr.Children「innocent world」181万枚、95年度 DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」235万枚)を上回るほどの特大ヒットだ。本作はドラマ『若者のすべて』(フジテレビ)の主題歌に起用されたロッカバラード。《果てしない闇の向こうに/手を伸ばそう》と自らを鼓舞するエールソングがドラマの内容とも大いにリンクしたのだろう。この《果てしない~》の部分で、桜井がスケールの大きな断崖絶壁に立って歌っているところを、空中から撮影するというミュージックビデオも楽曲の魅力を増幅したことだろう。
総合2位は『コード・ブルー』 シリーズで配信とカラオケが 大ヒットの「HANABI」

そして、2位にはCD部門が23位ながら、配信やカラオケがダントツ1位の08年シングル「HANABI」。ただ、CDでもTOP100内の登場週数は6番手のロングヒットで、支持されている年代層はミスチルの中で最も幅広いかもしれない。

本作は、08年、10年、17年と大ヒットを重ねてきたドラマシリーズ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ)の主題歌。1stシーズンとなる08年にはCDが発売され約47万枚のヒットとなり、3rdシーズンが放送された17年にはダウンロードが開始され、レコチョク年間2位、カラオケ28位と、劇場版も公開された18年もレコチョク年間18位、カラオケ23位となって、配信とカラオケの圧倒的な人気から総合2位となった。

サビの《もう一回 もう一回》という歌詞に象徴されるように不屈のチャレンジャー精神を歌った歌詞とドラマが密接にリンクしていることも、大ヒットの要因だろう。また、LIVEでもその部分で観客が人差し指で「1」を作りながら、大いに盛り上がることでも有名だ。
総合3位は「名もなき詩」! 上位3作がフジテレビ系ドラマ主題歌に

さらに総合3位には、ドラマ『ピュア』(フジテレビ)の主題歌となった96年の「名もなき詩」となり、TOP3はすべてフジテレビ系列のドラマ主題歌が独占した。いずれもラブ・コメディーというよりも、ヒューマン・ドラマといったものが共通しているのも、葛藤しながらも前向きに人生や恋愛に取り組んでいくミスチルらしいラインナップと言えるだろう。

「名もなき詩」はCDシングルが200万枚を超えており、Wミリオンのシングルヒットを複数有するアーティストは、CHAGE&ASKA(「SAY YES」、「YAH YAH YAH/夢の番人」)とミスチルの2組のみ。しかも、本作はドラマ『ピュア』の主題歌となっており、これら4曲ともが90年代のフジテレビのドラマ主題歌に起用されており、この座組が当時のヒット曲と密接に関わっていたかが分かる。

ちなみに本作は初登場時、週間売上120.8万枚を売り上げ、これはAKB48が現れるまで長らく史上最高の数字だった(これは、92年5月から97年1月までのCDは、月曜発売の場合、前週の金曜日のフラゲ日からの実質10日分の売上がカウントされていたことも大きいが、それでも、1人が大量に購入したことによるヒットではないので、間違いなく200万人以上が購入しているだろう)。

本作は愛する“君”に宛てたラブソングでありながら、心の葛藤をさらけ出したような鋭い言葉が散りばめられた激しいロックナンバー。AメロやBメロでは、荒んだ心情を低音で吐き出すように歌いつつ、サビでは“ピュア”な想いを高音で解き放つように歌うというパフォーマンスから桜井のボーカリストとしての力量も感じさせる。
7位と10位には“記憶の名曲”と言える「抱きしめたい」と「365日」

さらに4位以下を見渡すと、7位に初期のシングル曲(または同時発売のアルバム『KIND OF LOVE』収録曲)の「抱きしめたい」や10位にアルバム『SENSE』収録の「365日」など、CD部門の上位には決して現れない楽曲がTOP10入りしているのも興味深い。これもデビューから26年を経た、間違いのない“記憶の名曲”と言えるだろう。
このうち「抱きしめたい」はアルバム『KIND OF LOVE』との同時発売ということもあり、オリコンTOP100にチャートインせず、メガヒットを連発した95年になってようやく最高位56位をマークするものの、オリコン累計では10万枚に満たないセールス記録となっている(実際には、101位以下で長く売れ続けているので、実売ではもう少し売れているだろうが)。

ただし、アルバムのほうは初登場45位でいったんチャートから外れるものの、93年の3rdシングル「Replay」や続く3rdアルバム『Versus』の評判から再度TOP100入りし、4thシングル「CROSS ROAD」のヒット以降徐々にセールスを積んで、95年には最高13位をマークし、やがてミリオンヒットを記録している(累計約118万枚)。

「抱きしめたい」は強い愛を歌ったバラードで、ミスチルの中では比較的歌いやすいストレートな曲調なのも人気の要因だろう。演歌歌謡歌手の平浩二の楽曲「ぬくもり」の歌詞が、この「抱きしめたい」と酷似している(のちに指摘を受け発売中止になった)ことも話題となったが、言い換えれば演歌歌謡にも自然に馴染むような“ぬくもり”のある歌詞ということだろう。

なお、同アルバム収録の「星になれたら」もカラオケ17位にランクイン。他にも、「車の中でかくれてキスをしよう」など、様々なラブソングが詰まっている(まさに『KIND OF LOVE』!)ことも、本アルバムが長く支持された理由と言える。
そして、緩やかな楽曲ばかりではなく、総合4位に94年の「innocent world」、総合5位に95年の「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌」と軽快なギターロックチューンが入っている。近年はミスチルゆえに壮大または重要なテーマのタイアップの楽曲がオファーされ、それに応じた楽曲が作られていることが多いが、この90年代のように青春を彩ったポップな楽曲もミスチルの大きな魅力の部分なので、今後もこうした代表曲が生まれるのを期待したい。
ミスチルに非常に少ない 楽曲の特徴とは!?

それにしてもミスチル作品で、サビから始まる人気曲はかなり少ない気がする。少なくとも上位20曲は全て曲のラストにサビが来るし、そこそこ有名なもので探すと93年の3rdシングル「Replay」(オリコン最高19位、累計約9万枚)があるのだが…。他の90年代アーティストでも、それ以前の歌謡曲時代のアーティストでも、さらに00年代以降のデビュー組でもサビ頭のヒット曲は多数あるのに、ミスチルには1曲もない、そもそも殆ど作っていないというのは非常に大きな特徴だと思う。
それらサビ頭の超キャッチーな楽曲を作ることは、タイアップ至上主義だった90年代において、最も効果的な戦術であったはずだ。しかしながら、ミスチルも多数タイアップがある中で、そうした楽曲制作を行わなかったのは、その断片的なインパクトよりも、楽曲全体で伝わるメッセージを大事にしてきたということではないだろうか。だからこそ、こうして後世まで歌い継がれている楽曲が多いのだ。
プロフィール

臼井 孝(うすい・たかし)

1968年京都府出身。地元大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析や配信サイトでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪


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