MERRY、活動17年を迎えて新たなバンドの姿を提示した恵比寿LIQUIDROOM公演

2018年11月16日 / 21:30

11月7日@恵比寿LIQUIDROOM (okmusic UP's)

2001年に活動を始めたMERRYは、2018年で17年を迎えた。初期のMERRYのライヴと言えば、ステージ中央に置かれた学習机の上での三点倒立や、墨汁を吐いたり縄跳びをしたりというガラの奇行や、習字の筆談で行なわれるMCが真っ先に浮かんで来るほど、とにかく異質な空間だった。我武者らに反社会性を訴え、衝動的に反骨精神を音に変えていたと感じた過去のMERRYは、他を寄せ付けない尖った勢いがあった。故に、哀愁歌謡的な切なさが滲み出る楽曲では、尖った楽曲との落差が激しく、余計に深くその哀愁と刹那を感じさせていた様に思う。

そして今。2018年のMERRYは大きな変化を遂げて此処に居る。MERRYのライヴのシンボルであった学習机は、最近も時おり見かけることはあるのだが、縄跳びや習字の筆談でのMCという奇をてらったガラの姿は、近年見かけることがなくなった。ステージのバックに誇らしげに掲げられたバンドフラッグの前で、素舞台に近い飾りっ気のないステージから音と唄を放つ。それが2018年現在のMERRYの姿である。

バンド歴が17年となり、守りに入ったのか? いや、決してそんなことはない。反社会性を感じる攻撃的なサウンドは説得力を増し、ボーカルのガラが吐露するむき出しの生き様はより露になり、自らを防御する武器を持たずして丸腰で戦いに挑む彼らの姿は、むしろ、尖りまくっていた当初よりも鋭さが増したと言っても過言では無いだろう。本当の意味での、内側から滲み出る鋭さとでも言おうか。生き様そのものがMERRYというバンドを通して伝わってくる。

2018年11月7日『MERRY Autumn Tour 2018「哀愁のダンスホール[羊想]異形 tiki」 〜帝都、華散る〜』。この日見たMERRYの姿は、17年という歴史の上に成り立ったMERRYの形と、まさしく今、彼らが生かされている意味そのものだと感じた。この日のライヴは、10月12日の名古屋の地からスタートさせた『MERRY Autumn Tour 2018「哀愁のダンスホール[羊想]異形 tiki」』(※名古屋Electric Lady Landで〜尾張、華咲く〜)の最終日。名古屋・大阪・そしてここ、東京・恵比寿LIQUIDROOMで行われた3カ所での限られた本数のライヴのファイナルであった。

この日会場限定でリリースされた、羊と人間を合体させた造語を意味するタイトルがつけられた「sheeple」を、シニカルに表現したかのような、リアルかつ幻想的なオープニングVJから始まったライヴは、ダークサイドが匂う新曲からの始まりだった。何処かの部族が用いる羊の仮面を被ったガラが紗幕の向こうで蠢きながら唄う新曲は、インダストリアルでありカオスが匂う猟奇じみたサウンドの上に吐き出される、欲しいモノは手に入らない世界で、ただ死んで行くのを待つのかと唄われる激しい嘆きだ。とことん沈んだ暗く深い漆黒を思わすその新曲が醸し出す世界は、何故かとても愛おしく美しい空間だった。

紗幕が取り払われ、ネロのカウントから勢い良く始まったのは「夜光」。結生のループするギターフレーズがサウンドの中心を担い、出口のない真っ暗な世界の中でもがく心をガラが唄い。ガラの震えた声が高く伸びるこの曲では、MERRYという個性を色濃く臭わせた。間髪入れずに届けられた「犬型真性MASOCHIST」では、空虚に響く鐘の音を切り裂くようにイントロのサウンドが攻める上に、普段は“支配されたくない”と唄う彼らが、ここでは“支配されたい”と懇願する。この矛盾と歪みにこそ、“絶対”とは言い切れない世の中の有り様を突きつけられる気がした。音数を減らし、ネロのバスドラだけで唄われる後半の見せ場では、この曲の刹那をより引き出していたようだった。

テツのスラップベースから始まった「絶望」では、オーディエンスがガラの唄に重ねて歌う声が轟音となってフロアに響きわたった。そんなオーディエンスの声に触発されたのか、ガラは完全に崩壊。いつも以上にシニカルに、人を食ったかのような威圧的な表現でこの曲を歌い切って魅せたのだった。愛すべき変態。そんな言葉がステージ上のガラには似合う。

結生と健一のツインギターのハモリが絶対的な個性として交差する、ザッツ・MERRYなナンバー「迷彩ノ紳士」「[human farm]」「sweet powder」では、古くからMERRYというバンドを支えて来たオーディエンスが特に熱を上げていたという印象。奥行きを増した楽器隊のプレイがサウンドに更なる厚みといなたさを与えていたと感じた。まさに、17年という歴史の年輪を感じさせられた瞬間でもあった。

後半ブロックで届けられた「SIGHT GLASS」では、欲望を露に吐き出していく。歌詞を見るとガラがこの曲に込めた2つのメッセージが浮き彫りになる言葉遊びをしっかりと受けとめることができるのだが、“遠慮しないで 口に出して、、、”と唄われる曲の最後でガラは、“何か”を呑み込む音を口で表現した。エロティックな場面を想像させるそのギリギリな仕草に、会場はライヴでは聞いたことのない様などよめきにも似た歓声を上げていたのだった。

本編ラストに届けられた「エムオロギー」はMERRYとしてのイデオロギー。広がりを感じるサウンド感とメロディのこの曲は、弱さと強さが葛藤する人間らしい体温を感じさせながらも、ひとつ未来に踏み出せた決意を魅せてくれる曲。5人はこの曲をとても清々しいステージングで届けてくれたのだった。

“恵比寿LIQUIDROOMありがとうございます。無事17年目を迎えることができました。ここまで同じメンバーで17年続けてこれたことを誇りに思います。人間は明日どうなるか分からないので、この先のことは僕も分からないんですけど、この5人とみなさんが居る限り、僕は唄っていきたいなと思うし、このメンバーが健康なうちに、またツアーがしたいなと思います。まだまだやっていないこともあるし、みんなと見たい景色もあるし、「やっぱMERRYってすごいよな」って言わせてみたいし、まだまだ俺らはもっともっと強いメッセージを出して、MERRYだからできること、MERRYにしかできないことというのを、より追求していきたいと思っているので、是非、しっかり着いて来て下さい。バンドとしてまだやっていないこと、まだまだやれることがある。あまり背伸びをせず、自分達の等身大の今が出せるように、ひとつひとつの壁をクリアしていきたいと思います。ライヴは僕らの生き甲斐でもあるし、そこが俺らと一番通じ合える場所なので、ライヴで会えたらいいなと思っています————”(ガラ)

アンコールでガラが語ったこの言葉。丸くなったのではないかと思える、普通とも思えるその言葉こそ、彼らの本気が詰まっていたと感じた。17年という歳月をMERRYとして生きて来た彼らが、“MERRYにしかできない、まだまだやりたいと思える、やっていないことがある”と言い切れる素晴しさこそ、彼らが今ももがき続けている証拠。この後、ガラは2019年の春にミニアルバムをリリースすることと、そのミニアルバムをリリースする前後で、2マンツアー、5月にはワンマンライヴを企画していると告知したのだった。

アンコールで届けられた「そして、遠い夢のまた夢」は、ガラがMCで言葉にした“この先もMERRYとして生き続けていく決意”を感じさせるものでもあり、共に夢見た仲間への深い愛情を示すものであろうと感じた。だからこそ、彼らは今も、この先も音を放ち、唄を唄うのだろう。ただただ攻め込むだけではなく、焦らず、大きく構え、すべてを受け入れた人間的に成長したガラが唄うこの曲は、バンドとして大きくMERRYを成長させた結生、健一、テツ、ネロが奏でるサウンドに包まれながら、オーディエンスの胸の奥へと深く運ばれていた気がした。このツアーのファイナルのこの場所に、この曲が置かれていたことの意味をとても深く感じたのは、この曲に注いだ彼らの想いが伝わってきたからだったに違いない。

ダブルアンコールでは、17年という年輪を感じさせる説得力のなるインストを「gaudy」のイントロへと繋げ、飾らぬ言葉で心の内をぶちまけ、「ジャパニーズモダニスト」でオーディエンスと声を重ねて会場の温度を頂点まで上げた後、彼らは、このツアーをまわるきっかけと、この先のMERRYの道標となった「sheeple」を届けた。「sheeple」を届ける前に、ガラはこんな言葉を挟んだ。

“まだまだMERRYは、ここからもっともっとすげぇバンドになっていくので、しっかり俺らに着いて来て下さい。まだまだ若いのには負けないし、上にも噛み付いていくんで。“MERRY、やっちゃってんな”って思って下さい。来年もこうして11月7日、みんなと一緒に迎えられるように1年気合い入れて突っ走ります!”(ガラ)

この日の最後にガラは尖った鋭い牙をむき出しにした。やはりガラは、そしてMERRYは丸くなどなっていない。17年かかって磨き上げた牙を、そっと内に秘め、誰にも負けない戦いに備えているのだ。「sheeple」はMERRYの新しいテーマ。いままで社会や世界に向けて発散してきたMERRYであったが、この先は、もう少し内に秘めたパワーというか怒りテーマを歌っていきたいのだという。この曲の歌詞は、17年間MERRYの歌詞のすべてを担ってきたガラではなく、結生が初めて手掛けるという、“まだまだやったことのないMERRY”なのだ。

これからのMERRYの道標となる曲、「sheeple」———。それは、重なり合う4つの音が激しくスピーディにぶつかり合いながら突進む力強いサウンドと、結生らしい言葉ながらも、そこにガラが培ってきたMERRYが滲む新たなMERRYだ。そんな新たなMERRYに、オーディエンスは高く手を掲げて応えた。人間は羊飼いと羊の関係の様に社会に飼われている存在。そんな現代社会を集約した「sheeple」は、この先のMERRYの第一歩だ。

“17年バンドやって来て、いいことも悪いことも悔しい想いもいっぱいしたけど、いまだにこうしてみんなが来てくれて、一緒にライヴが出来て、今日、唄っていて、信じるものは自分とみんなだなと思いました。俺は今日からまた自信を持って唄えるので、どうぞ期待して下さい”(ガラ)

素晴しく確固たるMERRYを魅せつけた『MERRY Autumn Tour 2018「哀愁のダンスホール[羊想]異形 tiki」 〜帝都、華散る〜』は、新たなるMERRYの提示であったと確信した夜となった。12月24日には先日の恵比寿LIQUIDROOMで会場限定販売された最新音源「sheeple」の全世界配信を予定。そして、2019年、年始には『Free-WiLL SLUM DAY-1』に出演することも決定している。

text by 武市尚子

photo by 中村卓


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