今が“旬”のジョニー・へイツ・ジャズ!“スタイリッシュなパンク・ミュージック”に心揺さぶられる厳冬の夜

2019年1月23日 / 14:00

 Turn Back The Clock!(時を巻き戻せ!)――まさに、そう叫びたくなるような80年代の煌びやかなポップス。シンセ・サウンドとドラム・マシーンに彩られたピュアなハートとビターな近未来。

 今も胸がキュンとしてしまう「Shattered Dreams」(1987年)の性急なビートと甘酸っぱいメロディ――まるで何かを思い詰めたかのように無垢な想いを綴った詞が歌われてから、もはや30年以上の時が流れたわけだけど、この曲から放たれる“永遠の青春性”とも言えるほろ苦い空気と言ったら……。久々に聴いて不覚にも熱いものが込み上げてきてしまったのは、決して僕だけではないはずだ。

 クラーク・ダッチェラーの脱退やカルヴィン・ヘイズの負傷など、想定外の不運が相次いだために活動期間は短かった(85~88年)ものの、多くの音楽ファンに鮮烈な印象を焼き付けたジョニー・へイツ・ジャズ(以下、JHJ)。約20年の“空白”を経て2007年に再結成され、09年にはオリジナル・ヴォーカリストのクラークが復帰して活動に弾みがついた彼らが今宵『ビルボードライブ東京』のステージに立った!

 パンク~ニュー・ウェイヴのスピリッツとニュー・ロマンティックスやシンセ・ポップのサウンドを併せ持った音楽性で、デビュー作の『Turn Back The Clock』(87年)が全英1位・全米2位を獲得したJHJ。スタイリッシュなサウンドに英国のヤング・ジェネレイションのメンタリティを乗せた数々のナンバーは、アプローチこそ異なるが、スタイル・カウンシルやブロウ・モンキーズ、あるいはティアーズ・フォー・フィアーズなどの在り方と符合する。名刺代わりの1曲である冒頭のナンバーや「I Don’t Want Be A Hero」(87年/反逆のヒーロー)に象徴される世界観は、社会へのフラストレイションを抱えていた当時のイギリスの若者や庶民の心をガッチリ掴んだ。

 13年には22年ぶりとなる3枚目の作品『Magnetized』をリリースし、同名のシングルもドロップした彼ら。洗練された音作りも格段にこなれ、歳を重ねたメンバーの成熟と歩を揃えるかのように深みを増している。ひょっとすると、JHJは今が“旬”なのでは?そう感じさせる充実ぶりに、ファンとしては気分が盛り上がるのも無理はない。

 80年代からのファンと思しき人たちよるテンションの高い歓声に包まれながら登場した5人のメンバー。クラークは予想外と言っていいほどフレンドリーな雰囲気を振りまきながら、初っ端から手拍子を叩いて会場を盛り上げていく。ゆとりを感じさせながらもキレのいいリズム。もはやトレードマークとも言える洗練されたサウンドが鳴り響き、ステージは一気に華やいでいく。曲ごとに短いエピソードを話しながらオーディエンスに語りかけていくクラークは、フロントにふさわしいショウマンシップを遺憾なく発揮。ハッピーな空気を発散していく。

 ハイトーンの声が艶めかしくファルセットに移ろっていく。その声質から滲みだす青臭いほどピュアな意思と心の揺らめきは、聴き手の胸に少しずつ波紋を広げていく。肉体性をあまり感じさせない音とエモーショナルな歌が会場に美しいコントラストを形づくりながら心地好く響く。それは単なるノスタルジアではなく、時代を超えて、もはやモダンだ。そんな音楽が2019年の始まりに東京で鳴り響くミラクル。

 中盤にはアコギの音を効果的に使ったEW&Fのカヴァーや翳りのあるスロウ・ナンバーを織り交ぜ、陰影のあるステージを展開。また、後半はバンド・サウンドにアレンジされた聞き覚えのある麗しい旋律が次々と披露され、ロマンティックなムードと淡い追憶感覚が交錯していく。リズムに多彩さが加わったサウンドと都会的なヴォーカル。どこか浮世を忘れさせてくれるような耳ざわりに、気が付くと忽然としている自分がいる。しかし、苦みを伴った歌詞からは、現実を直視するような緊張感が漂う瞬間も。また、その一方では明るい近未来を匂わせる甘美さも広がっていく。

 もちろん、最後に奏でられたのは“永遠の青春性”を今も放つ「あの曲」。アンビヴァレントなリリックとサウンドが“スタイリッシュなパンク・ミュージック”たる所以を明確に形づくっていた80分。ステージの後ろに広がるのは、六本木の摩天楼と冬のイルミネイション。そんな景色を眺めながら、僕はずっと彼らの音楽を聴いてきてよかったと再認識した。

 時空を超えて鮮やかに響くJHJのステージは東京で今宵(23日)、大阪では25日に2ステージずつ予定されている。単なるノスタルジーではなく、2019年の今もフィット感バツグンのサウンドと歌詞に耳を傾けるチャンスだ。音楽が瑞々しく躍動していた80年代英国の“スタイリッシュなパンク・ミュージック”を全身に浴びて、正月ボケした頭と身体にキリッとした刺激を与えて欲しい。タフな日々を乗り越えていくためにも。Turn Back The Clock!

◎公演情報
【ジョニー・ヘイツ・ジャズ】

≪ビルボードライブ東京≫
2019年1月22日(火)※終了
2019年1月23日(水)
1stステージ 開場17:30 開演19:00
2ndステージ 開場20:45 開演21:30

≪ビルボードライブ大阪≫
2019年1月25日(金)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30

URL:http://www.billboard-live.com/

Photo:Masanori Naruse

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。新しい年を迎え、「今年こそは飛躍の年に…」と意気込んでいる方も多いのでは? そんな気分を盛り上げるワインの1つとして、ミーハーにお勧めしたいのが、カリフォルニアの『フロッグス・リープ』。名前の通り、カエルが跳ねている瞬間のイラストをエチケットに配した、飛躍の年にふさわしい(?)ワインですが、ジンファンデルを筆頭とする赤もシャルドネ主体の白も高品質。近年はオルガニックな造り方にシフトし、その味わいも明快なストラクチャーを構成しながらもメロウ。気分をホッコリさせてくれます。凍える夜にジョニー・へイツ・ジャズのサウンドに身を委ねながら楽しむのにうってつけ! ぜひ、お試しを。


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