21世紀最高のプロデューサー、マーク・ロンソンの名盤と言えば『アップタウン・スペシャル』

2018年12月14日 / 18:00

「星野 源とマーク・ロンソンが同じステージに立つ!?」、こんな空前絶後の企画を知ったのは今年の夏のことであった。コンサートは12月17日なので、すでにカウントダウンが始まっているわけだが、未だにどんな内容になるのかまったく分からない。両者の音楽性も違うので、星野 源のファンはロンソンのこと知らないだろうし、逆にロンソンのファンは洋楽しか聴かない人が多いので、星野のことを知らないのではないか。そこで今回は21世紀に入って最高のプロデューサーと称されるマーク・ロンソンのアーティストとしての側面にスポットを当てようと思う。取り上げるアルバムは『アップタウン・スペシャル』だ。グラミー賞に輝いた「アップタウン・ファンク(フィーチャリング、ブルーノ・マーズ)」を収録、ヒップホップやR&Bに精通したロンソンのファンクセンスが光る傑作である。
ロンソンの歩み

さて、マーク・ロンソンの音楽性はどう培われたのか。ロンドン生まれの彼は小さい頃に両親の離婚を経験しているが、母親と再婚したのがフォーリナーのミック・ジョーンズであった。フォーリナーは70年代後半から80年代前半に世界的な人気を誇ったロックグループだ。義理の父親はいろんな音楽をマークに教え、子供の頃すでに多くの楽器を演奏できるまでになっていた。8歳の頃に家族みんなでニューヨークに移住している。大学生になるとニューヨークでヒップホップ系のクラブDJとして活動し、幅広い音楽の知識とミックスの技術で認められていく。このあたりは義理の父親の影響が大きい。

DJとして彼は大成功を収めていたのだが、ひょんなことから女性シンガーのニッカ・コスタのプロデュースを任されることになる。そして、その仕事ぶりがエレクトラレコードの目にとまりアーティストとして契約する。2003年、『ヒア・カムズ・ザ・ファズ』でソロデビューを果たす。この時点での彼の音楽スタイルは、DJ時代に培った秀逸なミックス作業の延長線上にあり、サンプリングや打ち込みで基本トラックを制作、その上にラップや歌を乗せるというものだ。このアルバムは好セールスにはつながらなかったが、そのセンスの良さが業界で知られるところとなり、プロデュースの仕事がたくさん舞い込むようになる。
ワインハウスとの出会い

中でも、彼の真骨頂ともいえるプロデュース作がエイミー・ワインハウスの2作目『バック・トゥ・ブラック』(‘06)である。彼女のデビュー作『フランク』(‘03)は、新時代のジャズ歌手としての作品であり、プロデューサーのサラーム・レミはワインハウスの本質を理解していなかった。しかし、『バック・トゥ・ブラック』ではロンソンのアイデア(バックバンドの生演奏でレトロなソウルを歌う)が収録曲の半分で使われることになった。このアルバムはワインハウスの性質にぴったりマッチしたジャジーでレトロなソウルを聴かせることで、グラミー賞の『最優秀プロデューサー』『最優秀レコード賞(シングル「リハブ」)』『最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞』などの受賞にまでつながった。彼のプロデュース手腕はこの作品で決定的なものとなり、引く手数多のスターとなった。このアルバムについては以前このコーナーで取り上げているので参照してほしい。
精力的なソロ活動

2007年、多忙なプロデュース活動の合間を縫って、2ndソロ作品『バージョン』をリリースする。この作品には巧みに作り込まれた楽曲群が詰まっており、ヒップホップだけでなく、ロックやポップスのアーティストも参加している。生演奏と打ち込みを効果的にミックスするなど、21世紀ポピュラー音楽のショーケース的な内容を持つ秀作だと言えるだろう。デビューソロとは比べものにならないほど濃密なアルバムとなった。この作品での方法論が、のちのブルーノ・マーズとのコラボレーションに活かされることになる。

2010年には3rdソロ『レコード・コレクション』を4人組のグループ作としてリリースする。この時のメンバーはワインハウスのバックも務めたシャロン・ジョーンズ&ダップキングスの一部の面々を起用、この頃からファンク系の音作りを考えていたようだ。ただ、この『レコード・コレクション』はシンセを中心にした実験的なポップサウンドで、わざと黒っぽさを抑えているような不思議な作品である。
ブルーノ・マーズとのコラボ

2012年、マーズの2ndアルバム『アンオーソドックス・ジュークボックス』にプロデューサーとして参加(2曲のみ)、意気投合する。マーズはこのアルバムでグラミー賞の『最優秀男性ポップ・ボーカル・アルバム賞』を受賞、ロンソンは次のソロ作でマーズの起用を決め、ロンソンと同じくマーズも楽器はマルチに演奏できるので、スタジオでファンク系のジャムを繰り返し、コラボレーションのイメージを創り上げていく。
本作『アップタウン・スペシャル』 について

2014年、マーク・ロンソン・フィーチャリング・ブルーノ・マーズとしてシングル「アップタウン・ファンク」がリリースされると、あっと言う間に全英、全米ともに1位を獲得、全世界で大ヒットする。80sファンクをベースに、マーズの超絶ヴォーカルをフィーチャーした軽快なナンバーだ。この曲がリリースされたことで次のアルバムへの期待は高まるばかりであった。そして翌2015年、4枚目のアルバム『アップタウン・スペシャル』はリリースされた。スティーヴィー・ワンダーが参加しているのには驚いたが、いつものようにゲストヴォーカリストをフィーチャリングしているのはこれまでのアルバムと同じパターンだ。今回はスティーヴ・ジョーダン、ウィリー・ウィークス、ティーニー・ホッジス(ハイ・リズム!)ら、超一流のバックミュージシャンが参加しているだけに、演奏に深みが出ている。

アルバムは全部で11曲を収録(日本盤は12曲)しており、ファンクをベースにしたナンバーは多いものの、これまで以上にロック的なナンバーを収録しているのが面白い。本作はロンソンの最高傑作であるばかりでなく、今後も時代を問わず聴き続けられる作品だ。ロンソンとマーズの相性は抜群なので、これからもコラボレーションを継続してもらいたいと思う。なお、本作『アップタウン・スぺシャル』は、エイミー・ワインハウスに捧げられている。
TEXT:河崎直人
アルバム『Uptown Special』
2015年発表作品

<収録曲>

1. アップタウンズ・ファースト・フィナーレ feat. スティーヴィー・ワンダー & アンドリュー・ワイヤット

2. サマー・ブレイキング feat. ケビン・パーカー

3. フィール・ライト feat. ミスティカル

4. アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ

5. アイ・キャント・ルーズ feat. キヨン・スター

6. ダッフォディルズ feat. ケビン・パーカー

7. クラック・イン・ザ・パール feat. アンドリュー・ワイヤット

8. イン・ケース・オブ・ファイア feat. ジェフ・バスカー

9. リーヴィング・ロス・フェリス feat. ケビン・パーカー

10. へヴィー・アンド・ローリング feat. アンドリュー・ワイヤット

11. クラック・イン・ザ・パール, Pt. II feat. スティーヴィー・ワンダー & ジェフ・バスカー

12. アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ (BB Disco Dub Mix)※国内盤ボーナス・トラック


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