THE ORAL CIGARETTES、あらゆる感情をエンターテイメントに昇華したツアーファイナル<ライブレポート>

2019年3月24日 / 12:10

 THE ORAL CIGARETTESが、全国ツアー【Kisses and Kills Tour 2018-2019 Arena series ~Directly in a wide place~】のファイナル公演を、3月17日神奈川・横浜アリーナにて開催した。

 前半15公演をライブハウス・シリーズ、後半4公演をアリーナ・シリーズと名を打ち、約半年に渡るツアーを敢行したTHE ORAL CIGARETTES。ツアーファイナルとなる今回の横浜アリーナ公演は、その集大成に相応しく、ライブハウスの熱さと、アリーナのスケール感が合わさった絶対的なライブとなった。

 今回の公演の軸となるのは、最新アルバム『Kisses and Kills』のコンセプトでもある<Kisses=愛>と<Kills=憎>。「感情は自分だけに向けるものだけではなく、人の感情とぶつけるもの。それがあなたたちは今できていますか?」と山中拓也(Vo.)が語る通り、この公演を通して彼らが問いかけたのは、オーディエンス一人一人の“感情”の在り方だ。

 ライブ前半は、<Kisses=愛>をテーマに、オーラルの持つ「光」の部分にスポットを当てた楽曲が続く。序盤は「もういいかい?」「容姿端麗な嘘」といったアッパーなナンバーで高揚感を高めつつ、虹色のレーザーが飛び交いながら「広い世界の暗闇 越えていけるのあなたと」と愛を歌う「LOVE」、無数のシャボン玉が幻想的なムードを創り上げたバラード「不透明な雪化粧」など、ワンマンならではのコンセプチュアルな演出で、多幸感に溢れた空間を創り上げていった。

 続けて、「アリーナできるようにはなったけど、やっぱ変わりたくないんですよね」とメジャーデビュー曲「起死回生STORY」を投下。「僕らだけがライブを作っても意味ないんですよ!」とヒリヒリとした焦燥を露わにしながら、シンガロングやクラップで一体感を煽っていく。その後も「リブロックアート」「トナリアウ」と疾走感に満ちた楽曲で会場の熱を保とうとするその姿からは、ライブハウスの熱さをアリーナにも持って行かんとする気迫がひしひしと伝わってきた。

 前半ラストは、山中の弾き語りによる「ReI」。慈愛に満ちた表情でそっと寄り添うように歌い上げる「ReI」は、強く背中を押してくれるようなバンドバージョンとはまた違った心強さがあった。

 「ReI」の余韻が残る中、ライブは<Kills=憎>サイドへ。スクリーンに【愛が歪んだ先の憎しみを この先は与えよう】という言葉が映し出され、不穏な空気に包まれたまま後半戦がスタートする。重ためのビートが禍々しいムードを醸し出す「Ladies and Gentlemen」、攻撃的なサウンドと天邪鬼な歌詞が突き刺さる「PSYCHOPATH」など、負の感情を全面に押し出した楽曲から始まった<Kills>サイド。さらに、「ワガママで誤魔化さないで」や「LIPS」では、「孤独」「欲望」といった単純に負と括るには難しい心情をもさらけ出し、オーディエンスの感情を揺さぶっていく。この後のMCで山中は「元々ロックなんて弱虫がやるものなんです。だからこそ説得力がある。だから弱くていいんですよ。自信持ってください」と語っていたが、その言葉を裏付けるための一幕が、この憎しみという名の弱さを痛々しいまでに体現する<Kills>サイドだったのかもしれない。

 またMCでは、以前横浜アリーナで先輩のバンドを観て悔しい気持ちになったことを吐露しながら、「オーラルにしかできない攻め方って何なのかすごく考えてる」と語る。続けて、「みんながロックスターやって崇めるような海外級のアーティストが日本から出てきたら誇らしいやん。それが俺らかはわからへんけど、俺らはそこ目指してやってくつもりです」と宣言し、会場からは大きな拍手が上がった。

 その宣言を形にするかのように、終盤は怒涛のキラーチューン祭り。「CATCH ME」「カンタンナコト」「狂乱 Hey Kids!!」とノンストップで駆け抜け、ラストの「BLACK MEMORY」では、中西雅哉(Dr.)も思わず「あんなの聴いたことない!」と漏らすほどの大合唱が巻き起こった。それらを経て、アンコールで演奏されたのは「ONE’S AGAIN」。「この歌を僕らの覚悟にしよう」という一節が、これからの道を切り拓いていこうとするオーラルの決意の歌のように聞こえた。

 しかし、ここで終わらせないのがTHE ORAL CIGARETTES。彼らがラストナンバーに選んだのは、「嫌い」だ。「俺らがきっと求めているのは、愛情や憎しみや冷たさや暖かさ。俺らは感情にこだわり続けます。この世から人間の感情が無くなりませんように」と始まったこの曲で表現されていたものは、愛であり、憎しみであり、愛でもなく、憎しみでもない、まさに人間の感情そのものを表したようなオルタナティブな世界だった。演奏終了後、一瞬訪れた12,000人の沈黙が、彼らがこの公演で伝えたかったことなのではないだろうか。

 ロックバンド的な熱狂感覚だけではなく、どこか一本の映画を見たようなエンターテイメント性も感じられた今回のツアーファイナル。これからの彼らは“日本のロックバンド”として、どんなストーリーを描いていくのだろうか。THE ORAL CIGARETTESは今後、5月に初のアジアツアー、9月には初の野外主催イベントを2daysで開催する。もちろんフェスにも多数出演が予定されているが、この絶対的な世界観を味わえるワンマンにこそ、是非足を運んでみてほしい。

Photo:Viola Kam (V’z Twinkle Photography) / 鈴木公平
Text:Mika Fuchii

◎公演情報
【Kisses and Kills Tour 2018-2019
Arena series ~Directly in a wide place~】
2019年3月17日(日)
神奈川・横浜アリーナ
<セットリスト>
1. What you want
2. もういいかい?
3. 容姿端麗な嘘
4. LOVE
5. A-E-U-I
6. 不透明な雪化粧
7. 起死回生STORY
8. リブロックアート
9. トナリアウ
10. ReI
11. Ladies and Gentlemen
12. PSYCHOPATH
13. DIP-BAP
14. ワガママで誤魔化さないで
15. LIPS
16. CATCH ME
17. カンタンナコト
18. 狂乱 Hey Kids!!
19. BLACK MEMORY
EN1. ONE’S AGAIN
EN2. 嫌い

◎ツアー情報
【THE ORAL CIGARETTES KK Tour 2019】
2019年5月11日(土)上海
2019年5月12日(日)北京
2019年5月30日(木)台湾・台北 THE WALL
※上海・北京の会場やチケット詳細は後日発表

◎イベント情報
【THE ORAL CIGARETTES主催 泉大津フェニックス2daysイベント(仮)】
2019年9月14日(土)15日(日)
大阪・泉大津フェニックス


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